私が救うんだ
未来の世界。同性間で結婚と子供の誕生が認められた。
理紗と千花はその第一世代だ。二人の間で誕生したのが深月の母だった。
深月の母はスポーツ万能、容姿端麗、知的能力の全て金揃えた人物で、気づけば王族の御息女を捕まえて結婚し、深月が生まれた。
深月はその母の優秀さを受けついだだけでなく、高貴な血も流れることになった。
しかしこの世代の同性間の子供は通常よりも優秀個体が生まれ、異性間の子供が劣るという不平等な状況が生まれてしまった。
保守的な支配者層、高貴な血を受けつぐものどもはこれが許せなかった。この事実が判明するや否や同性婚、子供の誕生は禁じられた。
法で禁じた以上は、その象徴として深月は例え好きな相手がいようが犠牲になるしかなかった。
深月の結婚相手は異性婚として別の高貴な血筋の男が絶対だった。
深月の母は悲しんだが、それを防ぐだけの力はなかった。
また、同性間で過度に近い関係も防がれるようになった。結果として、伊織はサラシを巻いて男の付き人として振舞わないと深月のそばにいられなくなった。
深月は結婚して自由が奪われるまでの最後の旅行で流行っている過去旅行に出かけたのだった。
過去に戻って自分のルーツとなる二人の祖母のなりそめを見れて満足だった
自身が想像以上に千花に似ていて、理紗の気を引きすぎてしまったのは驚いたが、それでも二人の祖母はお似合いで自然に付き合いそうで私はそれが満足だった。
私にはできないが、二人ができるところが間近に見れたのだから。
後は私が結婚するだけ。そのあとはなるようになるしかない。
大好きだった、いや今も愛している伊織には旅行の最終日に別れを告げた。
今までありがとう、さようならと。これから付き人としていられると私が苦しむところから見られてしまうから付き人から自由になってもらいたいことを。
伊織はひどく悲しんでいたが、想像していたようだった。
彼女は静かに頷いた。私は取り返しのつかないことをしたことを悟り、強く悲しくなったが
自身の想いを無視して一人未来に戻った。
未来に戻ると予定通りに結婚式が始まった。
写真でしか見たことがなかった相手の人は悪くない容姿だ。伊織に似ているところを少しでも探して少しでも好きになれるように努力するしかない。それがこれから少しでも幸せに生きるためには必要なのだから。
「それでは新婦のお色直しです。」
進行役がそういうと深月は重い足取りで控室に向かった。次にまとうのは純白のウェディングドレス。
ドレスに着替えてクライマックス。控室の扉の前で涙がこぼれ落ちる。
控室の扉を開く。
部屋の中には純白のドレスの側に正装に身を包んだ伊織がいた。
「…伊織、なぜここに」
「付き人としての最後の仕事として、ドレスの着付けを私にさせてほしいと申し出ました」
「もういいって言ったはずよ。この会にも参加してほしくないし、私のこんな姿も見てほしくなかった」
深月は悲しそうに目をふせ顔を覆った。愛する人に他の男に嫁ぐ姿を見られることほどつらいことはない。泣いてはいけないとはわかっていても涙が流れ落ちる。
伊織はポケットから箱を取り出して深月の前に差し出した。
「深月、私と一緒に来てください。」
差し出された箱の中には銀色に輝くシンブルな指輪が収められていた。
「…嬉しい。でも、もうどうしようもないの。法もシステムも家族も私たちを許さない」
「私があなたを救います。法もシステムも家族も私たちなら乗り越えられる。私を信じて。」
「伊織、あなたいつの間にそんな…」
深月の瞳に驚きの色が走る。伊織のまなざしは見たことがないくらい輝き光を放っていた。
「あなたの祖母、理紗さんのおかげかもしれません。詳しいことは後で。今は私についてきて。」
伊織が深月の手を取り、強く引き寄せた。そして二人は外に駆け出した。
伊織が駐車場に止めた車に乗り込むと颯爽と会場を後にした。
行き先は決まっていた。




