第30話
俺とアイアは街へ戻った。
ちょうど夕食時だった。
もちろん二人とも金はない。
かたや今日から社会人で、数少ない財産は全て盗賊団の根城に置いてきてしまっている。
かたやこの異世界の物は全く持っていない。
持っている物といえば、薬草採取のクエスト報酬、銅貨6枚だ。
この世界に銅貨三枚以内で買えて、ある程度腹が膨れる物はないだろうか?。
たとえば『ビッグカツ』みたいなもん。
あれは一体、何のカツなんだろうか?。
肉か魚かすらわからない。
しかし今はただひたすら『ビッグカツ』が恋しい。
市場へ顔を出す。
『ビッグカツ』は売ってないだろうか?。
やはり、売っていない。
しょうがない。
日本へ帰ろう。
アイアはどうするのか?。
連れて行こう。
いや、無計画に連れて行く訳じゃないんだよ。
元から日本でトレーニングするつもりだった。
相手は盗賊団のボス。
普通にレベルアップしただけじゃ絶対倒せない。
アイアを俺みたいな掛け算だらけのステータスにする。
それで盗賊団のボスに一週間で勝てるだろうか?。
時間をかければ負ける勝負ではない。
しかし、一週間で初心者がボスキャラに勝てるように出来るのだろうか?。
しかも、異世界でのレベルアップの数値は女の人のほうが上がりやすいが、日本でのトレーニングではステータスは女の人の方が上がりにくい。
一週間では大したステータスアップに繋がらない可能性もある。
・・・ダメだ、弱気になるな。
やれる事は全てやろう。
レベルアップは女の人の方がステータス上がりやすくて、トレーニングでは女の人の方がステータス上がりにくいなら、昼は異世界でレベルアップに励もう。
ヤバい。
大学があって、一週間丸々アイアに付き合えない。
少しくらい大学サボっても大丈夫だよね?。
留年しないよね。
小屋に入る。
俺はランタンに灯りをともす。
小屋の中が少しだけ明るくなる。
アイアの目に姿見が映る。
「・・・綺麗。」
この世界ではこれだけ透明度がある鏡が珍しいらしい。
しかしこれで驚いていてもらっては困る。
これから奇妙奇天烈、複雑怪奇、奇々怪々な事が起こる。
「じゃあ、目を瞑って。
今から俺と手を繋いで、俺についてきて。」と俺。
アイアの顔に「何で?。意味わかんない。」と書いてある。
わからんだろうな。
俺もわかるように説明出来る自信ねーよ。
「説明するより経験してもらった方が早いんだよ。
ホラ、一週間後には盗賊団のボスと闘わなきゃいけないんだよ?。
説明してる時間はないんだ。
俺を信じて!。」と俺。
よく考えたら無茶苦茶な事言ってるよな。
今日知り合ったばかりの生尻蹴った女の子に「俺を信じて!」とゴリ押ししてる。
「わかった。あなたを信じます。」とアイア。
よく信じられるな、バカじゃねーの?。
こうして異世界人として初めて、アイアは日本にやってきた。




