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第17話

 「すいません。

 ここで『滝行』をさせてもらえると聞いたんですが。」と俺。

 ここは禅寺の『碩善寺』だ。

 稲川が教えてくれた『滝行』が出来る場所の中で一番、大学から近い。

 山寺で寺は崖の斜面と隣接して建てられていて、その崖を小川が流れている。

 崖は滝になっており、そこで『滝行』が出来るらしい。

 対応に出た僧侶が俺を値踏みするように頭の先から爪先まで見る。

 僧侶に言わせりゃ「また若いヤツが来やがった。免罪符が欲しいなら他にいきやがれ!」というモノだろう。

 しかし、この寺の一番の偉いさんである住職が変な商売始めちまったせいで、来る日も来る日もパリピ相手に『滝行の説明』をしなきゃならない。

 この不貞腐れた態度も仕方がない。

 しかし、俺がパリピに見えるのだろうか?。

 やはり『かっこよさ』のステータスが多少は上がっているようだ。

 しかし俺が女の子を泣かすような人間のクズに見えているんだろうか?。

 嬉しいような腹立たしいような、微妙な気持ちになった。


 「ではここで白装束に着替えて下さい。

 着物の着方、帯の締め方がわからない方は遠慮なく言って下さい。

 お手伝いします。」と僧侶。

 俺は空手道場に通っていて道着を着なれていたので、和服の着方はわかっていた。

 パリピが「完璧じゃね?」と言いながら白装束を着ているが襟が左右逆になっているし、帯が縦結びになっている。

 それを青筋を浮かべながら、一人一人僧侶が直していっている。

 見ていて思う。

 楽な仕事なんてないんだ、と。


 「では皆さんに『滝行』をしてもらいます。

 決められた時間はありません。

 ただ、最低でも5分は『滝行』をしてもらいます。

 我々僧侶は滝に打たれながら経を読むのですが、皆さんは経は知らないと思いますので、手を合わせて頭の中を(から)にして下さい。」と僧侶が説明する。


 『魔力』を手に入れる方法を探してるんだよ。

 こんなパリピでも出来る事だとは知らなかった。

 まあ、金も払ったし、やらずに帰るのはもったいない。

 「もしや」という可能性もある。

 『滝行』をやろう。

 30分もやれば格好はつくだろう。

 確か、滝に打たれて頭の中を真っ白にすれば良いんだよね?。

 俺は滝に打たれながら、手を合わせて考えるのを止めた。

 「考える事をやめる」と言っても、コツを掴むまでは難しい。

 ランニングの時、「ゾーンに入る」事がある。

 視界が狭くなり、考えているし、集中しているのだが、何も考えていないかのような上手く言葉に出来ない感じ。

 あんなイメージで、滝行に励もう。


 「・・・・・・・・・」

 何か遠くで声が聞こえる。

 「聞こえてますか!?。」僧侶が俺に呼びかけているようだ。

 「何ですか?。」と俺。

 「もう五十分も滝に打たれっぱなしだったんで、さすがに声を掛けさせてもらいました。

 特別時間は設けてなかったんですが放っておくと、一日中滝行してそうな感じだったんで。」と僧侶。

 もう五十分経ってたんだ。

 これがトランス状態ってヤツかな?。

 


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