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まだ使える!~可哀想は可愛いをモットーに、転生魔王はダークな異世界をリサイクル能力で蹂躙する~  作者: あけちともあき


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第15話 アニタ、パワーアップ!

 指の先っちょを少しだけ切ってもらい、血をちょっともらった。

 ナイフの上に垂らしたそれをアニタに差し出す。


「ちょっと舐めてみて」


「抵抗あるなー。でも神様が言うなら仕方ないかー」


 ぺろっと舐めるアニタ。

 そうすると、明らかに彼女の雰囲気が変わった。

 瞳の赤い色が輝き出す。

 髪の色もまた、燃え盛る炎のように、エンジェルリングがゆらめき蠢く。


「おっ、パワーアップしたっぽいぞ」


「なあにそれ? でも、なんだか体が軽いみたい」


 ぴょんぴょん飛び跳ねるアニタ。

 一瞬だけふわっと浮いた。

 飛んだ?


「は、羽根が生えてきそうになったから降りちゃった。もしかして私も、ラッシュとおんなじで天使になっちゃった?」


「そうかも知れないねえ……」


 名称 :アニタ

 種族名:ヴァンパイア

 階梯 :第四

 能力 :吸血による一時的支配 通常攻撃無効 高速再生 闇視 翼による飛行 怪力 肉体状態異常耐性

 弱点 :日光 光属性の魔化された道具


 おっ!

 順当にパワーアップしてる!

 これで最低限、我が身を守れるようになったな。

 良かった良かった。


 この光景を、ポカーンとして眺めている騎士団長と騎士たち。

 見た目はあまり変わらないから分からんよな。


「リョウ様、これでいいのですか?」


「はい、十分です。ポイズンミストの件は不問ということで……」


 騎士団長の顔がパッと明るくなった。


「あ、ありがとうございます!! で、では我々はこれで……」


 去っていったのだった。

 その後姿を複雑そうな表情で見つめているファルメラ。


「きっと、お姉様が差し向けたのでしょうね。あの方はわたくしを嫌っていますから」


「そうなんですか? そりゃまたどうして」


 聞きづらそうな雰囲気なのだが、そんな空気を読む俺ではない。

 知りたいものは知りたいのだ。


「それは……わたくしの母が後妻だからです。そして王位継承順位も低いのに、民に慕われていると。それがお姉様は気に入らないのでしょう」


「王国の中でもドロドロしてきたな。なるほど、様々な条件が重なり、ファルメラ様は可哀想なことになっていたわけですね。いやあ、じゃあファルメラ様、身の振り方は正解ですよ」


「どういうことですか?」


 ちょっと驚いた風のファルメラ。

 うーん、やはり完璧な美少女。

 ヒロインである。


「王国を救ったあなたは英雄になるし、それで民には一層好かれる。ただ、そうすると国内はさらにドロドロするでしょう。だが! ここであなたが俺と一緒に世界を旅して回るようになれば、なんと王国にはドロドロした種が残らなくなる。せいぜい、王子と第一王女の間くらいじゃないですか。俺としても、ファルメラ様が必要ですから」


「わたくしが……必要……!?」

(何を考えているの、この男……!? ですけれど、不思議と言動に嘘がないのは分かります。確かにわたくしが王国を離れれば、この国が荒れることもない……。お姉様も、お兄様を廃してまで王位につこうとは思わないはずだし)


 心の声で、詳しい事情まで丸わかりなのだ。

 俺はニッコリした。

 なお、その間にラッシュが、アニタに飛び方を教えている。


『こう、力を込めるとふわーっと飛べるのじゃ。自然体じゃぞ。しかし昼間は太陽の光が邪魔じゃからな。夜に練習しようぞー』


「うん、ラッシュありがとうね!」


「もがー」


 こっちも仲良しで良き良き。

 互いに教えあい、パワーアップして行こうな。


 さて、こうして俺達はドラク王国を縦断し、その足でまたシエスタへと戻る。

 ちょっとくらいゆっくりしてもいいのだが、最早構成員に人間がいなくなってしまった俺達一行は、別に休息を取る必要がなくなったのだ。


 消耗した体力は勝手に回復してくるしな。


「じゃあまずシエスタに行って旅の準備をして……。準備って言っても手ぶらでもいいくらいだな」


『わしもヘッドレスも食事が必要ありませんぞ』


「ウボウボア」


「私もなんでだか全然お腹が減らなーい。不思議! 眠くもなんないし」


「……そう言えばわたくしも体の疲れみたいなものが全くなくなりました。妙に力に満ち溢れていますわね……」


 俺の組織の一員として、レベルアップしたからね。

 不眠不休での移動が可能になった俺達で、早速仕事を開始するとしよう。


 ドラク王国に残っていては、またここの連中が嫌がらせをしてきそうだし、反撃するとファルメラが悲しむしな。

 いや、その悲しみは悲しみでとても美味しいものなのだが、万一ここでファルメラが敵に回り、二度とわかりあえなくなったらどうする。


 いやいや、それもまた美味しいシチュエーションではある!!

 だがだ!

 だがしかし!

 俺が今、この世界で活動するモチベーションの大部分を依存しているこの姫騎士が、俺の仲間ではなくなることは痛手だ……!!


「神様の顔がどんどん変わる」


「俺は常にフクザツな事を考えているからな」


(とてもそうは見えませんわね)


 心の声が聞こえてるからねファルメラ。

 以前だったら野宿する必要があったが、今回はそれすらなし。

 夜通しトコトコ歩きながら、ずっと雑談をしている。


「ウェンディゴっていうの、神様だったの? 私はうちの神様が好きだなあ」


「ドラク王国を守護してくれていた偉大なる神なのですよ。ですけど、最近は守護の力が弱まってきたようですわね。だからカザン帝国に付け込まれた……」


『神にも力の限界があるのかも知れませんな。ということは、最も新しい神こそが最も強い力があるのではありませんかな』


「ウボアー」


「えっ、俺?」


 ぼーっとしながら、枝の上で目を光らせている夜行性の猿を数えていたのだが。

 突然話を振られるとはな……。


(恐ろしい力を持つ怪物なのに、隙だらけですわ……! いざとなればわたくしが、この剣でこの男を……! ですけれど、今はまだ彼の力を利用せねばなりませんわね)


 いいぞいいぞ。

 高潔さと、守るべきもののためならば狡猾さも兼ね備える。

 パーフェクトヒロインだファルメラ。

 スキスキ。


 リョナとかヒロピンから復活できたヒロインは、かくも魅力的なのだなあ。

 こうして俺達はひたすらに歩き続けて、明け方にシエスタへ到着したのだった。


 そうしたら、シエスタの真ん中に象がいる。


「あれっ!?」


「パオ!」


 俺を見て、象が鼻を持ち上げる。

 象を囲んで困っていた人々が、俺達に気付いてワッと盛り上がった。


「リョウさん!」「戻ってきたんだね!」「頼みがあるんだ!」「この大きな生き物をどうにかしておくれよ!」


 な、なにぃーっ!

 お前ら、象の世話を俺に押し付ける気か!?

 

お読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
ペット枠で象なのかw 乗り物としては全員乗っても余裕ありそうだけど 魔物相手だと戦力不足で大飯喰らい食費が嵩みそうw (リョウが気に入って魔改造するのかな)
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