第22話 ボルカノバーグの入口で
トコトコと、やって来ましたボルカノバーグ。
ボルカノ山の麓なんだが、あちこちを赤い肌のでかいのがうろうろしている。
バルログかな?
「うおーい」
俺が手を振ると、バルログはハッとこちらに気付き、どたどた走ってきた。
「なんだ、なんだお前ら」
「おっ、知性がある! 俺はリョウという者で、ついこの間あっちにある人間の帝国を平らげた者だ。信仰の対象になってもいる」
「ほうほう……丁寧な自己紹介ありがたい。我々はバルログだ。時にお前、見た目通りの存在ではないな……? とんでもない熱量を感じる……」
熱量とは一体。
だが、意外なことにバルログは話ができる相手であったようだ。
帝国は全く話にもならなかったもんな。
人間よりも、魔人の方が理性的ってことだ。
(思ったよりも話ができますわ……。なのにどうして、帝国の人々はバルログを恐れていたのかしら……)
姫騎士も不思議がっているな。
念のために、山の向こうにシンカイを控えさせているが、これはあいつの出番はなさそうだな……。
「我らバルログは全員が相手の力を熱量として測る力を持っている。俺が見るに……お前の熱量は測定ができん。これは我らが主に会わせるべきだろうな」
「本当に話が通じるなあ。この世界に来てから初めてだ。感動すら覚える」
「何、我々も人間風情とは口も利かんよ。弱い者たちと言葉を交わすことに何の意味もない。ただ踏み潰し、蹂躙するだけでいい」
「あー割と同感」
俺はうんうんと頷いた。
つまり、バルログの判断基準は強さだ。
彼らに匹敵する強さがなければ、交渉できる相手とも思ってもらえない。
帝国は弱すぎたのだ。
だからバルログは帝国と話をしようとしなかった。
「ついてきてくれ。主に紹介しよう。ああ、象がいるな? この辺りは食べるものがないから、森でバイキングしておいてもらおう。おい」
別のバルログがやって来た。
そして象を見ると目を細める。
「かーわいい」
「でしょー」
アニタと並んで、パパールを撫でている。
これもまた、パパールが強いからこそ発生している流れかもしれない。
あと、アニタもなんだかんだで強いからね。
この間の帝国戦で、人間をもりもりぶっ倒したアニタとファルメラ。
俺の軍団のメンバーとして、かなり強くなったようなのだ。
アニタは吸血しまくったし、ファルメラは殺しまくったからなー。
血や魂でパワーアップするんだなあ。
「神様~! 私、パパールと一緒に行くね! 待ってるー」
「分かった。パパールを頼むぞー」
「ぱおーん」
「こっちが森がもりもりあるからね」
優しげなバルログに案内され、森に連れて行かれるパパールとアニタなのだった。
戻ってくるまで、たくさん葉っぱを食べてうんこをするとよろしい。
「よし、行こう」
最初に出会ったバルログに連れられて、ボルカノ山を登る。
「飛べる?」
いきなり聞かれた。
「どうかなあ……。おりゃっ」
俺はジャンプしてみた。
ダメもとである。
まあ、俺が飛べるわけが……。
飛べたーっ!!
なんか分からんが、俺の体が浮いてる!
『神様飛べたのですかな!? わしはヘッドレスと合体しながら飛翔可能になりましたが』
「おっ、ラッシュもパワーアップしてるじゃん」
「ウボアー」
「ヘッドレスも空を飛べて楽しいか。あとはファルメラだが……」
「あ、わたくしも何故か飛べます……。な、なんですかこの背中の真っ黒な禍々しい翼は。鎧の上から生えてるんですけれど!?」
デーモンとしての力が増してきてますねえ!!
これを見てバルログが、うんうんと満足気に頷いた。
「実力は十分。様々な状況への適応能力も高い。そして友好的で冷静に対話ができる。お前たちは我々が求めていた同盟相手かも知れないな」
「同盟相手とな?」
「そうだ。知っているか? この世界は、偉大なるマロングラーセが残した多くの眷属たちが、次なる魔王となるべく争い続けている。我らの主もまたその一人だ」
「なるほどなるほど」
俺としては、初めて対等に話ができる存在の出現に興奮するばかりだ。
いやあ、この世界、ちゃんと話せる相手がいたんだなあ。
案内されたのはボルカノ山の中腹に開いた巨大な穴だった。
真っ赤な輝きが見える。
空を飛べなかったら、この山道をトコトコ歩いて必死に登ることになっていたわけだ。
ゾッとしないなあ。
なんだか分からんが、飛べて本当に良かった。
よく考えたら俺は、自分のステータスを知らないんだよな。
なぜか自分の能力だけは見ることができないのだ。
「正直……俺はお前の持つ気配を以前にも感じたことがあるような気がするのだがな……。まさかな。あの化け物は人間によって倒されたはずだ」
もしかして魔王の話してる?
なんか妙に人間くさいバルログに案内され、カザンの中の通路を進んだ。
あちこちに部屋があり、バルログたちがボードゲームのようなものをしたり、巨大な昆虫を戦わせて、わあわあ盛り上がったりしている。
なんだかシンパシーを感じる。
「思っていた以上に、バルログというのは平和な種族なのですね……?」
「我らは強大な種族ゆえ、数そのものが少ない。同族で争って数を減らすようなことはせぬのだ。その代わり、ゲームで決着を付ける」
「ゲームで……!?」
『姫様、わしらが知らぬ、もっと高度なゲームに見えますな……』
「ええ。もしや……ドラク王国よりも文化が進んでいるのでしょうか……」
可能性はあるな。
そして案内された先は、マグマの中央に浮かぶ広大なステージだった。
バルログたちが、巨大な骨や岩を削って作った楽器を奏で、音楽に合わせて魔人たちが歌ったり踊ったりしている。
その中心に、ひときわ大柄な黄金のバルログがいた。
あれがボルカノバーグの主か。
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