ぎこちない日常
「リ、リリー、おはよう……」
「イ、イヴ、おはようございます……」
昨日の今日で、どんな顔をして話しをすればいいのか分からず、ぎこちない感じになってしまっている。
「……昨日はついうっかり本音が漏れ出したというか、その……」
クライヴは恥ずかしそうに口にする。
「本音……なのですね……」
「もちろんだ」
リリアーナの言葉に、クライヴは間髪入れず即答した。
「嫌か?」
不安そうな声が降ってきて、ぱっと顔を上げる。
「えっ」
「その……俺にそういう目で見られるのは……」
「へ!? 嫌だなんてとんでもないです。私は……」
あれ? 私イヴのこと、どう思っているの? この前、イヴに恋愛感情はないって伝えたけど、でもなんだか胸がもやもやして……。自覚してなかっただけで、もしかして……。
「リリー? どうした?」
「あっ、なんでもありませんっ。す、少し考えさせてくださいっ!!」
そう告げるとその場を急ぎ後にした。
「えっ!? 考えるって何を……」
突然のことに意味が分からなかったクライヴは首を傾げていた。
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あれから数日、目が合うだけで緊張して、頭が回らなくなるという謎現象がリリアーナの身に起きていた。
「どうしちゃったのよ、私は!!」
イヴにも変な風に見られているし。
私、もしかして、本当に……。いえ、考えてはダメよ。イヴは女性嫌いで、それでもお会いした当初から優しく接してくださって。家族として仲良く過ごせてはいるけれど、負担なんておかけしたくないもの。これは心の中にしまっておきましょう。
冷静に……冷静に……。
そう心の中で言い聞かせながら、クライヴの元へと向かった。
「申し訳ありませんでした」
「えっ……」
いきなりの謝罪に困惑しているのが見て取れた。
「えっと、どうしたんだ? いきなり……」
「最近、私変でしたよね……」
「いや、それは俺のせいでもあるから。……あんなこと言ったから」
思い出しても恥ずかしかったのか、そっぽを向いている。
「いえいえ、イヴのせいでは……」
「言われたくないのなら言わないように……いや、抑えきれる自信がないな……」
そう言って、苦笑いを浮かべている。
「そ、その……そういうことを言われるのは初めてでしたので驚いたと言いますか……」
「え……。初めて?」
心底驚いたようで、目を丸くしてこちらを見つめている。
そんなに意外かしら? 名家のご令嬢ならともかくとして、そんなこと言われる機会なんてないもの。
「分かった。見る目がない者ばかりなんだな。照れくさいが俺がたくさん言おう」
「えっ……」
どうしてそうなったの!?
「リ、リリー」
「はっ、はいっ」
緊張気味で名を呼ばれ、こちらまで緊張してくる。
「……可愛いよ」
クライヴは優しい声音でそう告げると、リリアーナの肩に顔を埋めた。
「イヴ?」
「……は、恥ずかしい」
いや、ご自分でおっしゃっておいて、それ言っちゃいます??
あまりにも素直な反応に、ついつい心の中で突っ込んでしまった。
「無理に言葉にされなくても大丈夫ですよ」
少し、残念ではあるけれどね……。
リリアーナの言葉に、クライヴは首を横に振った。
「俺は言うと決めたんだ。二度と誤解されないためにも」
相当ショックだったのかしら? だとしたら申し訳ない気が……。
「もうイヴを疑ったりはしませんので、安心してください」
「それは嬉しいんだが、後悔はしたくないんだ」
「えっと?」
「もっとこう伝えたら、良い未来が待っていたのに、とか後々思いたくはないからな。俺はあまり想いを言葉にするのは得意ではないから、上手く伝えられるかは分からないが、後悔は伝えた上でしたい」
クライヴは堂々と宣言した。
……後悔しない方向でお願いしたいのだけれど。
「だから俺頑張るからな」
気合いの入ったクライヴの言葉に、思わず笑みが溢れた。




