出発
「もう一度確認いたしますが、本当に行かれるおつもりなのですか?」
「ああ、直接話しをしてくる」
念を押すように尋ねるイザックに、クライヴは即答する。
先程、例の手紙の送り主の居場所が分かったと知らせが入った。屋敷まで手紙を届けた配達員は家族を人質に取られ、手紙を届けるように脅されていたようだ。配達員の家族はすでに開放済みだ。あとは送り主に手紙の意図を確かめるのみ。あの手紙の意図は全く分からないが、人質を取って脅すような人物だ。悪人なのは間違いない。
が、やはり直接会って確かめた方が早い。
送り主に正直に話してもらうためにも一人で行くと伝えたところ、イザックに慌てた様子で止められてしまった。
「殿下の意思が固いことは分かりましたが、せめて少しぐらいは護衛をつけてください」
「そもそも俺に護衛なんていないが」
「騎士団員がいます。それに私は執事兼護衛ですよ」
「そういえばそうだったな……」
「忘れないでください」
イザックの言葉に思わず苦笑する。
「分かった。隠れての護衛なら受け入れよう。とはいえ屋敷の警備の問題もあるからな。イザックはここに残ってくれ」
「……承知いたしました。くれぐれもお気をつけて」
「ああ」
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マイラからクライヴが手紙の送り主に会いに行くと聞いたリリアーナは慌てて部屋を飛び出した。
「イヴ!!」
彼は丁度屋敷から出るところだった。
「リリー? どうしたんだ?」
「どうしたじゃありません。本当に行かれるのですね……」
「ああ、すぐに戻るから待っていてくれ」
この結婚生活でクライヴが離れた地に行くなんて初めてのことだった。それも警戒している人物のところだ。
「私もご一緒できたらよかったのですが……」
「いや、危険な場所になど連れて行きたくはない」
いつにもまして真剣な瞳で告げられ、息を呑んだ。
「イヴ……。絶対にご無事にお戻りくださいね」
眉を下げて零した言葉に、クライヴは一瞬驚いたような表情を浮かべていた。
本当は引き留めたい。私だって危ないところになんて行ってほしくはない。だけど、マイラによると、屋敷への侵入を手助けした人物の可能性が高いとのこと。全てを解決するために必要だとおっしゃるのならお止めすることはできない。
「心配してくれるのは嬉しいが、俺なら大丈夫だ」
「イヴ……」
「そうだ、リリー。帰って来たらリリーの作る甘いお菓子が食べたいんだ」
「ではお作りしてお待ちしていますね」
「ああ、楽しみだ。早く帰ってくるからな」
クライヴは嬉しそうに顔を綻ばせた。
リリアーナは馬に跨ったクライヴの背中を見えなくなるまで見つめていた。




