第11話 ドラク王国への旅路
「では参りましょう」
(この恐ろしい男を、本当に王国に連れて行っていいものなの……? ですけど、あれほどまでに破壊されたシエスタを再生させ、亡くなった方々を蘇らせた圧倒的な力……。たとえ人智を超えたおぞましい存在と言えど、今の王国にはこの力が必要です……!)
健気だ……!
そんなに心配しなくても、俺はあなたのキャラクターが本当に好きなので裏切りませんよ。
「シエスタから先に行くの、初めて! なんだかドキドキしちゃう」
『わしにとっては里帰りじゃなあ』
アニタがはしゃぎ、ラッシュはしみじみ。
なお、ラッシュは空を飛ぶドクロであり、ベースになっていたボディが今回の戦いで無事だった唯一のゾンビになる。
これ、元山賊だけどラッシュ的にはいいのか?
『おい体よ、お主もドラク王国の土は踏んだことがあるまい』
ゾンビボディが親指を立ててみせた。
『そうじゃろうそうじゃろう』
ここだけ分かり合ってるな。
やっぱり、一心同体になると何かしら通じるものが生まれるんだろうか。
「あのお、リョウ様。こちらの方はどうみても人間ではないのですが……」
「ええ、頭部のドクロと体のゾンビで、二人で一人のクリーチャーですよ。ご安心下さい。どちらもきちんとわきまえのある人格ですから」
『そうですじゃー! 王国の王女殿下とともに行けるとは、このラッシュ光栄の極み!』
ゾンビボデイがグッと親指を立てた。
アニタも真似して親指を立てている。
では俺も……。
「どうして皆さん一緒に!? ま、まあいいでしょう。ですが、その風貌ではいらぬ誤解を招く可能性があります。何か顔を隠すものがあればいいのですが」
「ああ、それは任せて下さい」
ドラク王国へ向かう旅路は、踏み固められた土の道。
つまりは人間が多く通るから道の体をなしているだけで、本来は自然の一部ってわけだ。
当然、あちこちにモノが落っこちている。
木の皮とか、葉っぱとか……。
俺はこれを拾い上げて、
「リサイクルと……リメイク!」
木製の仮面のようなものを作った。
「ラッシュ、これを装着してくれ。お前のサイズに合わせておいたぞ」
『おお神様、かたじけない! 頼むぞボディよ』
ゾンビボディが受け取り、ラッシュの上にこれを被る。
頭の後ろまでを覆う木彫りの仮面で、変形した葉っぱが髪の毛のようにあしらわれている。
『戦いで傷を負い、仮面を外せぬということにしておきましょうかのう。いや、しかしドラク王国は数十年ぶりか。胸が踊りますな』
「ラッシュ、あなたは王国ゆかりの者だったのですか?」
『はっ、そうですじゃ殿下。わしはエルメラ様がおられた時、庭師をやっておりまして。ですがエルメラ様の婚約者である商人から不興を買いましてな。解雇されて炭焼き職人になっておりましたのじゃ』
「エルメラはわたくしの叔母です! そうでしたか……。あなたはあの時代にいた庭師だったのですね……。叔母が不義理をして本当にごめんなさい」
『ああいや、顔を上げてくだされ! あのあと色々ありましたが、わしは今、こうして第二の人生を謳歌しておりますのじゃ! それにまた王国を訪れることができる! あの頃から、王国がどれほど変わったのか、楽しみでなりませんぞ』
「ご期待に添えるといいのですけれど。アニタは初めてでしたよね?」
「はい! 都会楽しみです!」
アニタは素直でいい子だねえ。
口に出していることと内心が完全に一緒だし。
俺は彼らのやり取りを見ながらほっこりしていた。
可哀想は可愛いとは言っても、いつもそればかりでは食傷してしまう。
ほのぼのもまたいいものなのだ。
街道を行き交う者はほとんどいない。
カザン帝国による侵攻のせいで、ドラク王国は自国に閉じこもっているのだろう。
一晩を野宿で過ごし、俺とラッシュとゾンビボディ、女子は女子組で寝た。
ラッシュとゾンビボディは一睡もする必要がないので、見張りには最適だ。
いや、まあ俺も睡眠は必要ない体なのだが、趣味で寝ている。
「あまり眠れた気がしないのですが、全く眠気がありません。むしろ体が軽いですね……」
「不思議ですよね! 私も神様に二回復活させてもらったら、ずーっと元気なんです!」
「アニタは一見、顔色が悪いくらい白い肌に見えますのに」
「元気なんですよ。あ、でも太陽は長く当たってると痛いです」
ふむふむ。
人間を生きた状態にリサイクルすると、だんだん性質が変化していくらしいな。
実地で情報が得られて嬉しい。
俺が持つこの力は、やはりリサイクル。
復活ではないのだ。
シエスタの街の住民も、大体みんなリサイクルした。
これは巨大な実験場だな。
二回リサイクルすると、人間とは掛け離れた感じになるのではないか。
「アニタ、これを使うのだ。枯れ木と葉をリメイクして作った日傘だ」
「神様ありがとうー! あ、太陽の光が届かなくなって快適~」
これはラッシュとゾンビボディも同じようだ。
日差しを遮る葉っぱのコート、そしてラッシュの木製の仮面。
これで彼らも調子がいいらしい。
うーん、魔王スキル、奥深い。
……と思ったら、魔王スキル画面の横に右向きの三角マークがあるのに気づいた。
なんだこれは?
チョン、と横に押してみる。
組織図、という表記が出現した。
なんだ、なんだこれはー!
一番上にアニタがいるな。
名称 :アニタ
種族名:ヴァンパイア
階梯 :第三
能力 :吸血によるパワーアップ 再生 闇視 肉体状態異常耐性
弱点 :日光 光属性の魔化された道具
名称 :ラッシュ
種族名:フライングスケルトン
階梯 :第二
能力 :飛行 闇視 不眠 肉体状態異常耐性
弱点 :日光 不死者を対象とした特攻武器
名称 :ヘッドレス
種族名:レブナント
階梯 :第二
能力 :フライングスケルトンとの合体によるパワーアップ 中強度の再生 闇視 不眠 肉体状態異常耐性
弱点 :炎
「ゲームみたいになってる! というかこれは……なになに? 魔王軍組織図……? 魔王……!? やっぱり魔王……? いかんでしょ」
「何かおっしゃいましたか、リョウ様?」
「なんでもありません」
「到着しました。ここがドラク王国。わたくしの生まれ育って国です」
丘をぐるりと巡ると、それが見えた。
小山に見えたものを大きく削り取り、その中に作られた城塞国家。
ドラク王国に到着したのだった。
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