第31話
「目を開けても良いよ。」と俺。
俺と手を繋ぎ、目を閉じてついて来たアイアが目を開ける。
「ここは・・・どこだ?。」アイアが呟く。
「ここ、俺の家。
狭いながらも楽しい我が家でございます。」と俺。
「あっと、言い忘れてた。
俺の部屋、土足厳禁だから。
一応、靴脱いで。」と俺。
アイアは急いで履いていた木の靴を脱ぐ。
「脱いだ靴、玄関に置いてね。
今から、靴を買いに行くからどうせすぐに靴を履く事になるけど。」と俺。
「靴ならこの木靴で充分だ。
新しい靴などいらない。」とアイア。
「今から買いに行くのは『ランニングシューズ』
盗賊団のボスを倒すためのトレーニングのための靴ね。」と俺。
「とれーにんぐ?」とアイア。
初めて聞く言葉だろう。
異世界では全て、レベルアップで能力向上しトレーニングという概念はないのだ。
「わかんなくても良いよ。
つまり、その靴が盗賊団のボスを倒すための鍵になるから。」と俺。
「?。
凶器を靴に仕込むのか?。」アイアはよくわかってない様子。
「今はわからないでも良いや。
暗くなってきたな。
電気つけようか?。」と俺は電気のスイッチを入れた。
「!?。
眩しい!。
これはお前の攻撃か!?。」とアイア。
「攻撃って・・・。
暗くなってきたから部屋の電気つけただけだよ。
アイアだって、部屋が暗くなってきたらランタンつけるだろ?。
それと同じ。
あ、今いるところ、さっきまでいた冒険者ギルドのあった街じゃないから。」と俺。
「マギーの街じゃないのか?。
じゃあどこなんだ?。」とアイア。
あそこマギーの街っていうのか。
なんかブイヨンみたいだな。
「ここは高津。
俺が通っている大学から程よく近いところにある街だ。
本当はもっと近くに住みたかったんだけど、東京都内、多摩川を越えると家賃が一万円高くなるんだ。
だから多摩川の向こう側、神奈川県川崎市に住んでる。」と俺。
「知らない地名だらけだ。
マギーの街から近くにそんな所があったとは・・・。
うわあ!!!!!。」アイアは最初、眩しくて幻惑されていたが、目が慣れてきて周囲が見えるようになってきた。
そして、見た事もない光景を見て、『うわあ!!!!!。』と声をあげたのだ。
「驚いた?。
ここは地球。
アイアがいた世界とは別の世界。
俺らは異世界なんて呼ぶね。
ある人は『アイアのいた世界がピンチになった時、この世界から勇者が選ばれてアイアの世界に行く』なんて説を唱えているね。」と俺。
「『勇者様のおわす世界』・・・。
そんな一概には信じられない。」とアイア。
「そう簡単に信じられる話じゃないと俺も思う。
だけど、地球でトレーニングした者がアイアの生まれ育った世界でレベルアップすると『無双』の力を手に入れられるんだ。
アイアは俺が盗賊団と闘うところを見たと思う。
『アイアの生まれ育った世界』と『俺の生まれ育った世界』の両方で力をつければ、盗賊団のボスを倒すのも夢じゃないと思うんだ。
逆にそうしなければアイアが盗賊団のボスに勝てる方法はないと思う。
これが俺がアイアを俺の生まれ育った世界に連れてきた理由だよ。」と俺。
「猜疑心は消えないだろう。
今、アイアの心の中じゃ『本当にこの人の事を信じて良いんだろうか?。』と揺れ動いていると思う。
でも時間がないんだ。
アイアが盗賊団のボスに勝つためには、もう悩んでいる時間はないんだ。
どうせ盗賊団のボスに勝てる方法がないなら、一週間限定で俺の事を信じてみたらどうだろうか?。」俺はアイアの手を握りながら言った。
アイアは伏し目がちに頷いた。
俺は『チョロい女だ。
こういう女が壺とか絵を買うんだな。』と心の中で思った。




