第83話
悪霊王とは違う。
元は一つの小さな霊魂だろう。
その霊魂が小さな霊魂を吸い込んで行き、やがて大きな塊になった。
知能はあるのだろうか?。
洞窟にいた霊魂達は古く、喋る機能が低下していた。
結局、喋れたのは悪霊王だけだった。
今回は逆だ。
小さな霊魂は新しく、喋る事が出来る。
しかし『悪意の集合体』とも言うべき塊はうなり声をあげるだけで、言葉を発せない。
「あんまり良い予感がしないな・・・。
・・・って言っても何も準備してきてないからやれる事限られてるんだけどな。
じゃあいくぜ!
『キュア!』」
イメージとしてはコールタールだ。
コールタールが無限に空中の一点から溢れだしている。
・・・そんな感じだ。
そこに俺は『キュア』を叩き込む。
すると、一瞬だけコールタールが溢れだすのが止まる。
しかしそれも束の間、またコールタールは流れ出す。
叩き込む『キュア』の数が少ないのかと、連続で『キュア』を叩き込む。
先ほどよりは長くコールタールが溢れ出すまで時間がかかったが、結局は違うのは『コールタールが溢れ出すまでの時間』だけだ。
コールタールのようなドロドロした闇が溢れている。
これはダメかも知れない。
何とかして逃げて、もう一度対策を立てて出直そう。
俺はこの場から退散する方法を考え始めた。
小さな声が聞こえる。
「助けて!」
「母さんを助けて!」
「母さんは僕の遺体が発見されたところに花を供えに来てる」
「このままじゃ、母さんが巻き込まれちゃう!」
「そうは言っても、俺にアレを倒す策はねーぞ?。
俺にアレを倒せるのか?。」と俺。
「わからない。
でも溢れ出した黒い『呪いの塊』を攻撃しても意味はない。
攻撃するなら『呪いの核』でないと・・・。」と小さな声。
「その『呪いの核』はどこにあるんだ?。」と俺。
「『呪いの塊』を産み出してるのが『呪いの核』だな。
・・・って事は『呪いの塊』が溢れ出してる根元を集中攻撃するんだな?。
わかったよ、あんまり期待すんなよ!。」と俺。
呪いの核に『キュア』を連続で叩き込む。
「消えろ!。
『キュア』『キュア』『キュア』『キュア』『キュア』『キュア』」コールタールのような塊は黒い霧となって夜風に消えた。
視線の隅に女性がうつる。
「何をしているんですか?」と俺は女性に声をかける。
「息子が樹海で自殺したんで、今日は月命日で花を・・・。」と女性。
何を思ったのか、女性が俺に言う。
「こんな噂があるんですよ。
『樹海で自殺した人が生きている人を誘って樹海に誘い込んで殺す』って。
あの子は親より早く死ぬような親不孝者です。
でも、間違っても人を傷つけるような事はしない子です。
本当に優しい子だったんです。」
俺は思った。
稲川の言っていた事はコレなんだな、と。




