一通の手紙
その日、一通の手紙が届いた。
「あら? これって」
自分宛てだとマイラから渡された手紙だったが、心当たりのない内容に首を傾げる。
もしや、クライヴ宛てだったのではないかと感じたリリアーナは手紙を持って、クライヴの執務室へと向かった。
「リリー?」
扉が開き、顔を見せた妻に一瞬驚いた顔をしていた。
「こちらの手紙が届いたのですが、おそらくイヴ宛てなのではないかと」
「手紙? 初めてだな、こんなのが届くなんて……」
「あっ、申し訳ありません。私宛てだと思って、中を読んでしまって」
「いや、構わない。俺に手紙なんて家族以外から来ることはないからな。間違って渡したんだろう」
しかし、手紙の内容を見て、クライヴもまた意味が分からないというように首を傾げた。
「どういう意味なんだ? これは」
そこには
『私にお任せください』
という一言だけが書かれていた。
そして、差出人も書かれてはいなかった。
知られてはマズイことでもあるのだろうか、という推測が頭を過る。
「心当たりはないのですか?」
「俺が領民以外と交流があると思うか?」
「いえ、思わないですね」
即答したイザックに、クライヴは苦笑いを浮かべている。
「差出人が分からないと、尋ねようがないし、返事もできないな」
「えっ、殿下、まさか差出人さえ分かればお話しされるのですか?」
「ああ、当然だろう。これでは何のことだか分からないしな」
そうあっさりと答えたクライヴに、イザックは慌てた素振りを見せる。
「何だか嫌な予感がいたしますし、お会いされない方がよろしいかと」
「そうか? しかし、俺は一体何を任せるんだ?」
誰一人として、その問いに答えられる者はいなかった。
「イザック、差出人を調べられるか?」
「……」
「イザック?」
彼はじっと何かを考え込んでいるように見えた。
「この手紙、差出人がありませんよね」
「ああ、そうだな」
「貴族家に届けられる手紙で、差出人がない場合、配達員から知らせがあるのですが」
「知らせがなかった?」
「ええ、そのまま渡されました。あの配達員が何か知っているかもしれませんね」
「よし、分かった。とりあえず、その配達員を調べてくれ」
「はい」
イザックはクライヴの手から手紙を受け取ると、足早に執務室を去って行った。
**********
その頃、王宮ではリリアーナの兄ライモンドが、一人の男に不意に呼び止められていた。
「可哀想に。あんな王子と妹君が結婚だなんて、さぞ辛いことだろう」
「……私に何かご用でしょうか?」
「良い話しがあるのだ。手を取り合おうじゃないか」
男はにやりと笑みを浮かべた。




