第18話 お話をしよう……なにっ、宣戦布告!?
ひたすらひたすら道なりに歩いていくと、道端に集落などが見える。
帝国の集落だろう。
そして気候も変わってきた。
「普通に一週間くらい歩き続けたからな。流石に帝国に到着するか」
『姫とアニタはパパールと一緒ですからな。パパールはわしらより速いので、わしらが夜を徹して移動していても、寝起きでドシドシと追いついてきますし』
「うんうん。象って凄いよな。俺の配下になってパワーアップしたせいな気もする」
大河は分かれ、俺達の近くを流れている。
時々シンカイが顔を出して手を振ってくる。
俺も手を振る。
「主よ! ここからの我が役割はどのようなものでしょうか!」
「帝国は内部まで運河を通してるだろう。そこに突入して内側から洪水を起こし、混乱させてやれ。それで入口を突破しやすくなる」
「御意」
『優秀な仲間が増えましたな』
「お前だって優秀なんだぞラッシュ。そろそろ偵察の時間だ」
『心得ましたぞ。旅の途中で神様がわしに色々オプションをつけてくれたので、鳥を装う事が可能になりましたからな! そおれ、行くぞヘッドレス!』
「ウボアー!」
ヘッドレスが、ラッシュを包む仮面を外す。
そして、ドクロの左右に手を添えて……。
人間を超越した怪力で、空中に投げ飛ばすのだ!
『うおー! 行ってきますぞ神様~!!』
「いってらっしゃ~い」
ラッシュは鳥みたいな頭を頭頂に生やし、横から翼を広げて飛んでいる。
ドクロっぽい胴体の鳥に見えないこともない。
自然、自然。
俺がヘッドレスと一緒にトコトコ歩きながら、集落を覗いたりしていく。
「ひい、首無し人間と外国人!!」「な、なんでここまで!?」「カザン帝国が侵入を許すなんて!」
許した理由は、俺が向こうの派遣された軍を全滅させたからだよ。
「ちょっと聞いてもいい?」
「ひいー、命だけはお助けを!」「こ、こいつ! 母を離せーっ!!」
勇気ある若者が、俺に槍を突きつけてきた。
穂先が俺にぶつかって、ポキっと折れる。
「あっ、なんという野蛮さだ。いきなり攻撃をするとは。一回は見逃すぞ。仏の顔も三度までというからね。二度目は集落全部ゾンビにするからな」
俺は笑顔で告げると、槍をリサイクルして取り上げ、ヘッドレスに渡した。
「ウボア!」
「聞いてもいい? ここからずっと先に行くと帝国? たくさんの軍人がそこの道をダッシュして行かなかった?」
「い、行ったわ……! だから、戦争に勝ったんだと思ってた……! もう、バルログの恐怖に怯えなくてもいいって……。違うって言うの……!?」「くそ、化物め! 母を離せ!」「異教徒から仲間を守るぞ!」「この数がいるんだ! 一気に攻めれば……!」
いかーん。
この世界の村人は攻撃的だなあ。
「二度目は無いって忠告したのに!」
村人が、次々に武器を持って現れた。
子どもたちは石を投げてくる。
こりゃよろしくない。
「シンカイ!」
「ここに」
村に引き込まれている運河から、シンカイが姿を表した。
いつの間にか村の最深部に入り込んでいたシンカイに、村人たちが恐怖の悲鳴をあげる。
「押し流しちゃいなさい」
「御意! 魔術! タイダルウェイブ!」
次の瞬間、大量の水が運河に流れ込んだ。
それが一瞬で氾濫し、高さ1mくらいの洪水となって村人たち全員を押し流す。
家も押し流される。
木々も根こそぎ引っこ抜かれて流れる。
「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!!」「ウグワーッ!?」「助けてーっ!!」
「助けてやろう。ただしゾンビだ」
こうして集落そのものをゾンビ軍団としてリサイクルした俺。
破壊された家々はリサイクルし、自走するゴーレムにリメイク。
戦力がいきなり整ってしまった。
「ウボ、ウボアー」
「おお、ゾンビ軍団はお前に指揮権を委ねるぞヘッドレス!」
「ウボアー!」
「よし、進撃だ」
そこへ、パパールが追いついてきた。
「パオーン」
「神様~!」
「リョウ様。これは一体……?」
「ああ、こちらは一度の狼藉は許すと言ったんだが、二度狼藉を働いたんで有言実行したんだ。俺も舐められたらおしまいな商売だからね。根こそぎ行った」
「お、恐ろしい人……!!」
(でもどうしてでしょう。以前は恐怖と嫌悪感でいっぱいだったのに……。今のわたくしの中に、彼の行いへの忌避感が無い……。わたくしはどうしてしまったの……? いかな敵国の民とは言えど、彼らに罪があるわけではないのに……)
それはあなたがデーモンに生まれ変わったからです!
