手紙の送り主の目的
「お前が手紙の送り主だな」
「ええ、ようこそお待ちしておりました」
男は初めからここにクライヴが来ることが分かっていたかのように、笑みを浮かべて言う。
まさか我がシュテイン公爵領領内にある魔の森に、施設が隠されているとは思いもしなかった。魔の森は魔力で溢れているため、巧妙に偽装できたのだろう。
「……それでこんなところで何をしていたんだ? この手紙も一体どういう意味だ?」
クライヴは早速疑問に思っていたことを直球にぶつける。
「私は貴方こそが次期国王に相応しいと思っております」
「…………は?」
「他の誰でもなく貴方が」
男は想定外の言葉にぽかんとしているクライヴに視線を向け、強調するように付け加えた。
「“悪虐王子”ですか。上手く言ったものです。だが、第二王子たる貴方が王家に邪険にさせるなどあってはならないことだ」
邪険? 王族にも関わらず、遠方の地を治めているからか?
「それに、クライヴ殿下に関する数々のお噂。そういうお方を求める者も多数存在する」
噂はどれもデタラメで真実なんてなかったんだが……。それを多数? この男だけじゃないのか?
「今の王家は話し合いなどで解決を試みるばかり。戦争から逃げている。戦う勇気のない王家に代わって、貴方が国王となるのです。そのために、我々が支援いたしますとも」
クライヴが言葉を発することができずにいる間に、話しはどんどん進められていく。
どうして俺がそんなことに協力しないといけないんだ? しかし、これはつまり、俺を旗印にして新たな王家を、ということだよな? それって国家転覆では? 大罪だよな? 想定以上の悪人だった……。
「確かにシエル殿下を次期国王とする声は多い。しかし、何でもあっさりとこなしてしまわれるあの方では我々の気持ちなど理解できるはずもない」
「……俺なら理解できると?」
「ええ、大いに」
男はにやりと笑みを浮かべた。
「……だが、理解、か。他人の心を完全に理解しろという方が無理があると思うけどな。それでも寄り添うことはできる。兄上はいつだって傍にいてくれた。そんな兄上だから、きっと皆から慕われる王になる」
「何をおっしゃいますか。貴方には次期国王として十分すぎる素質がある。きっと貴方なら他国をも蹂躙できる」
なんかとんでもないこと言い出したな。余程俺に国王になってほしいようだが……。
「ああ、そうそう。こちらには協力者がいるのですよ」
「協力者?」
協力者までいるとは厄介な。
しかし、奥の方から現れた人物を見て、クライヴは目を瞬くのだった。




