第14話 ほうほう、この辺りの世界はそんなんなってるのね
「その魔王というのと俺は別人です。いいね? 俺はアニタから神様と慕われているので」
「そうですよ! 魔王なんてとんでもない。私を助けてくれた神様なんですよう!」
『むうう……!! 空々しく……! そなたらの狙いは何か。王国に手出しをするのはやめよ。我が管理する最後の人種である……!』
ウェンディゴは怒りに表情を歪めた。
敵意を持たれているな。
あと、本当にこいつは神様をやってたのか。
「俺がここに来た理由か? 教えよう。それはなんか、カザン帝国の連中がウェンディゴウェンディゴ言うから気になって見に来たんだ」
『何を世迷い言を……! なにっ、そなたの言葉から欺瞞が消えた……! し、真実だと言うのか! 我を呼ぶことで、王族の一人が命を捧げる必要があるというのに……!』
「それは知らなかったんだが、死んだとしてもリサイクルで復活させられるし、自己犠牲で倒れるヒロインもまた良いものだからね……。それで、せっかく来てもらったので聞きたいのだが」
俺は常々抱いていた疑問をぶつけることにした。
「この世界、どうなってるんだ? 明らかに治安が悪いし、南方ではバルログというモンスターがカザン帝国を襲ってるそうじゃないか。おおかた、帝国はバルログから逃れられる地を見つけるために侵略してきたんだろう。で、ドラク王国は引きこもっていて、間近の街シエスタを救うという選択も消極的だ。非常に余裕がないな、この世界?」
『全ては……全ては貴様が招いた事だ、オルトファース……!! 大いなる災厄の襲来から1000万刻が経過した後、新たなる災厄として貴様がこの世界に降り立った……! 貴様は再生しつつある世界を手中に収めんと人類種への攻撃を始め、多くの国々が滅んだ……。だが……世界が選んだ勇者が生まれ、彼らがお前を倒したと聞く……』
「じゃあ世界は平和になったんじゃないか。良かったなあ」
ウェンディゴがギギギ、と怒りの表情になった。
なんで怒ってるんだ?
『破壊された後の世界に新たな国々が興った……。災厄が連れてきた魔将どもと、オルトファースが作り上げた魔人たちはこの世界に巣食い、新たな脅威となった……。国々は争い、脅威と戦い、戦乱は耐えぬ……。人はこの乱れた世で生き延びるために必死になり、魔将と魔人は新たな魔王となるべく相争っている……! 終わらぬ絶望の世界、それがこのファールディアよ……!』
「なるほどー!! ありがとうウェンディゴ。凄く分かりやすかったわ。それと、重ねて否定するが俺はオルトファースではない……。リョウだ。リョウ・ナラだ。アニタの神様をやっている。そこのところよろしく」
そこまで告げると、どうやらウェンディゴが出てこれる時間が限界に達したようだ。
風雪が収まっていく。
『口惜しや……! 我に……まだ……管理者としての能力が残っていれば……。覚醒が足りぬお前を、ここに封印してやったものを……口惜しや……』
消えてしまった。
「よし、リサイクル!」
俺は倒れているファルメラに手をかざした。
彼女を光が包み込み、その指先がピクリと動いた。
そして、ふわりと浮遊するように立ち上がる。
「あら……? わたくしは……」
「おはようファルメラ。お陰でウェンディゴからとても貴重な情報を聞くことができましたよ」
「まあ! 会えたのですね。それは良かった……」
(リョウさんが無事でいるということは、神は彼を認めたということですの……? でしたら、おぞましい存在とは言えどわたくしたちの敵では無いのでは……。それに、わたくしの命を二度も救った……)
ファルメラは俺にとっての正ヒロインですからね!
特別扱いなのだ。
彼女はどうやら、己の命を使って俺という存在を測ったらしい。
結果、信じるに足ると判断したようだ。
ちなみにファルメラは二度目のリサイクルだねえ……。
俺が本気でリサイクルした相手は、人とは違う存在になっていってしまうので……。
俺のステータスの組織図を確認する。
おっ!
ようこそファルメラ!
名称 :ファルメラ・エレ・ドラク
種族名:デーモン
階梯 :第四
能力 :通常攻撃への耐性 手にした武器へのエンチャント 再生 闇視 肉体状態異常耐性
弱点 :光属性の魔化された道具
おおーっ、強いかも知れない。
アニタよりも上かあ?
だが、実力を測る機会が無いな。
「ウェンディゴにドラク王国の未来を託されたのだが、そのためには南方で暴れているバルログとか言う魔人をどうにかしないといけないらしい」
「まあ、そうだったのですね……!」
「ああ。カザン帝国がいきなり攻めてきたのも、なんかそのバルログってのの仕業なんだろう」
多分。
ラッシュやカザン帝国の連中から聞いたことを繋ぎ合わせて、それっぽく喋っているだけだ。
だが、これにラッシュがいたく感動したらしい。
『な、なるほどーっ!! バルログのことを聞き、そこを起点に様々な情報を集めて真実にたどり着かれましたか! さすがは我が神……!! 感服致しましたですじゃーっ!!』
「そおなの? 神様すっごーい!!」
アニタもそうだそうだと言っております。
そのうち、君の実力も確認していかないとな。
吸血するとパワーアップするっぽいじゃん。
こうして次なる目的地にカザン帝国を設定した俺達は、王国へ戻ることにするのだった。
とは言っても、振り返って少し歩くだけだ。
そうしたら、城壁の周辺に突如として紫色の霧が出現した。
大変濃厚で、卵が腐ったような臭いのする霧だ。
「なんですのこれ?」
「くさーい!」
『わしは臭いは分かりませんがな』
「なんだろうなー」
俺達は平然とこの霧を通過し、王国に帰還した。
すると、扉のすぐ先に騎士団長の姿がある。
目を見開き、愕然としている。
「き……貴様……どうして……!? それに、ファルメラ様も生きて……! な、なぜこのようなことに……! ポイズンミストの奇跡を全員がくぐり抜けて……」
これを聞いて、ファルメラの表情が変わった。
「ゼットム!! ポイズンミストの奇跡!? 神の御力を使ったのですか!? リョウ様と仲間の方々に!!」
「あ、いや、それは、その……」
他の騎士たちも、真っ青になって固まっている。
どうやらこれは、ウェンディゴを呼び出す儀式でファルメラが死に、俺達が万一生き残っても神の奇跡とやらで殺すつもりだったようである。
王国側も敵だったかー。
これは平和主義者の俺としても、許せないかも知れないなあ……。
「リョウ様、これは何かの間違いです。どうか、ここはわたくしの顔に免じて……、どうか……!」
ファルメラが俺の前に跪く。
うおおおお、姫騎士が! 己の誇りを押して! 裏切り者かも知れぬ騎士たちのために!!
うつくしーっ。
「許しましょう。一つだけ条件が」
「条件……? なんでしょうか。わたくしにできることなら何でも……」
「アニタに、そこの騎士団長の血をちょっと分けてもらいたいんですよね。騎士団長、ちょっとでいいから血をくれ、血を」
騎士団長は助けを求めるように、ファルメラを見た。
お前が殺そうとした相手だろ。
騎士の誇りとか無いんか。
無いんだろうなあー。
アニタはきょとんとして、
「どうして私が血を?」
なんて首を傾げているのだった。
そりゃあ、君の種族がヴァンパイアになっているからだよ。
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