第21話 カザン帝国は蓋だったんだな
無事、カザン帝国を安全な通路へ改造した俺。
これで道の行き来が楽になる。
帝国を、仲間たちとともにぶらぶらと南下する。
そうすると、だんだん殺風景になってきた。
多分、帝国南端の畑なんだろうなというところに来たので、そこで座っているおばさんに話を聞いてみた。
「なんでここはこんな殺風景なの」
「ありゃ、外人さんだ。あのね、ここはね、バルログたちが暴れて、家も畑もなんもかんも焼き尽くしちまったところなのよ。ところが! 焼き尽くされたら良質な灰と炭になるのよ。あたしはそれを集めて、都に売りに行くところさあ」
「たくましいー」
俺は感心してしまった。
アニタもびっくりしている。
「へえー! カザン帝国にも普通に生活してる人っているんだ! 驚いたー」
「それはそうですわよ。こういう方々が国の土台を支えて下さるからこそ、何も生み出さぬ軍というものも存在しえるのです。まあ、わたくしたちが殲滅してしまいましたが」
『なに、帝国は神様の庇護下に入りましたからな! 何の問題もありませんぞー! ゴーレムたちもここに置いてきましたしな!』
「ウボウボ」
俺達の話を聞いて、おばさんが目を丸くした。
「あれまー、都が大変なことになってるのかい!? 教えだ教えだってこうるさいとこだったけど、あそこで銭を稼がないとやってけないんだよ」
「市場には手を出してないから大丈夫だと思うよ。信仰はぶっ壊したけど」
ということで、おばさんの炭拾いを手伝い、背負子をいっぱいにして、達者でなーと手を振って別れた。
「神様って平和にお別れしたりもできるのね!」
「俺は平和主義者だぞ。ああいう話が通じる人相手だと、手を出すことはないのだ」
(驚きました。この男、人間を見下し、道具としか考えていないとばかり思っていましたが……)
俺の意外な一面を見て惚れ直したりしたかね?
さてさて、この辺りがバルログに焼き払われたということは、連中のテリトリーと接しているという意味でもある。
そしてここからそれなりに遠いところに……。
煙を吐いている山がある。
「あれがバルログの住む、なんちゃらバーグがあるところだろうか」
『ボルカノバーグですぞ』
「そう、それ」
長いこと口にしてなかったから、完全に忘れてた。
で、ボルカノバーグはカザン帝国に隣接する、あのボルカノ山そのものを意味する……ようだ。
ちなみに、ボルカノ山の後ろは海。
そしてボルカノ山から向かって右手……。
地図で言うなら西に向かって世界が開けているのが分かった。
「整理しよう」
俺は適当な炭を拾ってリサイクルした。
そして地面の石をリメイク。
石板と即席のクレヨンが誕生したな。
「俺が降臨した洞窟がここだとするだろ。そこからアニタの村までがここで……。周囲は森に囲まれていたが、さらにそれを険しい山々が包んでいた。で……アニタの村から一本道を通ってシエスタに到着してだ」
「私の村じゃないよー。ガンボ村だよー」
「そうだったそうだった」
名前完全に忘れてる。
「ガンボ村からすると、シエスタから丁字路になってて、右側……北がドラク王国、南がカザン帝国と。それなりに距離は離れていて、普通に旅すると王国から帝国まで一ヶ月ってところか」
「わたくしたちは休む必要がないので、恐ろしい速度で移動しましたが……本来ならばすごい距離なのですね」
「ああ。しかも、ドラク王国からカザン帝国に至るまで、大河に遮られている以外は森と険しい山脈に囲まれて、ほぼ一本道だ。河を下るにも、あそこは人食いモンスターがひしめいていたからな。なるほど、意図的に人間たちはここに閉じ込められていたように見える」
俺が賢そうなことを言っているので、アニタが驚いて「ほえー」とか鳴いた。
何がほえーだ。
なお、彼女は帝国の兵士から手に入れた斧を武器としており、今はパパールが曳く荷車に積んである。
これもなー。
なんかシステマチックに射出できるようにしたいよな。
俺達は割と強いと思うんだが、技術力とか政治力とか、色々足りないものが多い!
俺だって、一般市民との馴れ馴れしいコミュニケーションか、いけすかない相手との蹂躙コミュニケーションしかできないのだ。
「そうだ。バルログたちを覗きに行って、なんなら戦っちゃおうと思ってたが……。有用そうなのがいたらスカウトするのもいいな! 執政官が欲しい! 頭いいやつが欲しいよ!」
「確かに、わたくしたちはあまり深く考えるということをしませんわね」
「難しいこと分かんないからなー」
『わしも文字が読めてラッキー程度ですぞ』
「ウボアー」
「パオーン」
一番頭良さそうなのが、元魚のシンカイだもんな。
この辺りは河がないから、シンカイは海まで泳いでいって大回りしてくれている。
強力なんだけど立ち回りが難しいんだよなあ、あいつ……。
「よし、では今後の予定を決定した!」
アニタ、ファルメラ、ラッシュ、ヘッドレス、パパールに告げる。
「ボルカノ山へ向かい、バルログと接触するぞ。カザン帝国を自由に移動できるようになった今、俺達は後ろから何かをされる心配もない。前に進むだけでいい。あと、せっかく手懐けたカザン帝国がバルログに滅ぼされたらなんか損した気分なので、暴れているバルログを殴ってちょっと弱らせてやろうという算段もある」
『おおーっ! 神様、なんという深謀遠慮ですじゃー』
「ウボボー」
何言っても褒めてくれるなあ。
ちょっと気分がいいぞ。
「リョウ様、恭順すれば人間であろうと守りますのね……」
「利用価値があるだろ。それにちょっと頑張ってシステムを作ってるところなんだから、そういうのが無駄になるのは悲しいでしょ」
カザン帝国が今後、どんな姿になっていくかは楽しみだったりもするのだ。
ということで、そのためにまずはボルカノ山!
行こう、バルログの里!
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