第13話 遭遇、ウェンディゴなる存在
ウェンディゴに会わせてくれると言うので、改造してしまった謁見の間を元の形に近い感じへと戻す……。
おお、調子に乗ってぐるぐる回転させたから、これ完全に戻すの無理だな。
えーと、引っ込ませて、回転した部分は回転してない風の見た目で誤魔化して……。
「元通りだ」
「お、おお」
国王がコクコク頷いた。
「ドラク王国には手を貸すんで、ファルメラ様を案内してもらってウェンディゴに会いに行ってくるね」
「う、うむ……。我らの守り神なので、失礼が無いようにだけ、なにとぞ」
「分かりました分かりました」
適当に返事をした後、姫騎士に案内を願うのだった。
嫌味な感じだった姫騎士の姉は、俺と目が合うだけで恐怖に顔を引き攣らせる。
ドレスの下は粗相したりしてるんじゃないですか。
「なーんて言うか、ドラク王国の温度感がシエスタと全然違ってなあ。ま、いいんですけど」
『うむうむ、長く戦が起こっておりませんかったからな。神の名がウェンディゴであったことはわしも知りませんでしたが、その神が王国を守護しており、それに甘えていたのでしょうな』
「そうなんだねえ。じゃあその王国をやっつけちゃったカザン帝国は戦争慣れしてたの?」
ラッシュやアニタと、わちゃわちゃ会話しながら城内を歩く。
そこまで大きくない城の裏口を抜けて、その先に壁。
壁にも勝手口があって、そこを出てると王国のダウンタウンだ。
「姫様!」「良かった、姫様がご無事だ!」「戻ってきて下さってありがとうございます!」
民から好かれている系姫騎士!
だが身内からはあんまり好かれていない系姫騎士。
それで少数の部下でシエスタを助けるために乗り込んであんな目に遭ったわけだな。
ああ~。
自己犠牲!
姫騎士の鑑!
もう大好き。
なんでも手伝ってあげるからねえ。
「な、なんでしょうかリョウ様、わたくしをじっと見つめて」
「なんでも仰って下さいファルメラ様。俺はあなたがいい感じになるようにお手伝いしますからねえ」
ファルメラがゾゾゾーッとした顔になった。
(な……何を考えていると言うの……!? これもこの男の計略……!? 謁見の間で力を見せつけて、一瞬で場を支配してしまった恐ろしい男だもの。きっと腹の底ではもっと恐ろしいことを考えているに違いありません……! ああ、神様! どうかわたくしをお守り下さい……!)
流れ込んでくる彼女の思考がもう最高!!
あー、異世界転生して良かった!
本当に良かった。
素晴らしいこの世界!!
ダウンタウンを抜けると、王国の裏門があった。
この先には、山しかない。
鬱蒼と茂る木々の合間から見える、真っ白な山だ。
雪に覆われているのか。
まるで、あの山だけ気候が全く違うような。
「ここからは本来、時間を掛けて旅をしていきます。そして神がおわすあの山にたどり着き、長い長い山道を風雪に耐えて登り、頂上にて神と面会するのです。ですが、今はその時間がありません」
ファルメラは懐から、ペンダントを取り出した。
針金みたいなものが、何度も直角に折れ曲がって幾何学な立体を構成する奇妙なペンダントだ。
「王家に伝わる国宝、ウェンディゴの瞳です。これを用いて、遠隔より神と話をします。代償があるらしいのですが、これを貸して下さったお姉様は何も教えてくださらなくて」
「すごーい! ウェンディゴさん呼べるんだねえ」
『凄い道具があるものですじゃー』
「絶対に裏がある。俺は詳しいんだ。まだまだあの姉は何か企んでる」
場合によってはなんかとんでもない代償だったりしないかな?
するんじゃないかな?
「でも、あっさり貸してくれたよねえ」
『うむうむ。どうして、姉君はファルメラ様に神を呼び出す役割を? 護衛の兵士もおりませんぞ!』
ファルメラは何も答えない。
これはあれだな。
国民の信頼も篤く、民を思う気持ちが強いファルメラは、そのままだとぶっちぎりで望まれる王様になってしまうと見た。
国王は王子か王女を次に付けたいのと、国内の政争みたいなのでファルメラを排除しようという動きが働いているんじゃないか?
多分そうだろう。
ひいー、なんて可哀想なファルメラ!
可哀想は可愛い。
ますます輝いて見える。
「わ……わたくしの身の安全は、リョウ様に預けます。では……。我らドラクを守る神よ。ウェンディゴよ……。どうか我らの願いに応え、御身をこの場に顕し給え……。オーサ・ウィル・ヘム・ソーホン・アル・ウェンディゴ……」
ファルメラが握るペンダントが、光り輝き始める。
自国はそろそろ夕刻に差し掛かるが、そんな周囲の明度が一気に落ちた。
暗闇になる。
そして足元も変わる。
雪だ。
周囲を風が吹き荒れ、雪が叩きつけてくる。
「ひゃあー」
アニタが悲鳴を上げて、俺の影に隠れた。
俺を盾にする奴があるか。
(く……苦しい……!? 息が……できない……! こ、これは、ペンダントが輝いて、わたくしの命を吸って……? そんな、お姉様……!)
そしてファルメラは……ゆっくりと膝をつき、そのまま力なく崩れ落ちた。
死んだ。
ピクリとも動かない。
代償は使うものの命っていう劇物じゃないかこれ。
ンモー、ひどいことをするお姉さんだ。
あとでファルメラはリサイクルしてあげるからねえ。
「きゃっ! ファルメラ様が死んじゃった!? どうしよう神様!」
『なんということですじゃー!!』
「安心するんだ二人とも。またリサイクルする」
「そっかー安心!」
『ホッとしたですぞ』
そして俺達の眼の前にウェンディゴが現れた。
風雪が形作る、実態無き巨大な単眼の巨人。
その頭だけが中空に浮かんでいるのだ。
『オ……オオオ……オ……。我は再び……目覚めたり……。汝、我と見えんとする者、名を……。汝の名を告げよ……』
「リョウだ」
「アニタだよ」
ラッシュとヘッドレスは、なんか跪いている。
ヘッドレスはともかく、ラッシュは王国ゆかりの人物だもんな。
『オオ……。リョウ、アニタ……。……なんということか……。そなたらは闇の存在……。人ならざる者……。しかも……この因子の波動……! オオオオ……! 現地時間1861400刻の以前に核を破壊された、世界破壊者……魔王オルトファース……!! なぜ……なぜ今、ここに……!!』
再確認みたいな内容だけど、やっぱり俺、倒された魔王だったのね!?
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