第101話
「そういや、俺、医者の出してた薬草の依頼をこなしたよな?。
あの時に医者はここにいたんだよな?。」
「何でそう思うんだ?。」
「あの依頼が生きてたって事は少なくともあの時の一週間前以内に医者は冒険者ギルドへ依頼へやって来たって事だ。
でもあの時はすでに本拠地にしていた建物に医者はいなかった。
変だよな?。
俺の身内が失踪したんだぜ?。
何故お前は俺に相談しなかった?。
俺が信用出来なくても、探りは入れてくるよな?。
お前にとっては、恋人が消えたんだろ?。
探りすら入れて来なかった理由は簡単、ここにいたからそれをする必要もなかったんだろう?。
お前が暴行に遭って大怪我して記憶喪失になってる医者を匿ったんだよな?。
・・・で俺の事がまだ信用出来なかったから、医者を匿ってる事は内緒にしておいた。
それ以外に考えられない。」
「その通りだ。」
おそらくギルド長は医者が本拠地にしていた小屋を知らない。
そして、恋人というのも嘘だ。
おかしいと思っていた。
医者とギルド長が秘密を共有するような深い仲なら、俺が医者と同じ異世界人と疑わない方がおかしいし、少なくとも疑うはずだ。
医者は日記の中に、日本から異世界へ来た人間のために『異世界の歩き方』をあの小屋に残している。
それは日本語で書かれているため、日本人以外には読めないし、内容を偽装する必要はない。
あの『異世界の歩き方』に俺はだいぶ助けられた。
そして『異世界の歩き方』には「他の転移者」「協力者」など一切書かれていない。
その理由は明解だ。
「いない」のだ。
俺はアイアちゃん、レダちゃんという二人の異世界の協力者を作った。
もしかしたら俺はすごく迂闊なのかも知れない。
医者にとっての『協力者』とは自分と同じ『不慮の転移者』で
俺も全て本当の事を言っていない。
そもそも医者と身内だという話が嘘だ。
嘘をつくのは構わない。
「お互い全ては本当の話は出来ない」というだけの話だ。
その嘘が誰を守るための嘘かはわからない。
己のためかも知れない。
相手を巻き込まないための物かも知れない。
そんな話は大した話ではない。
問題は「敵なのか」「味方なのか」がハッキリしない事だ。
(しばらくは気を許さないようにしよう)
俺はそう方針を定めつつ、ギルド長へ質問した。
「で、ギルド長は俺に何をやらせるつもりなのか?。
『古代種の竜を狩った連中を皇国の味方にしたくない』他の意図もあるんだろう?。」




