第110話
「どうしたんですか?。」とアイアちゃん。
弁当配達の仕事は、一人は電話番。
二人が配達だ。
この量なら配達は一人で充分だ。
だが、商圏が狭く、登録店の少ない俺らの売り文句は『待たせない』だ。
我々の体は一つしかないので、沢山注文が入れば待たせるしかなくなる。
その時を想定して二人で配達しているのだ。
それとは別にアイアちゃんとレダちゃんに配達ルートを覚えてもらいたいというのもある。
最悪二人で回せるので、これが長期の体勢になった場合、一人休暇を取っても何とかシフトを回せる・・・それには俺について、配達の仕事を覚えてもらうしかないのだ。
「ううん、何でもないよ」と俺。
でもチンピラ二人組はアイアちゃんが日本人じゃないのに気付いたようだ。
チンピラのこういった嗅覚は大したものだ。
アイアちゃんを見た途端「コレは金のなる木かも」と思ったに違いない。
「姉ちゃん、どこから来たんや?。
ビザとパスポートは?。
ワシらに『在留カード』見せて見ようか?。」マズい、俺らの泣き所だ。
『アイアちゃんとレダちゃんの証明書類が一つもない。』
俺は顔色を変えてしまったらしい。
チンピラ達は「あ、これは不法就労だ」と思ったらしい。
どうでも良い嘘はすぐにつけるクセに大事な嘘はすぐバレる。
俺って本当にどうしようもないな。
「ビザもパスポートもありますよ。
今、持ってないだけで。」と俺。
「そっかー、じゃあ『在留カード』だけでも今見せてや。
アレだったらいつでも財布の中に入れて持ち歩いてるはずやろ?。」とチンピラ。
俺は小声でアイアちゃんに「こちらの言っている事を理解出来ないフリをして」と伝えた。
おそらくアイアちゃんには伝わった。
アイアちゃんは小さく頷いた。
「見せても良いんですがね、失礼ですが俺が『この人に見せろ』なんて言えないんですよ。
あなた警察の人でも入国管理局の人でもないですよね?。」もうこうなれば勝負だ。
「じゃあ、警察呼んでも良いんやな?。」とチンピラ。
「ご自由に」本当は良くない。
この子、地球上のどの国にも戸籍なんてない。
国外追放になったとして、アイアちゃんはどこに連れていかれるんだろうか?。
こちらをチンピラ二人組が睨んでいる。
ホラ、警察なんてヤクザが連絡出来る訳がない。
・・・とは言え、キッチリマークされている。
もう向こうから撤退させるしかない。
しかも「もう今後アイツらとは関わりたくない」と思わせないといけない。
ヤクザにカモられると全てが終わってしまう。
こんな雑魚殺して沈めりゃ良い・・・んだろうけど、それはしたくない。
さてどうしようか?。
アイアちゃんが不安そうにこちらを見ている。
大丈夫だって!。
アイアちゃんは何も悪くない。
そうだ、そういえば魔力が上がって魔法の威力が上がった。
威力が上がったのは補助魔法もだ。
でもMPを使ったスキルの威力が上がったかどうかは試していない。
丁度良い機会だ。
アイアちゃんのスキルの威力が上がったかどうか試してみよう。
「アイアちゃん、お願いがあるんだけど。
あの二人の服をスキルの『スリ』で全部盗んで欲しいんだけど。」と俺。
「えっ・・・着たままの服を盗むの?。
そんな事出来るかな?。」とアイアちゃん。
「多分出来ると思う。
前に俺、魔力が上がって爆発的に補助魔法の威力が上がったんだよね。
俺の予想が合ってたら、スキルの威力も魔力の上昇とともに上がってるはず。
『スリ』の威力が上がれば、着ている服も全部スレるはずだよ。」と俺。
「じゃあ上手に出来ないかもだけど、やってみるね。」
「結果の責任は全部俺が持つから。」と俺。
「何でお前ら急に黙り込むんだよ?。
何か企んでるんじゃないだろうな!?。」とチンピラ。
「そりゃ黙り込むよ。
何で急に二人とも全裸になるんだよ?。」と俺。
チンピラ達の後ろには真っ赤な顔で、チンピラ達の服をアイテムボックスにしまうアイアちゃんが。
よくやった、アイアちゃん!。
でも別にパンツは脱がさなくても良かったぞ。




