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第38話

 おかしい。

 大ピンチのはずだ。

 なのに悲壮感を全く感じない。


 俺にしてみれば、アイアちゃんと相対した時の方が絶望感が大きい。


 「危ない!。」

 俺が色々考えて、余所見をしているとトカゲが体当たりをしてきた。

 ドガッ!。

 なんというか・・・鬱陶しいぶつかってき方だ。

 夏場耳の周りを蚊が飛ぶじゃん?。

 ダメージはないけど、気になって寝れないじゃん?。

 あんな感じ。

 別にダメージはないけど、放っておけるほど気にならない存在じゃない・・・、伝わってくれ!。


 「これ、何て言ったっけ?。

 『ワテソチンデッセ』だっけ?。

 偽関西弁みたいな名前ってのは覚えてるんだけど。」俺がトカゲの首根っ子を押さえつけながら言う。

 「『ワイバーン』です。

 危険種って話ですけど、テムさんにかかれば子犬みたいなもんですね。」とアイアちゃん。

 「おだてるなよ。

 俺なんてアイアちゃんに比べれば子犬みたいなモンなんだから。」と俺。


 やっぱり俺も強くなってるんだよ。

 アイアちゃんの強さが化け物じみてるだけだって。

 それに俺は晩成型だからまだアイアちゃんに勝てなくても、せめて一週間、アイアちゃんの決闘のためのステータスアップの手伝いがしたい。


 「ところでコイツ、どうすんの?。

 逆さまに吊るして、首捻って殺して血抜きすんの?。」と俺。

 「いや、田舎の冠鳥飼ってる農家じゃないんですから。

 死体持ってきゃ冒険者ギルドでモンスターの死骸は売れますよ。」とアイアちゃん。

 どうやら鶏みたいな『冠鳥』って鳥がいるらしい。

 「あっそう。」俺はワイバーンの首を掴んで捻って折った。

 ワイバーンは「グギャッ」と小さな鳴き声をあげたが、そのまま静かになった。

 「コイツを何匹くらい倒すと、今晩の晩飯代になるの?。」と俺。

 「そうですね、だいたいコイツ一匹で四人家族が三年くらい豪遊出来ますね。」とアイアちゃん。

 俺は質素に生きてきたんだし、これからもそのつもりだ。

 「豪遊できる」といわれるより、「豪遊しなければ、何年食いつなげるか?。」のほうが知りたい。


 つーか、古い考え方かも知れないけど『最強』になるためには『ハングリーさ』も必要なエッセンスだと俺は思ってる。

 つまり『金持ち』になったら、『最強』になれる気がしない。

 

 「えっと・・・この世界には『恵まれない子供達のために寄付』みたいな制度はないの?。」と俺。

 「あるもないも私が成人するまでいた孤児院がそういった寄付金で成り立ってましたけど・・・。」とアイアちゃん。

 「悪いけど当面の生活費以外のコイツを売った金はアイアちゃんがいた孤児院に全額寄付したいんだけど。

 ホラ、大金って怖いんだよ。

 人間性変わりそうで。」と俺。


 そんな俺をアイアちゃんは何も言わずに見つめていた。

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