第109話 マロングラーセ戦
マロングラーセが宙に手をかざす。
すると、奴の頭上にグニャグニャとした空間が出現した。
あれはなんだ。
ハンドレッツの面々が仕掛け始める。
おいバカやめろ。
俺の後ろに隠れてろ。
「あぶなーい!」
アニタが飛び出そうとするのを、俺はひっ捕まえた。
「あーん! リョウさん離してー!」
「カッとなって飛び出したあいつらはおしまいだ。くっそー、今まで楽勝な戦いしかしてこなかったのがここで仇になったな。ありゃ……宇宙だ」
マロングラーセが頭上に召喚したのは、まさに宇宙だった。
そこからギラギラと輝いて見える光の槍が取り出される。
いかーん。
「う、うわあああああ!」
立ち向かっていったハンドレッツの数人が、槍に近づいただけで溶けた。
溶けて消滅した。
こりゃダメだ。
あいつはまだ、武器を投げてすらいない。
用意しただけだ。
その槍に近づいただけで、ハンドレッツが三人減ってしまった。
「リョウさん! 直せないの!?」
「完全に消滅した。いくら俺でも無からは再生できないなあ。ってことでお前ら! 俺の後ろに隠れろ! 槍が来るぞーっ!!」
俺は床材を引っ剥がしながら高速でリビルド!
飛来する槍。
それを、俺が作り上げた盾が受け止めた。
流石にこの宇宙船を使った素材なら持つな。
問題は……。
宇宙空間から、次々に槍が飛び出してくることだ。
『我が炎で焼き尽くしてくれよう! ぬおおおおおおーっ!!』
吠えるカグツチ。
元々はマロングラーセ側であっただろう彼だが、今こそ親殺しを果たして独り立ちするのだ!
俺の部下だけど。
槍の一本は、カグツチが放った凄まじい炎を受けてぐにゃりと曲がる。
『今ぞ!!』
炎をまとって飛翔するカグツチ。
彼を目掛けて、槍が何本も到来した。
これを、炎で弾こうとするカグツチだが……。
『その炎の性質は把握した。一本目で炎を剥がし』
『なにぃっ!?』
槍が飛び散り、カグツチが纏う炎を吹き飛ばす!
『二本めにて仕留める』
槍は狙いあやまたず、マロングラーセの語る通り。
カグツチの体を刺し貫いた。
『ウグワーッ!!』
落下するカグツチ。
さらに、槍が飛来し、カグツチを串刺しにする。
「いかーん! カグツチレベルでも相手にならないか! 独断専行禁止! 実力が違いすぎる!」
俺はバタバタ走っていって、カグツチに刺さった槍を引っこ抜いた。
分かりやすい実体がある槍ではないな。
宇宙線みたいなのを集めて作ったような武器だ。
爆発すれば、小さな村なら一撃で消し飛ぶことだろう。
それを凝縮して放つから、強力な魔人にも通用するのだ。
なお、俺が槍を引っこ抜いている間、作り上げた宇宙船の盾は動き回り、次々に槍を弾いている。
問題は……マロングラーセが槍を次々放ちながら、本人がゆっくりと近づいてくることだ。
おお、ヤバいヤバい。
「わたくしの分身よ! 行って!」
そこへ、ファルメラの十二人の分身が放たれた。
亜音速で駆ける影が、十二方向から大魔王を討つ!
だがしかし、切っ先が到達する瞬間、マロングラーセの周囲でそれが停止した。
届かない?
いや、届いてるんだが……言うなれば、存在の位階みたいなものがあまりにも違いすぎて、ファルメラの攻撃がマロングラーセに当たる、という状況を作り出せないのだ。
「そんな……!」
『優れた力……。解析はできないが……破壊は可能だ』
マロングラーセが首をぐるりと一回転させ、全ての分身を睨んだ。
ファルメラの分身が次々と爆ぜる。
それらは力を失った、ブレスレットの破片となって地に落ちた。
あいつめ、解析はできないと言ったな。
「ははーん、マロングラーセは、分析力が高いわけじゃないな。それは多分、他のやつにアウトソーシングしてて、今のこいつは純粋に力を叩き込むことしかできないのだ」
後はカグツチを一撃でぶっ倒したあれだな。
段階を踏んで行うことで、マロングラーセの攻撃は必殺となる。
その段階を踏ませないことが重要だ。
『忌まわしい盾は……一箇所に我が力を連続で命中させることで』
「あ、やべ!」
『砕く』
砕けた!!
あいつの攻撃を止められる盾がー!
「よし、また作る」
『ぬう……!』
俺が床板を引っ剥がして次々盾を生み出し、これを見てマロングラーセが目を吊り上げた。
段階を踏めば攻略できようが、段階を踏むというコストが掛かってる!
これで対策が思いつくまで拮抗だ!
アニタはいつ飛びかかろうかと身構えているし、ハンドレッツもまだまだやる気だ。
ファルメラは分身から伝わった手応えに、何か考えている。
そこに……やっと彼らが到着した。
糸が空間を走り、大剣を振りかぶった少年が飛んでくる。
「おらあああああああっ!」
大剣はマロングラーセの作り出した空間に命中すると、それにピシッとヒビを入らせた。
なにぃーっ。
宇宙を割る!?
いや、あれは宇宙そのものではなく、宇宙の力を取り出すための窓口なのだろう。
それを砕けるのが、ギフト持ちたちの力というわけだ。
もしかして彼ら、俺と同じ所から力をもらってるんじゃないのか?
『私の力に抗える……危険だ』
やってきた少年、ローデスを睨んだマロングラーセが、力を使おうとする……。
だが、ローデスの体が光り輝き、彼は空中で態勢を変えて大きくジャンプ。
マロングラーセの視界から消えた。
その直後に、光る矢が何本も降り注ぐ。
さらに、氷の粒が大魔王に叩きつけられる。
『何を……このようなもの……!!』
マロングラーセの動きが止まった。
ダメージは無いが、到着した彼らの攻撃が通じているぞ。
勇者パーティだ。
ゼクウが腕組みをしながら飛んでくる。
途中でマロングラーセの槍と普通にぶつかったが、
「ツアーッ!」
とか叫んで頭突きで折った。
でたらめだあ。
「だが、これでこちらは勢揃いだ。大魔王マロングラーセ、君の時代は終わったんだ。この世界からご退場願おうか」
俺は守りから、そろそろ攻めに転じることとするのだった。
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