第103話 見つけた、海賊王!
吸血鬼村の面々には、それぞれ特殊な技能があるらしい。
例えば肉屋のおじさんの場合、肉になりうる敵を問答無用で肉切り包丁で叩き切れるし、遊び好きなガキンチョどもは抜群のコンビネーションで、遊びの中に敵軍を巻き込んで翻弄する。
ギリアの場合、その手癖の悪さと金の匂いを嗅ぎつける能力だ。
そういうの、吸血鬼化してパワーアップするんだなあ。
凄い勢いで走っていくギリアを、みんなで追いかける。
その後、立ち止まったギリアを護衛して、押し寄せる海賊王の軍勢を叩き潰す。
こいつら、青白い肌の船員みたいな魔人なのだ。
どうやら水中でも強いようだが、残念ながらここは巨大海賊船の甲板なのだ。
「学習しませんの? 集団では勝負になりませんのに」
一瞬で大群を切り刻んだファルメラ。
今回の敵は銃まで持ち出してきてたけど、そもそもファルメラは視認できない速度で走るので狙いをつけるどころではなかったな。
複数人のファルメラが、敵軍を蹂躙する。
銃は吸血鬼村のみんなが楽しそうに回収しました。
おもちゃを手に入れちゃったねえ。
「で、どうだギリア。金の匂いはするか」
「するね、するねえ……。なんだかあたしゃ、金の気配が凄くよく分かるようになったんだよ。あっちだよ、あっち!」
またダーッと走っていく。
「ギリアおばさんたのもしーい!」
「戦闘力は低いらしいから、独断専行しないで欲しいけどな!」
またおばさんを追いかける俺達なのだ。
そして走ること一時間と少し。
それらしい施設を発見したのだった。
俺達、距離にすると福岡市内を走り回るくらいの移動しかしてないんだが、どうやら巨大海賊船の中枢機能は、この福岡市のスペースに全て収めてあるらしかった。
やたら広くても、使い勝手悪いもんな!
多分、他は居住区だったり畑だったりするんだろう。
遠くには山まで見えているし。
山がそびえ立つ海賊船とはいかに。
さて、発見した施設だが、石造りの神殿みたいなところだった。
パルテノン神殿の完全版かな?
ギリアはここにたどり着くと、神殿を守っていたデカい海賊に取り押さえられ、ぎゃあぎゃあ言っている。
いわんこっちゃない!
「床板をリメイク。手投げ矢を作り……シューッ!」
ズドンとぶっ放された矢が、デカい海賊たちに突き刺さった。
「ウグワーッ!!」「ウグワーッ!!」
そこへアニタがすごい速度で走っていって、海賊二人の体を真横からまとめて輪切りにした。
素晴らしい怪力。
なお、ギリアはシュババッと動いて神殿の中に駆け込んでいった。
強い。
あのおばさんには俺も一目置いてしまうな。
どーれどれ?
あっ、デカい南京錠を針金で開けた!!
流石過ぎる。
扉を開けたら、なんか物凄い音で鐘みたいなのが鳴り響くじゃない。
これ、警報だったりする?
あっ、ギリア警報に驚いてが逃げた!!
あのおばさん、どこ逃げる気だ!?
まあ、アニタが召喚できるし気にしなくていいだろ……。
ということで、俺は財宝を拝むことにした。
この神殿は丸ごと宝物庫だったようだ。
ギラギラに輝くお宝の山が、所狭しと積み上げてある。
管理はあまりされてないようだな……。
そもそも、世界が魔人のものになってしまったら、こういう財宝なんかは価値がなさそうだからな。
吸血鬼村のちびっこたちがワーッと中に駆け込んでいき、黄金にエメラルドとサファイヤを散りばめた地球儀みたいなのでサッカーを始めた。
おっ、サッカーと思ったら野球か!
地球儀を黄金に輝く装飾剣で打ち返すのね!
