二人きりの小屋で
体感で数時間は経過したものかと思われたが、一向に助けが来る気配がなかった。
「イヴ? どうされましたの?」
ぼうっとしていることに気づいたリリアーナは声をかける。
「……なんだか眠くて。おかしいな、普段ならまだ起きている時間なのに」
「たくせん動き回りましたし、お疲れなのかもしれませんわ」
「……」
「イヴ?」
「リ、リー……」
クライヴの異変を感じたリリアーナは手をそっと額に当てる。
「酷い熱ですわ!! ど、どうしたらいいのかしら」
クライヴはリリアーナの方へ倒れ込み、リリアーナが膝枕するような形になった。
「大丈夫ですか!? 申し訳ありません。私のせいで」
「リリーは悪くないよ。ふっ、リリーの手はひんやりしてて気持ちいいな。それにすべすべで綺麗だ」
クライヴはすりすりとリリアーナの手に顔を近付ける。
「へ!? し、しっかりしてくださいっ!!」
「俺は平気だよ~。焦った顔も可愛いなぁ~」
ほにゃっとした笑顔で言われる。話し方もいつものぴしっとしたものではなく、ふにゃふにゃ溶けた感じになっている。
「ふぇ!?」
全然、大丈夫そうに見えないわ。早く誰か来て!!
リリアーナのそんな思いが届いたかのように、みしっと音を立て扉が勢いよく開いた。そこにはイザックとマイラが立っていた。
「お二人ともご無事ですか!?」
「奥様!!」
「私は平気だけどイヴが!!」
「これは酷い熱ですね。私がお運びします。殿下、私のことが分かりますか?」
「イザックでしょ〜」
「はい、そうですね」
イザックは思った。“なんです、このふにゃふにゃした生き物は”と。普段のクライヴの面影がまるでなく、これでは別人のようだ。
「リリー」
「はっ、はいっ」
「頭撫でて」
「えっと、こう、ですか?」
リリアーナは言われた通りにゆっくりと頭を撫でる。
「うん。気持ちいいな〜」
嬉しそうな笑顔を見せるクライヴに、イザックは一体何を見せられているのだろうかと、居た堪れない気持ちになっていた。そして、今だけは空気になろうと思った。マイラも見なかったことにしようと、顔を背けている。
「やっぱりリリーは癒しの天使だ」
頬は熱で上気だっており、さらに色気が増した笑顔。
破壊力がありすぎるっ。
クライヴはそう告げると眠りに落ちてしまった。




