第29話
女盗賊がコイツらのグルだったかは知らない。
ここまでは女盗賊の案内じゃなくて、俺が自発的に来たのだ。
ここに盗賊達がいたのは偶然だろう。
しかし、女盗賊は驚いている。
ここまで盗賊達が仕組んでいたのか・・・と。
その答えは半分正解で半分不正解だ。
元々、俺と女盗賊が闘って、そして俺が森へ逃げ込む。
森に俺が逃げ込んで来たところ、盗賊団が俺を捕まえる。
それは元々予定していたのだろう。
まあ、俺と女盗賊が仲間になり、二人で森に入って来るのは計算外の出来事だろう。
盗賊団の連中は女盗賊が自分達を裏切ったとは思っていない。
だから『ここまでアムロの身内を連れて来た』と思っているのだろう。
でも、盗賊団の連中がバカだから疑問に思わないだけで、「女盗賊は森が盗賊団の縄張りだと知らないはずだ。」など矛盾に気付くべきだった。
盗賊団は見たところ、30人ほどいるだろうか?。
女盗賊はこの状況を見て、寝返るだろうか?。
女盗賊はナイフを構え、俺と背中合わせになっている。
何で俺に背中を預けようと思ったんだろう?。
とにかく敵に寝返る気はないようだ。
この異世界、騎士や兵士のほとんどは女性で、冒険者は女性:男性が大体7:3だ。
そして、盗賊団はみたところ女性:男性は8:2だ。
マフィアはどうなんだろう?。
盗賊団にいる女はみんな『関西のオバハン』という感じだ。
何か、強そうとか弱そうという以前に『あめちゃん』を沢山くれそうだ。
出来れば女性は殺したくない。
それには綺麗な女の子とか関西のオバハンというのは関係ない。
これ程「武闘家で良かった。」と思った事はない。
なんせ、女性相手に刃物を使わないんだから。
いざとなったら『男女平等パンチ』を繰り出さなきゃいけないけど。
俺は盗賊団を前に構えた。
俺は「どこからでもかかって来い」というように手招きをした。
するとナイフを構えたオバハン達が立ち塞がった。
やっぱり、異世界じゃなくて日本で最強になりたいな。
だって異世界で最強目指したら、やっぱり女の人と闘わなきゃならないだろうし。
俺は盗賊達の構えているナイフだけを蹴り落とした。
端から見たら「スゲー!」けど、本当は女の人に暴力振るえないだけだ。
やっぱり俺は異世界で最強を目指すのに向かない。
「お前が強いのはわかった。
お前を人質には取れない、というのもわかった。
お前はどうしたいんだ?。
俺達を憲兵に引き渡したいのか?。」と盗賊団のボス。
「いや、こちらからの要望は二つ。
『二度とこちらに手を出して来るな。』
『この女の子をこちらにくれ。』
それだけだ。」と俺。
「『手を出すな』というのは了解した。
だが『アイア』は渡せない。」と盗賊団のボス。
「何でだ?。
お前らは俺に喧嘩を売ってきた。
それに完全に負けたんだ。
何かしら迷惑料を要求するのは勝者の当然の権利だろう?。
それともまだ続けるかい?。
傷つけなかったのも、殺さなかったのも俺の慈悲だぞ?。
これ以上続けるなら、それなりの覚悟をしてもらうぜ?。
それよりも今回の落としどころというか、俺の要求を飲んだ方が良いんじゃないか?。
それとも全員、憲兵に引き渡そうか?。」と俺。
ハッキリ言ってブラフだ。
相手を殺す事も、女の人を傷つけることもまだ覚悟は出来ない。
「このまま喧嘩を継続する」と言われて一番困るのは本当は俺だ。
全員憲兵に盗賊団を引き渡して、そして20人が処刑されるとする。
「自分がやった事の結果、人が20人死んだ」そんなの今は到底受け入れられない。
人の命や権利が木の葉のように軽いこの異世界で「人を殺さず、傷付けずにやっていけるか?。」わかってる。
でも、やれるところまではやってみたい。
「そうじゃねえ!。
私らはアンタと敵対の意思はねえ!。
ただ、アイアは自分で『盗賊になりたい。』と私らに申し出たんだ。
盗賊ってのは『辞めたい』って言って『はい、そうですか』と認められないんだよ。
アイアはたった一日しかいなかったが、それでも盗賊団内部の事や、まだ懸賞金がかけられてないメンバーの顔を見てるんだ。
辞めるからにはそれなりの禊が必要になるんだよ。
これは盗賊団の決まりなんだ。
『盗賊団を辞めるヤツは盗賊団のボスと闘って勝たなきゃいけない』」と盗賊団のボス。
俺は勝手に無精髭の男が盗賊団のボスだと思っていたけど、アイツはどうやらボスの愛人みたいだな。
『三國無双』に出てきた『猛獲』の女みたいだな。
『祝融』だっけ?。
こんな汚い祝融いらない。
アイアというのは女盗賊の子の名前だろう。
「わかった。
強引にアイアを連れ去ることも出来るが、そうしない代わりに一週間、俺にアイアを預けてくれ。
それでアイアを鍛え上げる。
それが認められないなら、俺がここで暴れてアイアを連れて行く。」と俺。
「わかった。
一週間アイアを預ける。
その後、アイアが盗賊団を抜けられるかテストさせてもらう。」




