第110話 俺も全力で行く!
もう、魔人と人に分かたれた姉妹の葛藤とかそんなことやってる場合ではなく、オトハ将軍が黒杖で輝く槍を弾き、カレンは次々に光り輝く矢を放っている。
守りと攻撃、いいコンビネーションだ。
やっぱ姉妹は息が合うなー。
なお、マロングラーセの攻撃を弾けるあの黒杖、やっぱ本物なんだな。
やべえ武器だわ。
多分、この世界であの黒杖を砕ける物は存在しない。
そしてローデスがテシウスの援護を受けて身体能力を上げ、糸の先端に自分の剣をくくりつけ、空中を駆け回りながら斬撃を加えていく。
そういう使い方があるのか!
あの大剣も業物らしく、マロングラーセにちょいちょいダメージを与えているような。
アザレアの魔法は、ダメージはなくても大魔王の体の動きを弾いたりし、制限することに成功している。
いいコンビネーションだ。
そこにゼクウが飛び込んできて、
「ツアーッ!!」
『!!』
普通にマロングラーセ殴ってるんだけど。
なんだあいつ。
あいつだけ違うステージで戦ってるな。
あっ、輝く槍をめんどくさそうに掴んで捨てた。
なるほど、マロングラーセを倒すために呼ばれた勇者というのは間違いないだろう。
今のゼクウはロケットと一体化し、メタルヒーローのような外見になっている。
確かにこいつの攻撃は通用しているが、明らかに攻め手が足りていない。
与えたダメージが、端から回復していっている気がする。
「リョウ様、きりがありませんわ!」
「ほんとにね。これはもう、俺が本気の全力で行くしかないのではないか」
「リョウ様、この期に及んで手加減してましたの!?」
「常に力を出し惜しみするクセがついちゃってるんだ……。全力で負けたらダサいという生前からのスタンスで、俺は何者にもなれなかったからね……!」
「でしたら、今から全力で参りましょう! もしそれで失敗しても、誰にもリョウ様を笑わせませんわ」
おっ!
今のファルメラの一言、ジーンと来たな!
オルトファースの目にも涙!
カグツチは転がってて動けないし、アニタは放って置くとビューンと飛んでいってマロングラーセの餌食になりそうだし。
ここは俺がやるしかあるまい。
ハンドレッツもこれ以上減らしたくはないしな。
「よーし、ではガワを脱ぐぞ。ぬうーん! 真・オルトファース!』
俺は元の姿に戻った。
岩石のような巨大な手が、ドーナツ状の輪を作り、そこに巨大な眼球が浮かんでいる姿である。
ここにやはり岩のような手足が生えている。
『ゼクウ、助太刀するぞ』
「おお、やっと来たかリョウ! こいつ、再生力が高すぎて俺の攻撃では削りきれん!」
『だろうだろう。ということで、俺も殴りつつ対策を考える』
俺は気合を入れて、マロングラーセをぶん殴った。
うわーっ、なんだこれ。
地面に根でも張ってるんじゃないかというくらい硬い殴り心地。
この白いエイリアンみたいな見た目はこの世界に現れているほんの一部で、こいつの存在はこの世界の奥深くに食い込んでがっちり固定されているんだろう。
だが、流石に俺が思い切りぶん殴ったらちょっとのけぞった。
殴ったことで、凄まじい衝撃波が周囲に発生したが。
ハンドレッツが「うわーっ」と吹き飛ばされていく。
むしろ吹っ飛ばされた方が安全まである。
今からここはヤバい戦場になるんだからな。
「いいぞリョウ! なるほど、俺も全身のバネを使って殴らねばならんか! いや、腕の三倍のパワーを持つキックだ!」
一旦飛び上がってから、重力を無視してロケットエンジンで加速するゼクウ。
その飛び蹴りがマロングラーセに突き刺さった。
揺らぐ大魔王。
効いてる効いてる!
問題は、この合間もずっと奴の頭上から、新たな宇宙が生まれてはあの輝く槍の雨を降らせてくるのだ。
ぶっちゃけ、マロングラーセの攻撃はこの一芸しか無い気がする。
そう、この一芸以外必要ないのだ。
槍の密度が上がり、俺とゼクウ以外はこの場にいられなくなる。
「一旦全員離れてろ! 俺とリョウで行く!」
『ああ。ここは俺達以外が参戦するとそろそろ死ぬ! 死んだらもったいない! こいつに殺されたら復活もできないんだぞ! エコじゃない!!』
「リョウさんのこんな声初めて聞く! 本当に危ないんだ!」
「皆様、距離を取りますわよ!」
「リョウの奴が悪魔なのかいいやつなのか全く分からない……」
「た、たまにはいいこともするんでしょ!」
よし、周囲から人がいなくなった。
これで……床を全て利用してのリビルドが可能になるぞ。
『よく聞けゼクウ! 俺は今こうやって普通にマロングラーセをぶん殴ってダメージを与えているが……実は後衛型だ!!』
「な、なんだってー!!」
気づいてなかったのか!
『俺は何かを作り変えたりして、仲間を支援する事が本来の能力なのだ! そしてお前は相手とガチンコで殴り合う事が能力! しかし、この距離ではロケットによる加速も生きまい!』
「うむ、そうなのだ。そしてこのアーマーにも奴の攻撃のダメージが蓄積してきている。早急に決着を付けねばならないのだが、俺がここを離れると仲間たちが危ない。あの尊い関係性が失われてしまう!」
『キモいなー。俺もなんか外郭がガリガリ削られてて、ヤバそうではあるんだが。だが、ここで俺が全力でお前をサポートする。それによってお前の攻撃を超強化し、一撃でマロングラーセを屠るというわけだ! どうだ、乗るか?』
「やるぞ!!」
『即断したな!? 俺が騙してるんじゃないかとか、この一撃が通用するのかとか葛藤はないのか?』
「この一撃に全身全霊を懸けるから迷うという選択肢はない! やってくれ!」
『気持ちの良いやつだなー。じゃあやるか! リビルド……全力で行くぞ! 俺の概念から! こいつを殺しうる武器を作り出す! 宇宙船の下部大半をリビルドし……!!』
『我が船が……アトランティック大陸が、破壊されていく……!!』
『お前の船で、お前を仕留めてやる! リビルドはあれだな。どんなに気合を入れてて、どんなにスケールがでかかろうが、あっという間に終わるのがいいところだな。重要性と掛かる時間は何も関係がないのだ。これこそ……波動砲!!』
周囲から大量の海水が流れ込んでくる中、俺が生み出したそれに触れると、水は一瞬で水蒸気爆発を起こした。
超高熱を放っているのだ。
並大抵の存在では、この場にいることもできない。
俺とゼクウとマロングラーセだけがいる。
マロングラーセは俺が作り出したものを認め、頭上にとびきり大きな宇宙を呼んだ。
そこから、アホみたいなデカさの槍が出てくる。
おいおいこれ、大都市を一撃で消し飛ばすレベルのやつなんじゃないのか?
だが、こっちもお前を一撃で消し飛ばす武器だ。
弾丸は……。
『行くぞゼクウ!』
「おう! 俺を撃ち出すんだな!?」
最後の一撃を叩き込むぞ!
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