第20話 特に帝国に興味はない
戦闘に加わらず戦闘を静観していたパパール。
帝国に世話になったんじゃないの?
心が痛んだりしない?
「パオ」
「あ、それはそれ、これはこれなの。俺の配下になったことで、人間並みの知性になって損得をよりしっかり理解できるようになったってことか」
「パオーン」
「なるほどなあ」
「神様がパパールとお喋りしてる。誰とでも喋れるの凄いねえ」
「ふふふ、神だからな。おっと、パパールが仲間を呼び寄せているぞ」
帝国の奥より、運河から溢れた水をざぶざぶ掻き分けて象たちがやって来た。
組織図を確認したら、パパール率いる戦象軍団と記入されている。
いきなり大所帯になってきたぞ!
「パパール、お前らはとてもたくさん食事をするので、基本は遊撃部隊ということにする。あちこち練り歩いて、情報を集めてくれ。たまに合流したら教えてくれ」
「ぱおーん」
パパールが了承した。
彼が他の戦象たちに告げると、象たちも次々パオパオ鳴く。
そして散っていった。
「パパールは残るんだな」
「パオ」
ステータスを確認すると、なるほどそれには理由がある。
名称 :パパール
種族名:ウォーリーダーエレファント
階梯 :第四
能力 :極めて強力な怪力 極めて頑丈な肉体 優れた聴覚 優れた嗅覚 運搬能力 耐熱能力 耐寒能力 戦象軍団の即時召喚
弱点 :なし
パパールを核として、戦象の軍団が召喚されるのか!!
これは強力だなあ。
そこに、いつの間に飛んでいたのか、ラッシュが空から戻ってきた。
『周辺を確認しましたぞー。恐らく、戦えるカザン兵の七割が壊滅ですじゃ。残りは奥で守りを固めておりますぞ』
「お城?」
『そうですぞ』
「うし、じゃあ交渉に行こう。行くぞみんなー」
俺、アニタ、ファルメラ、ラッシュ&ヘッドレス、パパール、シンカイ、そしてゴーレムたち。
なんだかんだで、ゴーレムたちが無事だったな。
人間サイズの剣や槍、弓矢ではこいつらにダメージが通らないからな。
魔法でもダメージ的に怪しい。
大砲が必要だと思う。
こうして帝国の中をのしのし闊歩する。
足元が水浸しなので、シンカイも移動が可能になっているのだ。
ちょっと思いつきで作り上げた仲間だったが、かなり有用だ。
で、恐らく俺のリサイクルは、それを使う対象の強さによって結果が大きく変わる。
シンカイは、ゾンビの群れを飲み込むような化け物フィッシュだったからここまで強くなったのだ。
唯一無二の出会いだったなあ。
お、兵士たちの腰が引けてる。
へいへい、帝国ビビってる。
「交渉に来たぞ」
俺は彼らの前に堂々と体を晒し、宣言した。
「こ……交渉だと……!? 化け物が、何を交渉することがある……!!」
将軍ぽいのが決死の覚悟で俺の前に立った。
「あー、違うんだよなあ……。君じゃない。下っ端に用はないんだ。帝国を動かすことができる立場にいる奴を連れてきてくれ」
「……!! ホルマニ導師を呼べというのか!」
「帝国なのに皇帝がトップじゃないの? 宗教的頂点が国家の政治的頂点も兼用してるの? なるほど、それで異常なくらいに不寛容な軍隊だった理由が分かった。あ、そのホルなんとかって奴を連れてきて」
「き、貴様……!! ホルマニ導師は神の声を聞く我らの指導者……! その御方にそのような口を……」
「だってお前ら、そのホルマニが怖くて俺からの伝言なんか正確に伝えられないだろ。いいや、俺が直接会いに行く」
俺はぶらぶら歩き出した。
兵士たちが、将軍が、決死の表情で身構える。
「アニタ、我慢してガブッとやってね」
「うえー、おじさんの首汗くさーい」
「なっ!?」
将軍が気付いた時には、背中にアニタがくっついていた。
ファルメラが彼女を抱っこして運んだのだ。
神速の姫騎士、便利!
