↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンシング・ヘルシング  作者: 逸見 秋仁
第二章 夢
PR
26/49

第二十五話 運命の掛け違い

 すももの対面に、マネージャーの絆(ばん)と彼の知人の蓮井(はすい)ゆかりが並んで腰掛けている。

 二人は忍者の学校の同級生だという。

 三人は同い年という共通点があるし、すももは、ゆかりとも仲良くできる気がしていた。

 人見知りの彼が名前で呼んでいるくらいだから、ゆかりという娘(こ)と絆は相当親しいはずだ。


 すももはレストランの席に着くなり、単刀直入に切り出してみた。

「二人はさ……付き合ってたりするの?」

 絆はその言葉を聞くなり、咳き込んで、飲みかけのコップをテーブルに置いた。

「そ、そんなんじゃないよ」

「そ、そうです」とゆかりも慌てた様子で頷く。「私と有島(ありしま)君はただの同期で、それ以上のことは何も……」


「ふ~ん……」とすももは対面に座る二人を見ながら、レストランのメニューを開く。

「どれどれ……」

 隣りの席で人形のフリをして固まっていた点点は、テーブルの上のメニューを覗き込む。


 三人と一匹は、駅前にあるイタリア料理のチェーン店に来ていた。

 安さが売りの店だけあって、全体的に客層は若い。

 大学生らしき十代のグループも多かった。


 すももはメニューを見ながら、恐縮した様子の彼女に笑顔を向ける。

「ゆかりさんは何にします?」

「えっと……」と彼女は慌ててメニューをめくる。

 点点はそんなゆかりの様子に首を傾げる。

「ふむ。さっきからどうした?お主らしくない?いくら天巫女(あまみこ)の前とはいえ、緊張することはなかろう?」


 ゆかりは単に大人しい子なのかとも思ったが、旧知の点点からも見ても、彼女の様子は少しおかしいらしい。

「天巫女ってそんなに偉い存在なの?」すももは未だに自分の役職について、よく分かっていなかったりする。「その何とかって忍者の里の中で……」

「義賀(ぎが)の里じゃ」と点点が突っ込む。「ふむ。まあ、確かに里にとって、なくてはならない存在ではあるが……」


「そ、そうじゃないんです……」ゆかりは気恥ずかしそうに顔を赤らめる。「すももさんが天巫女だからというわけではなく……」

「ではなく?」点点は首を傾げる。

「じ、実は……私……ヘルシングのファンでして……」

 もじもじと俯くゆかりに、すももはパッと笑みを浮かべる。

「そうなんですか?ありがとうございます。忍者の人にまで知っててもらえるなんて……。絆君なんてヘルシングのこと何も知らないから……」


 絆という男の子は、文句を言いたくなるくらいアイドルに興味がないように見えた。

 なぜマネージャーをしているのか疑問だったが、彼が自分の護衛のために派遣されたと知って、すももはようやく腑(ふ)に落ちたのだった。


「有島君は変わってますから」とゆかりも笑顔を見せる。

「変わってて悪かったな……」と黙っていた絆が口を開く。

「だって有島君……。義賀の里に来る前は、普通に東京の中学校に通っていたじゃないですか?それなのに信じられない」

「まあ、そうだけどさ……。実は、この任務を頼まれた時、ゆかりの方が適任だと中隊長には言ったんだよ……」


「え?そうだったんですか?」ゆかりは絆の言葉に目を丸くする。

「ああ。だって、護衛対象が人気アイドルだっていうから……。ゆかりの方がそういうのは詳しいだろ?でも、点点が俺を推薦してたらしくて、聞いてもらえなかった……」

「点点さん?」とゆかりは神の使いを睨んだ。「どういうことですか?」

「う、うむ。まあ、お主に任せてもよかったんじゃがの……。お主の夢を叶えるためには、この任務は遠回りになってしまうからな。同じ新人の中では、有島絆が適任だと考えた」

「……そういうことなら分かりました」ゆかりは一応納得したらしく、笑みを浮かべた。


 すももはいまいち、よく分からなかったが、もしかしたら護衛として現れる忍者が、別人かもしれなかったということは理解した。

「へえ、そうなんだ。ゆかりさんがマネージャーかぁ……」

「何だよ」と絆はすももに文句を言う。「俺より、ゆかりの方がよかったか?」

「ううん」とすももは首を横に振る。「そういうわけじゃないけど……」

 前のマネージャーが辞めると聞かされた時、次も女の人がいいと思っていたのは秘密だ。


「まあ、ゆかりの方が学校の成績もよかったたしな……」と絆は謙遜する。「護衛だけじゃなく、マネージャー業も、そつなくこなせそうというか……」

「いえいえ。私なんて別に……」

 慌てて否定するゆかり。

 彼女を横目に、すももは冗談めかして絆に言う。

「ふ~ん……じゃあ、やっぱり、ゆかりさんの方がよかったかも……」

「お前な……」と絆が突っ込むと、ゆかりと点点も笑った。


 ちょっとした運命の掛け違いで、絆はすももの前に現れたのだと知った。

 彼と出会ったのは、ある意味、奇跡なのかもしれない。

 二人は全く違う人生を歩んできたのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。