遭遇3
「よしっ」
と気合いを入れ、リリアーナが執務室の外から声をかけると、イザックが扉を開けてくれた。
「!!リリー、具合はもう大丈夫なのか!?」
ずっとリリアーナのことが気が気でならなくて仕事になっていなかったクライヴは、席から勢いよく立ち上がると慌てて駆け寄った。
「はい……」
「俺が何かしてしまったならすまない」
「それは……」
リリアーナは何と切り出していいのか分からず、焦りが出ていた。マイラが「大丈夫ですよ」と小声で言ってくれたことで落ち着きを取り戻した。
「……私、イヴに他に奥様がいると聞いてしまって」
「…………は?」
心底訳がわからないという顔をしている。
こんなお顔、初めて見たわ。本当に違うのね。
クライヴの反応を見てリリアーナは確信した。それと同時にほっと安堵した。
「あのどういうことですか?」
呆けている主人を横目にイザックが尋ねる。
「実は…………」
リリアーナは昨日の出来事を全て説明した。
「それかなり問題なのでは!? 要は不法侵入されたってことじゃないですか!!」
話しをし終わるとイザックが一番に声を上げた。
「あっ、ああ、そうだな。問題だ」
ようやく頭が状況を処理できたようで、彼は言葉を返した。
屋敷にはクライヴの認めた者しか入ることが出来ないため、許可を与えられた人物だとリリアーナは思っていたが、彼の様子から察するに、どうやら許可した覚えなどないようだ。
「リリー、俺は君以外に親しい間柄の女性はいない。俺の言葉を信じてくれないか?」
真っ直ぐと真剣な目で告げられ、本当なのだと伝わって来た。
「イヴ……。はい、信じます。私、イヴが他の女性と親しげにされているところを見たわけでもないのに勝手に誤解して……申し訳ありません」
「いや、誤解が解けたならそれでいいんだ」
そう言って微笑んでくれた。
でもだとしたら、あの女性は一体誰だったの?
「他に何か言っていなかったのか? 俺との関係とか何とか」
「いえ、特には何も」
「そうか……」
「ですが珍しい髪色でしたわ。綺麗な黒髪で」
そう伝えた瞬間明らかに二人揃って狼狽え始めた。
「っ……」
「ま、まさかっ!? しかしそれはあり得ないはず……」
イザックはそこまで言うと黙り込んでしまった。
「うっ……」
クライヴは唸ったかと思うと倒れ込んできた。
「イヴ!? 大丈夫ですか!?」
クライヴの身体を思わずリリアーナが支える。
お、重い……。
いくらクライヴが細身とはいえそれでも男性なのだ。支えきれなくなって倒れそうになったとき、慌ててイザックが支えてくれた。
「殿下……。少し休みましょう」
「……」
「イヴ?」
なぜかぎゅっと抱き締められたまま離してもらえず、そっと声を掛ける。
「…………少しだけこのままでいさせてくれ」
「はい。ですがあの……とりあえずソファにでも移動しませんか?」
「…………する」
彼は小さな声でぽつりと溢した。