「や、やめ……」
振り払おうとする将軍だが、アニタはその腕を無視して一噛み。
首のガードを食いちぎり、喉に牙が食い込んだ。
支配が完了する。
将軍が俺に跪いた。
「おお! 我が神よ! あなたに忠誠を誓います!!」
「将軍!?」「神を裏切ったのか!?」「棄教は許されない!!」
動揺する兵士たち。
なお、強そうなの、偉そうなのを狙って、ファルメラが次々にアニタを送り届ける。
そして棄教して俺の配下になる奴が増える。
この精神支配はアニタが滅びない限り絶対に解けないからね。
戦況は一気に逆転した。
宗教的に高い地位にいる連中が、まとめて俺に寝返ったのだ。
敵の士気はボロボロ。
そこにゴーレムが突っ込んできて、兵士たちを摘んではポイ捨てし、放り投げ。
「ウグワーッ!」「ウグワーッ!」「ウグワーッ!」
俺は城の中に堂々と入っていった。
頭上をラッシュが飛び回る。
『んんーっ! 臭う! 臭いますぞーっ!! 腐りきった性根の指導者の臭いですじゃーっ!!』
ラッシュの空っぽな眼窩がギラギラ輝き……。
『そこじゃーっ!!』
カッと放たれた光線が、城内に飾られた大きな風景画に注がれた。
どうやら偶像崇拝禁止の宗教らしく、中には偶像っぽいのが飾られていない。
その中で、風景画だけが不自然にそこにあったわけだ。
「ラッシュ、有能! どれどれ……?」
風景画を破り捨てると、そこには階段があった。
地下に向かう階段だ。
これは……。
兵士たちを捨て石にして、指導者連中は逃げたな?
「もはや相手にもなりませんわ。放っておけばよいのではありませんか?」
ファルメラが隣に現れて、そう告げた。
「いやあ、そうするとあれだろ? 宗教的指導者がいるから、それを中心に集まって反抗勢力になるかも知れないじゃない。連中まとめて全員こっちの手下にして、この国の宗教の寄る辺を消しちゃおう。で、文化とか伝承とか全部俺の教えに書き換えちゃう」
ファルメラが恐ろしいものを見る目を向けてきた。
(人から、命だけではなく誇りと歴史までも奪うというのですか……!?)
「奪うとは人聞きが悪いな。壊して、俺に都合がいいようリサイクル、リメイクさせてもらうだけだよ」
階下に降り、指導者たちを捕らえた俺。
奴らはみっともなく命乞いをしたが、アニタにガブッとやってもらった。
帝国の支配者全員が五体満足なまま、俺に寝返ったぞ。
これで、カザン帝国はおしまいだ。
まるごと俺の教えに塗り替えるまで、まあ十年くらい?
残った連中はあえて殺さない。
俺の偶像をあちこちに飾ってもらって、これに祈りを捧げてもらおう。
毎朝、俺を崇める祈りの言葉を流させるのもいい。
生活の中に俺という存在を崇める教えを根付かせ、草の根で新たな世代を全て俺の信奉者にしてだな……。
「リョウ様。どうしてそこまでしてカザン帝国を潰すのですか……!? こうも徹底的に……! 恐らくこれで、一つの教えはこの世界から消えてなくなるでしょう。あまりにも……あまりにも恐ろしい行い」
「うん、実はこれには深い理由があるんだ」
俺深刻な顔をした。
そして、ボソッと告げる。
「バルログのところに行くからさ、安全な通り道が欲しかったんだよね。これで道はできたでしょ」
「は……?」
呆然とするファルメラ。
驚いてらっしゃる。
俺、帝国に別に興味はないのだ。
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