残念、剣が折れてしまった!
とかやってたらだ。
「主よ。なんか来ますぞ」
「なんかってなんだよ」
『わしが見た所……! あれは海賊王ですじゃ~!!』
「ウボアー!」
「な、なんだってー! まあ、宝物庫でこんな罰当たりなことしてたらそりゃあ怒り狂ってやって来るか」
ちびっこたちには遊びまくる事を指示し、俺は外に出た。
巨大な戦闘用バイクとかバギーみたいなものが土煙を上げて走ってきている。
その中央に巨大な玉座カーみたいなものがあり、そこに海賊王が座っていた。
見上げるような巨体で、いかにも海賊らしい格好をした魔人だぞ。
右腕がフックになっており、それで苛立たしげに玉座の肘置きをガンガンぶっ叩いている。
『俺の! 俺の財宝を! よくも!! 宝物庫には遠見の魔法が仕掛けてあるんだ! てめえら! 俺の財宝でサッカーやってるんじゃねえ!!』
「悪食王とは違って、ずいぶん感情的なんだな」
『マスター、私に乗って下さい』
「あっ、いつの間にかヘルガーディアンがいる!? どこから来たんだ!? そしてバイク型に!! なんで今になってそんなどんどん新機能を見せるんだ」
『雪山では牛になっておりましたが』
「そう言えば最初から変形してたな……」
俺がヘルガーディアンと喋っている間に、仲間たちが戦闘を開始しているのだ。
指示を出す前に動いてくれるのは助かるな。
結果的に、海賊王とその取り巻きVS俺&ヘルガーディアンと言う形になっている。
「ってことで海賊王。お前がマロングラーセと合流する前にちょっと遊ぼうや。ちなみにお前がここで俺とやり合っている間に、船底の方で人間たちが暴れている」
『なぁにぃ~っ!? だがぁ! 船底には俺の手下どもがいるぅっ!! そいつらは今頃、皆殺しだーっ!!』
「そうかなあ……?」
ゼクウと勇者パーティがいるし、船底辺りはシンカイも手出しできるからな……。
こうして、俺と海賊王の勝負がスタートだ。
『俺の力はぁ! 手に入れた財宝を全て己の力とする!! 全ての財宝は俺と契約し、俺の力となるのだ! 撃てーっ!!』
立ち上がった海賊王の周囲に、光り輝く宝物群が出現する。
それが次々に発射。
俺を目掛けて降り注ぐ。
『トップスピードで行きますよ。振り落とされないで下さい』
「俺乗ってる意味ある?」
ヘルガーディアンがジグザグに走りながら、海賊王の攻撃を回避する。
ぐんぐん接近する、海賊王。
俺は手持ち無沙汰だったので、投射されてきた宝物の一つを手に取ると……。
「なるほど、海賊王と接続している気配がする。これはリサイクルにひと手間掛かるな」
だが、できないわけではない。
この宝物は、瑠璃色の頭蓋骨。
ラッシュみたいだな。
よし。
お前はこれからジェネリック・ラッシュだ!
瑠璃色の頭蓋骨の目が輝く。
それは俺の手から離れて吹っ飛ぶと、海賊王の顔面に食らいつこうとする。
『なにぃーっ!? 俺の財宝を! 奪うのかてめえはあああああっ!!』
怒り任せに、ジェネリック・ラッシュを打ち払う海賊王。
うおーっ、一発で砕けた。
流石に、マロングラーセから力を与えられた魔人は他とはモノが違うな。
他の魔人なら、これ一発で終わりなんだが。
しかし、今回のこいつでよく分かった。
マロングラーセの息が掛かっているものは、やつに近いほど俺の力が通じにくくなる。
こりゃ問題だ。
海賊王で対策を練習させてもらうとしよう。
お読みいただきありがとうございます。
面白い、先が気になる、など感じられましたら、下の星を増やして応援などしていただけると大変励みになります。




