第112話
学生街での弁当配達がなんとか軌道に乗ってきた。
ピザでも自分で買いに行くと半額になる。
容器や割り箸をこちらで用意し、接客、皿洗いの手間が一切かからないので、配達した場合の店の取り分は一割引だ。
そこに我々が二割手数料という名の『儲け』を乗せる。
つまり、弁当配達を頼むと店で買うより一割高くなるのだ。
いや、正確に言うと一割は高くならない。
弁当配達は『弁当を買って家で食べる』というのと同じような行為なので、
1%の税金控除の対象になる。
細かい事を言えばキリがないが配達を頼んでもそこまでは高くならない、という事だ。
学生相手にそれがウケたのだろう。
そして『手数料がかかる』というデメリットの他に『色んな店の色んなメニューを組み合わせれる』というメリットもある。
例えば飲み会を企画する。
おつまみとしてパーティーメニューを頼む。
しかしパーティーメニューを1店舗で頼む必要はない。
唐揚げはあの店。
ポテトフライはあの店。
ピザはあの店。
焼き鳥はあの店。
それらをまとめて弁当配達の業者が持ってきてくれる。
つまり引きこもり気味であまり外に出ないお得意様と、雀荘に入り浸っているお得意様と、活発なパリピのお得意様など学生街限定でかなり手広くやれるようになってきていた。
今までが順調すぎた。
そりゃ思い通りにならない事もある。
気を取り直してレダちゃんに連絡する。
レダちゃんから連絡してくれれば文句はないが、そこまでスマホは使いこなしていない。
レダちゃんが電話を取れるようになっただけでも進歩と思わなきゃならないだろう。
電話を通した声は翻訳魔法がかかっていないので、お互いの言葉が通じないかと思ったら、電話では翻訳魔法がかかった音声が流れる。
どういう仕組みなのだろう?。
ただ一つだけ覚えておこう。
『魔法は家電に有効である』
何せ翻訳魔法が電話口から流れるんだから、工夫次第で冷蔵庫やエアコンが異世界でも使えるかも知れない。
まあ、それは今回は置いておいて・・・。
「もしもしレダちゃん?。」
「はいはい、弁当配達の『マッドアングラー』です。
って、テムさん?。
けっこう注文入ってるよ。
あと『NHK』って人が来た。」
「ついにヤツらが動き出したか。」
俺は注文の内容を聞いた。
どうやら今回、新規の注文はないようだ。
「『ついに』ってどういう事さ?。
『ヤツら』って誰さ?。」
「『西日暮里(N)不倫(H)倶楽部(K)』の略。
つまり人間のクズの集まりだね。」
「不倫・・・。
最低・・・。」とレダちゃん。
「そう、最低なんだ。
しかも『加入しろ』
『金を払え』ってしつこく言ってくるんだ。」
「今日も『加入しろ』『金払え』って言ってたさ。」
「『興味ないから帰れ』って言っても『決まりだから金払え』の一点張りでな。」
「あと、稲川さんから。」
「稲川?。
わかった。
仕事が終わった後に連絡しとくわ。」
「何か連絡くれたみたいだな。」
「雀荘のオヤジから聞いたんだけど、何か筋者と揉めたらしいね。
お前にはオヤジ、オヤジにはお前を紹介したのは俺だから、何かあったら連絡貰う事になってるんだ。
『報告・連絡・相談』ってヤツだな。」
「まあ、一時的にトラブルにはなったけど、土着の筋者じゃないみたいだし『犬に噛まれた』程度の話だ。
それより誰か『洗脳』について詳しいヤツ知らないか?。
調べたい事があるんだが、全く真実に近づかない。」と俺。
「『洗脳』と『マインドコントロール』がどう違うかわからないが、そこら辺の話はオカルトでも語れる話あるぜ?。
昔、オカルト業界では有名なオカルト雑誌があった。
その雑誌に『座禅を組んで宙に浮ける男』として紹介されたのが、後に死刑執行された『地下鉄サリン事件』の首謀者だ。
オカルト好きが社会に迷惑かける可能性もある。
ヨガサークル、仏教サークルを語る仮面サークルもいくらでもあるから『オカルトサークル』だけの責任ではないけど、オカルト好きが転じて新興宗教にハマるって人もいない訳じゃない。
だから悪徳な新興宗教にハマったヤツの家族に紹介する脳の専門家ってのがいるんだ。
何でも『洗脳』と『マインドコントロール』は違うらしいんだが、何度聞いてもそこら辺の違いはわからない。」と稲川。




