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自覚と別れ

深月と自然公園に行った日から私の中で彼女への想いが強くなっていることを自覚し始めていた。

高校時代に経験した胸を締め付けるような熱い想い。あまりに久しぶりの体感であり、これが恋なのかもっと別の気持ちなのか分からなかった。ただただ深月のことを強く考えるようになっていた。


「二人だけで会いたい」

私はホテルのフロントに深月宛ての言付けを残した。そして約束を取り付けた夜に普段は寄り付かない高階層のレストランで私たちは会った。

琥珀色の照明に照らされた深月はいつにも増して現実離れした美しさを放っていた。

美味しい食事と楽しく弾む会話。私は幸福感を感じていた。


メインディッシュを堪能した後に、私はずっと胸にしまい込んでいた問いを口にした。

「深月と伊織さん、本当は恋人同士じゃないの?」

深月はデザートのスプーンを止め、驚いたように目を瞬かせた。

「…そう見える?」

「いや見えないけどさ。でも距離近いし、伊織さんのあなたへの視線が何か友達のそれとは違ったから。」

「…じゃあそういうことです。」

深月はなぜか寂しそうな表情に微笑みを浮かべていた。曖昧な肯定が今は何よりも苦しかった。


「理紗さん」

ふいに彼女が改まった声で私を呼んだ。


「私は理紗さんとお話しできて、自由な空気に触れられて本当に楽しかった」

「急にお別れみたいにどうしたの?」

冗談めかそうとした私の声に対して、深月は悲しく目を伏せた。

「もう時間がないんです。私、行かないといけない」

「行かないといけないってどこに?事情があるなら私が」

「…もういいんです。」

深月は私の言葉を遮るように言った。そしてテーブルの上の私の手の上に自らの手を重ねた。


「私は千花さんと似てたんだと思います。理紗さんと千花さんは本当に幸せになります。

私もできる限り自分の幸せを目指しますから。」


それが彼女の最後の言葉だった。

その日以降、深月は忽然と姿を消した。

滞在していたホテルはおろかどこにも姿が見えず、まるでこの世界に存在していなかったかのようだった。

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