第16話 ゾウさんといっしょ
完全復活を遂げたシエスタの街。
カザン帝国に襲撃された跡などどこにも残っていない。
なぜなら、死者は一人もいないからだ。
アニタにお願いされて、全てを俺がリサイクルした。
なので、ここに来ると……。
組織図が大変なことになっている。
名称 :シエスタの住人たち
種族名:レッサーヴァンパイア
階梯 :第一
能力 :吸血によるパワーアップ 上位者の命令による召喚 弱い再生能力 中程度の肉体状態異常耐性
弱点 :なし
うん、見事に全員が人間ではなくなっているな!
もしかかして、アニタがこいつらの上位者に当たる?
あー、組織図の上に辿っていくとアニタに到着するな。
つまり、俺の下にアニタがいて、アニタが統括する軍団としてシエスタの住人たち改め、ヴァンパイア軍団がいるわけだ。
なお、こいつらはアニタの部下とは言っても、性格は人懐っこいシエスタの住人のままなので……。
「頼むよリョウさん!」「こいつを連れてっておくれよ」「なんとなく分かるんだけど、これから旅立つんだろ?」
「いかん、アニタから思考が逆流して、シエスタの民の共通認識になっている!!」
「これは……この象とやらをわたくしたちで引き受けるしかありませんわね」
(ちょっと可愛いですし)
「ぱおーん」
(大きくて可愛い!)
「くっ……! ファルメラ様の決めたことは尊重したい……! い……いいでしょう! 象を連れてカザン帝国まで行こう!!」
「うわーっ、あの大きい生き物と一緒に行くの!? 神様神様、私、あの生き物に乗りたい!」
『いやあ、とんでもない大きさですなあ。カザン帝国の連中にこれを使われる前にどうにかできて何よりでしたぞー!』
こうして、シエスタで最低限の旅の準備……。
アニタ用の頑丈な日傘とか、姫騎士が身分を隠すためのマント、象に牽かせる荷車に回収された道具やら武器のスクラップをもらい、俺達は街を発つのだった。
「いってらっしゃーい!」「なんか、いつでも呼ばれたら駆けつけられそうですよー!」「たどり着けないはずなんだけど、我々の助けが欲しい時は呼んでくださーい!」
妙な見送りだ。
「象さんには名前をつけなければなりませんね。アニタ。二人で考えましょう」
「はーい、ファルメラ様! えーと……えーと」
「ぱおーん」
「鳴きましたね!」
「かわいー!」
「象が旅の主役になりつつある。危機感……」
なお、この一行に加わったことで、俺の組織図にも象が組み込まれているのだが……。
どうなっているんだ、この組織図は。
俺が作り出すゾンビたちは組織には入らない。
これは分かる。
言うことを聞く楽しい連中だが、基本的には爆発させるための弾丸だ。
それに対して、シエスタの住人たちは組織のメンバーとなった。
謎だ……!
そもそも組織ってなんなんだ……!
あれか?
俺がその魔王だとすると、魔王軍というやつか?
人を従え、統率する必要があるのか?
そんなもの、俺にできるわけが無いだろう!
いかん、これはいかんぞ……。
どこかで、面倒事をやってくれるやつを見つけ、仕事を押し付けねばならない。
俺に管理能力は皆無なのだ!
『神様が唸っておりますな。どうしましたかな? お疲れですかな?』
「ウボア」
ラッシュとヘッドレスに心配されてしまった。
「いや、全く問題はない。むしろ、組織のメンバーが増えたことで俺の力も増した気がする。いや、これは本当に」
『組織……?』
「ウボ……?」
不確定情報みたいなものだ。
今話すことではあるまい。
女子二人が象ときゃっきゃぱおんとはしゃいでいる間に、俺達はシエスタから少し離れた平原までやって来た。
ここはもともとシエスタの土地だったのだが、カザン帝国がそれを接収したらしい。
だが、ここにカザン帝国の連中はいない。 あちこちに爆発痕があり、その周囲に武器やテントらしきものの残骸が転がっているばかりだ。
さては、帝国に向けてダッシュさせたゾンビの一部が、ここで帝国残党とぶつかりあって爆発したな?
邪魔者がすっかりいなくなって、見晴らしがいい。
いい仕事をしたなゾンビたちよ。
ここで象が立ち止まり、近隣の枝葉をもりもり食べ始めた。
ぶりぶりでっかいうんこもする。
「ファルメラ様、アニタ、象の名前は決まった?」
「ええ、もちろんです」
「いい名前がついたよ!」
二人が自身ありげだ。
そしていつの間にそんなに仲良く……?
あ、俺がリサイクルして、同じ組織図に組み込まれたからか。
ま、姫騎士とアニタが楽しそうで何よりだ。
叡智ゲームのヒロインたちも、こういうほっこりする日常を垣間見せてくれたりするものだからな。
「パパール! 「ですわ!」「だよ!」
象のパパール!!
「それはやっぱり、ぱおーんと鳴くから?」
「そうだよ。さっすが神様!」
うーん……安直……!!
だが……だが、ここでツッコミはするまい!!
それは無粋というもの……!!
俺は朴念仁な叡智ゲーム主人公たちとは違うのだ。
『ここに来て神様の色々な表情が見られますな。いつもの余裕綽々という顔とは全く違って人間らしいですぞ!』
「ウボーウボー」
「大抵の場合、身内は敵よりも厄介だったりするのだ……!!」
名称 :パパール
種族名:ウォーエレファント
階梯 :第二
能力 :強力な怪力 頑丈な肉体 優れた聴覚 優れた嗅覚 運搬能力
弱点 :なし
あー、名付けられたことで、完全に俺の組織のメンバーになってしまった。
万一パパールがやられるようなことになったら、俺のリサイクルで本格的に象ならざる象になってしまうことだろう。
これからカザン帝国に乗り込もうという時に、俺の頭を悩ませる情報や出来事が次々にやってくるのだった。
敵がね、敵が出ただけなら全然悩まないんだよ。
「リョウ様、ここからは渡河ですわね。パパールがいてくれて助かりましたわ。彼に乗せてもらって渡りましょう!」
平原の向こうには広大な河が!
なるほど……。
これが、帝国がシエスタへ攻めてくるのを防いでいたわけか。
「よし、ではパパールを使ってうまい感じに河を渡っていこう……!」
「パオーン!」
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