第17話 河を渡って帝国へ
そう言えば、本来ならばドラク王国から壊れた武器なんかを分けてもらうはずだったのだが、すっかり忘れていたのだった。
今あるのは、シエスタでもらった荷車と、そこに積み込まれている作業道具や帝国が捨ててった武器だけ。
それもみんな壊れている。
「神様、そんなの使ってどうするの?」
「うむ。アニタ、実はな……木は水に浮くんだ」
「知ってるー!」
流石に知ってたかあ。
俺は荷車に手を当てて「アパラチャノモゲータ!」と発する。
そうすると、これがリメイクされてイカダになるのだ。
さらに、木製の道具類をいい感じで組み合わせ、多くの人間が乗れるイカダとして構成していく……。
「わたくしはパパールに乗せてもらいます。この子とっても賢いんですよ。リョウ様も来ませんか」
な、なにぃーっ。
俺を恐れていたはずの姫騎士が、象の上に誘ってくる。
いや、象のカワイさにやられて、思考が言動と一緒になってしまっているのだ。
彼女はカワイイと遭遇することで、思考停止してしまうんだな……。
「いや、俺はイカダで行きましょう。いつでも行動できるようにしておかねばですからね」
「まあ、そうですか! 残念……」
うっ!
ほっこりするところだった。
お、俺が俺でなくなってしまう~。
なお、アニタは「わーい!」とパパールに駆け寄り、人間離れした跳躍力でひょいっとその上に飛び乗った。
姫騎士とアニタが並んで像の背中にいるな。
「二人を頼むぞパパール」
「パオーン」
任せとけ、みたいな感情が伝わってきた。
頼れるぞ、象。
「では俺とラッシュとヘッドレスはイカダだな……」
『男どもばかりになってしまいましたな』
「ウボボ」
世の中そんなもんである。
パパールに引っ張ってもらいつつ、河を渡っていく。
この河は大変広く、そして底も深い。
人を喰うという凶悪なモンスターや魚もいるというのだが……。
流石に、象相手に食いついてきたりはしないのだ。
でかいからな……。
『神様! もしかして、この河にいる生き物を利用したりはできないのですかな?』
「なんだって!? ……できるな……。やってみるか。ラッシュ、頼むぞ」
『はっ、おまかせを』
ラッシュがヘッドレスから離陸した。
ふわーっと浮かび上がり、水面ギリギリあたりを移動したりする。
「ウボアー」
ヘッドレスが気をつけてーと言っております。
少ししたら、河に住むモンスターがこの罠に掛かった。
巨大な影が急浮上してきたと思ったら……。
「がおおおーんっ!!」
咆哮とともに、大きな魚が飛び上がってきたのだ。
上半分が黒い鱗、下半分が白い鱗をしている。
大きく開いた口は、パパールでさえ一口で咥え込めそうだ。
で、よく見たら体の半分が頭であり、口に尾びれがついてるような外見だった。
これは、パパールを咥えてもそれで終わりだなあ。
飲み込む胴体がない。
つまりこれは……大きな口で、渡河しようとするものを片っ端から引っ掛けて飲み込もうという戦略なのだろう。
象のパパールが泳いで渡ることを想定していない。
『ほぎゃあああああ! わし、大ピンチじゃああああ』
今にも飲み込まれそうなラッシュ!
必死に横に逃げるが、巨大魚は空中をヒレで叩いてちょっと前進、追いかけてくる。
こいつ、空を泳いでるぞ。
「待ってろラッシュ。イカダの一部をリメイク。回れまわれ……!!」
イカダから木製の道具類に戻り、それが俺の周りを旋回する。
先端が捻れ、銛状になった。
「行け! 鱗の隙間とかにいい感じに刺さってこい!!」
俺の命令を受けて、飛ぶ銛の群れ。
こいつらは自分で考えて的確な場所に着弾する。
言うなれば、木製のスマート弾だ。
まずは三発!
怪物の腹に突き刺さり、魚が「ウグワーッ!!」と吠えた。
次いで、回り込んだ七発で両眼を破壊。脳まで貫通し、あるいは背骨に突き刺さる。
「ウグワーッ!」
着水し、巨大魚はバタバタと暴れた。
だが、最後のスマート弾が巨大魚の口へ飛び込み、体内から神経節を破壊した。
動かなくなる巨大魚。
さて、これはなんだろう。
「お魚だー!! でっかい! 食べるの神様?」
「わたくしは遠慮しておきます……」
うん、そうだろうそうだろう。
そもそも、俺達は食事をあまり必要としていない体だ。
巨大な魚のモンスターを誘い出して殺した理由は……。
「リサイクル! そしてリメイクだ。アパラチャノモゲータ! 水を司る俺の眷属よ、ここに生まれいでよ!」
もうね、組織図ってのを完全に理解した。
俺が意識してリサイクルし、この世に呼び戻した存在は俺の部下になる。
だったら、この巨大魚もそうなるんじゃないのか?
その考えは的中した。
巨大魚の骨格が歪み、変化していく。
気がつくと、そいつは4mくらいのでかい半魚人になっていた。
「新たな命を得て生まれ変わりました。主よ、あなたに服従致します」
半魚人は頭だけプカーッと浮かべて、丁寧な口調で話した。
「ああ。よろしく頼む。これから俺達、カザン帝国とバルログたちに喧嘩を売りに行くところだ。色々手伝ってくれ」
「かしこまりました主よ。では、私めに名を付け、命じてください」
「あ、名付けがあるのね……。うーん……うーん……。あのでかい魚は深海魚っぽかったから……。シンカイ!」
名称 :シンカイ
種族名:グレーターマーマン
階梯 :第六
能力 :強力な怪力 頑丈な肉体 鋼に匹敵する鱗 優れた聴覚 優れた嗅覚 水中呼吸能力 水操作能力
弱点 :炎
「ありがとうございます!! 我が名は水魔シンカイ!! 主よ、この身滅びるときまで、御身に仕えることを約束致します! あ、私めを呼ぶ時は、水面に顔をつけてシンカイと発してください」
「水に顔をつけるの必須なのね?」
「必須ではないのですが雰囲気が出るので」
そう告げると、シンカイは去っていった。
『さ……さすがは神様!! この様な形で、水辺のモンスターを利用するとは! このラッシュ、感服仕りました~!! あっ、緊張が解けて水に落ちる~』
「ウボアー!」
ヘッドレスが水に浮かんでいた木の銛をゲットし、これを突き出した。
先端に、ラッシュが引っかかる。
回収成功だ!
『ぬおお、危ないところじゃった! ありがとうヘッドレス!』
「ウボボ」
こうして二人は再び合体。
「新しい仲間が増えたねー!」
とはしゃぐアニタに、
(どんどん己の眷属を増やしていく……! 恐ろしい方……!!)
と戦慄するファルメラ。
パパールが「パオ」と声を漏らして、渡河は完了した。
ここから先は、カザン帝国。
見渡す限りの敵地なのだ。
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