第35話
街から北へ歩き、湖畔に辿り着いた。
イケメンが言う事が本当なら人は来ない。
なぜなら湖には聖剣が沈んでいて、多くの人が信仰してる宗教の聖地になってるからだそうだ。
年に一回ずつ湖畔で、儀式を行うけれどそれは春先だし、秋が深まってから収穫祭を行うけれど、その時期には早すぎる。
「テムは田舎者で、『カムリ教』の信者じゃないだろうし、信心深くもないだろうから、聖地のほとりで『アレ』しても罰当たりとは思わないだろ?」とイケメン。
誰が田舎者だ!。
川崎はそこまで田舎じゃねーぞ!。
これだけは言っておく。
『世田谷』を田舎というイメージはやめろ。
普通に住宅街なだけで、高級住宅街だぞ。
三軒茶屋に住むのは金持ちか女の子だ。
昭和女子大の女の子は高くてもセキュリティがあって近い三軒茶屋、世田谷区内に住む。
俺は男だから川の向こうの川崎市で暮らしてるだけだぞ。
田舎者だからじゃねえ!。
「さぁ、何処からでもかかって来なさい。」俺は老師ぶる。
古いジャッキーチェンの映画じゃ鼻の赤い老師が出て来て、弱いジャッキーチェンを強くする。
子供の頃の俺はあの光景に憧れた。
だから子供の頃の俺にとって『鼻が赤い=強い』という決めつけがあった。
ガンダムの敵で『アカハナ』が出てきた時は「影のボスだ!」と勝手に盛り上がった。
因みにアカハナファンの俺だから知っているこぼれ話だが、アカハナはマッドアングラー部隊所属じゃなく、特殊工作員としてジャブローに侵入する。
『アカハナ』には『ハマン=トッラム』という本名があって、シャアとは犬猿の仲だ。
そんな話はどうでも良い。
何が『カムリ教』だ。
オメーらなんて『皮カムリ教』って言ってやる!。
この時、俺は『格闘家』の上位職である『モンク』が『カムリ教』の『格闘僧』だとはまだ知らなかった。
いつの間にか俺は『カムリ教』に入信するのだか、それはまだ先の話。
「では行きます!。」アイアが言う。
緊張の瞬間、もしアイアが俺より遥かに強かったらどうしよう?。
だったら盗賊団のボス、倒せるんじゃない?。
それは考えが甘すぎる。
あの時、盗賊団のボスが本気を出していなかった可能性もある。
アイアが一週間の訓練で今より遥かに強くなろうとしている。
盗賊団のボスも強くなろうとしていない根拠は?。
今だったら勝てるかも知れない。
でも、油断せずにまだまだ強くなろうとしなくちゃいけない。
アイアが視界から消える。
速い!。
さすが盗賊。
でも格闘家もスピードでは盗賊に劣らない。
ブン!。
後頭部付近で風を切る音がする。
咄嗟に音が聞こえたあたりに前腕を構え、防御姿勢を取る。
前腕に冒険者ギルドで借りてきた訓練用の模擬ナイフが当たる。
刃がついていても、俺の『身の守り』なら切れなかっただろう。
だが、なかなかの衝撃だ。
これはあまり手を抜いてはいられない。
模擬ナイフを押し込むアイア。
前腕で受け止める俺。
膠着状態・・・と、みせかけて俺がアイアの足を刈る。
アイアは真後ろに受け身を取ると、トンボを切って遥か遠くに身構えて立った。
さて、俺優位で二時間くらい闘えるだろうか?。