シンカイがズゴゴゴゴーッと音を立てて水中に消えていく。
いやあ、優秀優秀。
なお、彼が手を振るので、こっちもみんなで手を振った。
我が組織内は和気あいあいとしたものである。
そこにラッシュも戻ってきた。
『おおーッ! 皆の衆、集まっていますなー! この先すぐに帝国ですぞーっ! 神様のゾンビ爆弾作戦がある程度刺さったようで、城壁は半壊。立て直しが間に合っておりませんのじゃ!』
「あれえ? 思ったより被害が少ない?」
「それはだな主よ」
近くの川から、シンカイが顔を出した。
「生まれ変わる前の我と、河のモンスターたちが美味しくいただいてしまった。すまぬ」
「あ、そっかー!! ゾンビには、帝国で爆発しろとしか命令してなかったもんな。いや、シンカイたちは悪くない。こっちのミスだ! まあ仕方ない犠牲だよ」
こんな些細なことで、仲間の和を乱す必要はないからね。
俺は笑って許し、俺のミスということにした。
「神様ったらうっかりー。それじゃ、行こ行こ!」
「パオーン!」
パパールと、彼に乗ったアニタとファルメラが先行する。
俺とヘッドレスは小走りだ。
あとにはゾンビたちと家屋ゴーレムが続く。
おお、見えてきた見えてきた。
どうやら俺達が集落にお仕置きしたのを見てたらしく、既に大量の兵士が守りを固めているではないか。
「来た! 来たぞーっ!! ウェンディゴが放った異教の魔物どもだ!!」「なんとおぞましい……!!」「迎え撃て! 民を守れ!」「くそっ、バルログだけでなく、ウェンディゴまで……! どうしてこんなことに!!」
やる気満々じゃないか。
俺はパパールとともに歩み出た。
「皆さん! 俺は戦いに来たわけではない! そもそもカザン帝国とかほんと、こう、心底どうでもいいんで、バルログに関する情報が欲しい! バルログをどうにかすれば、お前たちも侵略とかしなくていいだろ? 俺はそのバルログをどうにかしに来たというわけだ!」
人間はともかく、バルログは気になるからね。
俺は誠心誠意、彼らに敵ではないことを伝えたつもりだ。
だが、激昂するカザン帝国!
「帝国がどうでもいい……!?」「愚弄しおって!!」「わ、我らが同胞を、爆発する化物に変えている……!」「女や老人、子どもまでいるぞ!」「なんて……なんてことを……!!」「ウェンディゴの魔物めえ!!」
えーっ!?
君らもやったことじゃないか。
おま言う~!!
それと、個人的に格下認定してる奴の手下と言われるのはそろそろ勘弁だ。
「ウェンディゴは何も関係ない! あんな外に出られないヘタレと一緒にしないでくれ! それと、彼らがゾンビになったのは理由がある! 俺に二回攻撃したから全滅させたんだ! 俺は悪くないぞ! それに、俺はとても平和主義で慈悲深いんだ。さあ、交渉しよう! 君たちにそのチャンスをやるぞ」
「うわああああああ」「あいつを、あいつを殺せええええええ!!」「絶対に通すなああああああああ!!」「神よ! 邪悪なるものを討ち滅ぼす力を!」「我らの正義に加護をーっ!!」
あれえ!?
「完全に宣戦布告した形になりましたわね……」
淡々と告げるファルメラ。
なんでだろうねえ。
そして、一本の矢が放たれて、パパールの上のアニタに炸裂……というところ。
アニタがそれを、無造作に掴み取った。
「あれっ!?」
きょとんとするアニタ。
対面では、愕然とする弓兵。
「取れちゃった! 返すね!」
アニタは、矢を弓兵に投げ返した。
弓を使わない、投擲の一撃だね。
それが風を切る甲高い音を立てながら飛来し、弓兵の頭に炸裂。
その勢いのままに、首をふっとばした。
「ば、化物がああああああああ!! 突っ込めええええええええ!!」
カザンの将軍が叫ぶ。
帝国軍が走り出した。
「いかーん、全面戦争になってしまった。まあ、こっちのほうが話が早くていいか」
『神様、口元が笑ってますぞ』
「いやあ……ここまで意思疎通に失敗し続けてると、笑えてくるだろ」
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