男の協力者
男の後方、暗闇から現れた人物を見て、クライヴは目を見開いた。
「……ライ?」
それはリリアーナの兄、ライモンドだった。
クライヴの言葉に、ライモンドは軽く笑みを浮かべた。
「ご存知でしたか。彼には次期国王となられるクライヴ殿下のサポートをお願いしています」
「なっ!?」
勝手に国王になることになってるんだが!?
男の言葉を理解しきれず、内心混乱状態だった。
……ライは俺が王になる意思がないことを知っている。一体どういうつもりなんだ?
「言っておくが、俺は王になどなる気はない」
「またまた。そうおっしゃらず」
クライヴの言葉を冗談だと受け取ったのか、男は愉快そうに笑みを浮かべている。
「遠慮してるとかじゃないからな!?」
話しが通じないこの感覚、以前にもあったような……。
以前屋敷に侵入した女との会話を少し思い出し、打ち消すように頭を振った。
「すでに、クライヴ殿下の新たな妃として何名か目星をつけております」
「……は? 俺には妻がいるんだが?」
「なに、離縁すればいいだけのこと」
あっさりと男は言う。
こいつは勝手に何を言っているんだ? 俺がリリーと離縁? そんなこと絶対にあり得ない。
クライヴは拳を強く握り締める。
「これは奥様にとっても良い話しなのですよ。クライヴ殿下のお噂の数々に心を痛めていらっしゃる。新たに高位貴族との婚約を結び、これからは周りの噂など気にする必要もなくなるのですから。奥様のお立場では本来婚約できない素敵な方をご紹介させていただきますのでご安心を」
何も安心できない。リリーが他の男性に寄り添うところなど想像もしたくない。
想像しそうになり、嫌な汗が流れる。
この男は一体何なんだ。あの碌でもない噂の人物を求める者がいると言ったり、噂に傷ついていると言ってみたり。
確かにリリーには迷惑を掛けているのかもしれない。今までなら、こんな俺だから当然だ、なんて決めつけていただろう。本人に確かめることが怖くて尋ねることすらできずに。
だが、リリーならもしやと思ってしまう。噂をされることがあっても、傍にいることを選んでくれるんじゃないかって。どうしようもなく、期待してしまう。違っていたら傷つくだけなのにな。
思わず、苦笑する。
「はっきり言わせてもらう。お前がどう思おうが、俺は国王になる気はないし、離縁するつもりもない」
言葉に力が籠もる。
愛するリリーと離縁などするものか。
「……それが貴方の本心ですか」
「ああ、最初からそう言っている」
「分かりました。ならば仕方ありませんね」
分かってくれたか。
と安堵したのも束の間
「危ない!!」
ライモンドの叫び声が聞こえ、クライヴの背後には、黒装束を着た男数人が剣を持って襲いかかって来ていた。




