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捜索と忘却

深月が消えた。

あの日以来、私は取り憑かれたように彼女の足跡を辿った。二人で行ったカフェや公園、レストランにも行き、尋ね歩いたが、彼女の気配はなく足取りはつかめなかった。ホテルのフロントに聞いてもチェックアウト済みで行き先については分からないというようだった。


ふと深月の付き人の伊織ならもしかしたらまだいるのではないか。

ホテルのフロントに尋ねたら、伊織はまだホテルに滞在しているようだった。

私は深月の忘れ物を取りに行くというウソの口実を伝えて、伊織の部屋番号を聞き出した。

そして部屋に向かった。


ノックをして「理紗です。深月さんのことでお話ししたくて来ました。」と扉の前で私は名乗った。

重い沈黙の後、ゆっくりと扉が開いた。泣き腫らしたようで生気がない伊織がいた。


「…どうしてここが」

「フロントに聞き出しました。深月はどこ?」

「彼女はもうここにはいません。どこにいるかも言えません。」

冷たく言い放つ伊織の態度に無責任さを感じ私はいらだった。


「ふざけるな」

私は反射的に伊織の胸ぐらに掴みかかり壁に押しつけた。

その瞬間、手のひらに伝わってきたのは伊織の柔らかな胸だった。


「…もしかしてあなた女性?」

「…そうですよ。普段はサラシを巻いてますけど。今は外してます。もう必要なくなったので」

私と千花から距離をとっていたのは女性とバレないためだったのか。

ただ今はそれを追求する時間もない。


「深月がどこにいるか教えて。」

私は真剣な眼差しで気迫を持って伊織に伝える。

「…わかりました。言いますよ。」

私の気迫に押されたのか伊織は諦めたように思い口を開いた。


「私と深月は未来から来ました。」

「…?」

唐突な告白に私の思考はフリーズしたが、伊織は淡々と語り出した。


深月はある高貴な血筋で、本人の意思を無視した結婚が強制的に決められるいること。

人生最後の自由な旅行で未来で流行っている自分のルーツ、先祖たちの生きた過去を知る歴史旅行(ルーツ・トリップ)に出たのだということ。

伊織は付き人ではありながら、長年深月に尽くしていて密かに想いあっていたこと。


「と言っても最後にはっきりと振られちゃいました。もう一緒にいられないって。付き人から自由になってって。」

伊織が俯き肩を振るわせる。いつもの落ち着きを失っていたのは愛する人に振られたショックだったようだ。


「…君はそれでいいの?」

私は彼女の肩を掴んだ。伊織は驚いた表情をした。


「深月のこと好きなんだろ。だったらなぜ助けない。泣いているだけなのか」

「私はただの使用人なので」

「それなら私がやる。私は深月のことが好きだ。私は彼女を助け出したい。」

「えっ?」

さらに伊織は驚いた表情をする。


「私を彼女の元に連れて行って。私が匿うから。私が何が何でも彼女を救い出すから」

「そんな単純な話ではないんです。過去旅行は歴史の改竄を防ぐ防ぐシステムが組み込まれているので、私たちが過去を変えれないように、あなたも未来を変えることができないんです。」

「それなら、あんたが救い出してほしい。」

私は伊織の瞳を射抜くように見据えた。


「あんたにしか救えないんだったら、私の代わりに美月を救って。彼女の恋人なんだろ。

それすらできないなら、私はあんたに深月をやることはできない」

深月は私の所有物でも何でもないないが、私は彼女を救いたかった。

彼女には定められた運命の中で死んだように生きるのではなく、愛する人の側で幸せに生きてほしい。


「そういう頑固で言い出したら聞かないところ、深月とそっくりですね」

伊織が微笑んだ。その表情には先ほどまでとは打って変わり、鋭い光が戻っていた。

伊織は強く立ち上がり、背筋をシャッキリ伸ばした。いつもの落ち着いた雰囲気を取り戻したようだった。


「私にできるかはわかりません。でもやるしかないですよね。深月を救いに私も帰ります。」

伊織が手荷物のタブレットのような装置を起動する。装置の画面には赤くアラートが出ていた。


「理紗さん、あなたは本当にお節介で素晴らしい人です。今回の旅行で一番救われたのは私かもしれません。…絶対に彼女を幸せにします。だから…いつか…私たちの仲を認めてくださいね。」

伊織はそう話すと寂しそうな表情になっていった。

「ただあなたは知りすぎてしまいました。未来改竄防止システムに検知されました。歴史の修正システムが作動します。」


気がつくと自分の部屋で私は目が覚めた。何かひどく大切なことがあったような気がするが、思い出せなかった。彼女たちのことがほぼ記録から消えていた。

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