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第45話

 父親は広島県で地方公務員をしている。

 父親側の親戚も母親側の親戚も広島県に固まっている。

 子供がいなかった叔父さん夫婦が本当に俺と妹を可愛がってくれた。

 だが『広島の叔父貴が・・・』というと途端に任侠物っぽくなる。

 それはともかく、俺は広島の叔父さんの家に遊びに行き、半袖、半ズボンで虫取を山の中でしていた。

 当然薄着なので蚊に刺されまくる。

 必死で遊んでいる時はそれほど気にならない。

 だが、後で冷静になった時に地獄なのだ。

 痒いなんてもんじゃない。


 『ザク』と『グフ』は倒した。

 しかし、数だけで言えばザクとグフは足しても8匹しかいないから全体の敵の1/70に満たない。

 子供の頃だって蚊に負けなかった。

 ただ、『負けない』というのと『刺されない』というのは全く別の話だ。

 今もチクチク刺されている。

 痒い。

 弱いうちは受けるダメージの心配をしなくちゃいけない。

 だが今は『キンカンが良いのか?』『ウナコーワが良いのか?』『それともムヒが良いのか?』そればかりが気になる。


 売薬は高い。

 この倒したモンスター達が日本の金になるなら俺も大金持ちだが、一円にもならないなら3つの薬のうちどれを買うか、それは死活問題だ。


 しかしこの痒さは何だろう?。

 毒?。

 『犬にマムシの毒は効かない』って言うじゃん。

 でも噛まれたところ無茶苦茶腫れるじゃん。

 アレ、多分、シクシク痛いし痒いと思うんだよね。

 ダメージ受けないからって何も感じない訳じゃないと思うんだよね。

 で、俺は、今、モンスターにチクチク刺されたところがどうしようもなく痒い。


 俺の印象じゃ、一番効くのはキンカンだよね。

 でも一番早く乾いちゃって、効果が一番持続しないのもキンカンだよね。

 一番効かないのはムヒだよね。でもクリーム状で、一番効果が持続するのはムヒだよね。

 で、効果、持続時間、全てにおいてメリットもデメリットも中間なのが、ウナコーワだよね。


 どれを買うかで俺の人生が決まる。

 『何を大袈裟な』とか思うかも知れないけど、全身痒いのってマジで発狂しそうになる。


 よくわからんけど、とにかく倒したモンスターの部位証明用に鼻もしくは体に一つしかない器官を切り取って持っていく。

 戦国時代は武勲の証明として、塩漬けにした鼻を持って帰ったらしい。

 こんな気持ち悪いもん持って帰らないと、証拠にならないって本当に不便だと思う。

 どんどんダンジョンがモンスターを産み出す。

 放っておくと、モンスターがダンジョンから溢れ出す。

 ダンジョンから溢れしたモンスターが街やその近くで暴れる。

 だからダンジョンの中で冒険者ギルドは冒険者がモンスターを狩るのを推奨する。

 『ワイバーン』みたいに死骸自体に価値がある物もいる。

 『ワイバーンの(うろこ)』『ワイバーンの(きも)』などはそれだけでも高価で買い取られる。

 だが、死骸に価値は全くなくても『モンスターを倒した』という事で、ギルドから多少は金が出るのだ。

 なので討伐証拠部位を持っていくのだ。


 「よう、ギルガメッシュ」 

 「ギルバートだ。

 しかし、伝説の英雄王の名で呼ばれるのは気分悪くないな。

 ・・・で朝早くからどうした?。」

 「今までダンジョンに潜ってたんだけどな、『討伐証拠部位』の査定して貰おうって持ってきたんだよ」と俺。

 「って事はパーティ組んだんだな!。

 おめでとう!。」とイケメン。

 確かにパーティは組んだけど「今回はソロで潜ってた」なんて面倒臭い事になりそうな事は言わない。

 「それじゃ、それ出してよ」とイケメン。

 俺は『討伐証拠部位』を専用の台にのせた。


 「えーっと・・・ケルベロスの鼻が7つ。

 ってケルベロス!?。

 あの『地獄の門番』って言われてるケルベロス!?。」とイケメン。

 「あぁ、あの犬っころってケルベロスって言うんだ。

 コイツの鼻削いでる時、動物愛護団体が黙ってねーだろうなって思ったもんだよ。」と俺。

 「よくわからん思い出だな・・・。

 他は・・・サイクロブスの鼻が7つ。

 ギガンテスの鼻が一つ。

 ってギガンテス!?。

 遺跡で骨は見つかってるけど、冒険者が踏破した階層じゃ、生きてるギガンテスはまだ見つかってないんだぞ!?。」とイケメン。

 「んな事言われてもどれがその『ギガンテス』かわからんし。

 特徴とか言ってくれればわかるかも。」と俺。

 「特徴・・・角がはえてて、目が一つで・・・」

 「あぁ、『ザク』と『グフ』の事だ。

 『ザク』は沢山いて、体の色が緑色なんだよ。

 『グフ』は一匹しかいなくて、体の色が青いんだ。」と俺。

 「ギガンテスは青いんだ・・・。

 まだ骨しか見つかってないから体が青いのも世紀の発見なんだが。」とイケメン。

 「まあ、あんまり俺には興味ないんだけどな。

 それより報酬もらえるか?。」と俺。

 イケメンは震える手で麻袋5つに金貨を詰めた。

 

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