第55話
結論から言うと『鍵屋』は大成功した。
そこまで異世界のセキュリティは高くなく、ドアに鍵はついていないものも多かった。
ついていたとしても窓は開けっ放しの事が多く『玄関の鍵なくしたけど、窓から出入りすれば良いや』というのが異世界の常識だった。
「こりゃダメだ。
商売にならないわ」と俺は思った。
しかし、思わぬところから仕事の引き合いがあった。
お金持ちから「鍵を失くしてしまって金庫が開けられない」「鍵を失くしてしまって宝箱が開けられない」「鍵を失くしてしまって宝物庫が開けられない」「鍵を失くしてしまって、浮気した旦那を閉じ込めておいた牢屋の鍵を開けられない」など仕事の依頼がひっきりなしに来たのだ。
「フフフ、計算通り」俺は呟き含み笑いをした。
過程はどうあれ『勝てば官軍』なのだ。
本当の事を言えば、庶民相手の商売で「別に儲からなくても良い。コイツらに労働の尊さを知ってもらえば良い。金なら俺がダンジョンに潜っていくらでも稼いでくる」なんて思っていた。
結果、大富豪相手の商売で大儲けだ。
よくない。
盗賊にとって『鍵開け』など朝飯前だ。
あまりにもチョロく儲けられすぎる。
コイツらは世間の厳しさを少しは知るべきだ。
「盗賊の気持ちは盗賊が一番知っている。」という訳で「ホームセキュリティ」事業に進出。
一月、大銀貨一枚(約500円)で一世帯と契約。
契約した世帯は玄関先にカードを提示。
そのカードが『HEKOKUカード』
合言葉は『HEKOKUしてますか?』
24時間サービスで街をパトロールしています。
異常を感じた場合、発煙筒を炊いてください。
すぐに『HEKOKU』が駆けつけます。
このサービスが大ヒットした。
勿論、俺らの大成功の後他社が真似をして追随した。
しかし、俺とアイアちゃんに鍛えられている『HEKOKU』の警備員は屈強だ。
「安心と信頼のブランド『HEKOKU』」は瞬く間に評判になった。
しかし異世界の人間はアルファベットが読めない。
それに地球の言葉は理解出来ない。
言葉は謎の力で翻訳されて伝わっているが。
なのでアイアちゃん達は『HEKOKU』を『安心と信頼』という意味だと思っているし、『セコム』のまるパクりだという事も『屁をこく』から考えたというどうしようもない由来を知らない。




