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ダンシング・ヘルシング  作者: 逸見 秋仁
第一章 忍者とアイドル
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第十話 宣材写真

 都内にある某撮影スタジオにやって来た。

 すももの宣材写真を撮るためだったが、新人マネージャーの有島(ありしま)は、宣材写真が何のことか分からないようだった。


「宣材写真というのは、タレントを営業先に売り込む際に使う写真だ」と秋場(あきば)は言った。「他にも事務所のホームページに載せたり、テレビなどでも使われる」

「なるほど」と有島は頷く。


「私も年に一回はここで撮っている」と秋場は続けた。「今日はいつも私がお世話になっているカメラマンさんにお願いした。すもも、衣装はちゃんと持ってきたか?」

「大丈夫です。一応、何着か用意しました」

 すももは持参したトートバッグを見せる。

 売れっ子の芸能人なら、専属のスタイリストさんが付くかもしれない。

 だが、新人アイドルに付くわけもなく、今回の撮影のために事前に服を買っておいた。


「すもものファッションセンスは、ちと不安だが……」

 秋場がこちらに視線を向ける。

 すももが今着ている服は、キャラクターがプリントされたトレーナーに、フェミニンなミニスカート、脚を長く見せる厚底のブーツ。

 どこかおかしいところがあるだろうか。


「そのトレーナーは何のキャラなんですか?」

 有島はすももの胸の辺りを指差した。

「これ?狐。変ですか?最近、古着屋で買ったんですけど……」

「ちょっと変ですね……」

「ええっ!変じゃないです~」

 すももは納得がいかなかった。


「変だな」と秋場も駄目押しのように言う。「まあ、すももが私服で何を着ようが自由だが……。問題は撮影用の衣装の方。そっちは問題あるまいな?」

 すももの大きなトートバッグに、秋場の視線が注がれる。


「みんなして、あたしの私服がダサいダサい言うから、衣装は佳叶(けいと)に選んでもらいました。だから多分、大丈夫だと思います」

「おお、石川佳叶(いしかわけいと)か……。彼女に任せておけば大丈夫だろうな」

「けいと?」と有島は首を傾げる。

「ヘルシングのメンバーなんです」とすももは答える。「モデルとしても活動してて、ファッションに詳しいんです。後で紹介しますね。今日のレッスンにも来るはずだから」


「鞄の中、ちょっと見せてくれ」と秋場はすももに詰め寄った。

「そんなに心配しなくても……。ファッションセンスが独特なのは社長譲りなんです」

「私はこういうキャラだからな」

 秋場は基本的に一年中ゴスロリファッションだった。

 秋場はすももからトートバッグを取り上げると、ファスナーを引いて中身を確認し出す。


 その時、ひょこっと顔を出したのは、すももが拾った狐のぬいぐるみだった。

「何だ、このぬいぐるみは?」と秋場はいぶかしげな表情を浮かべる。

「違うんです」とすももは恥ずかしそうに言った。「偶然拾ったぬいぐるみで……。少しかさばるんですけど、仕事の時は、お守りとして持って行くようにしてて……」

「ほう……まあ、ゲン担ぎも大事だからな」と秋場は理解を示した。


 その時、マネージャーの有島がぬいぐるみを見て、ふっと何かを呟いた。

「ん?何か言ったか?」

 秋場は聞き取れなかったらしく、有島に訊き返すが、彼は何でもありませんと黙ってしまった。

 秋場は首を傾げたが、すももは彼が何と言ったか、はっきりと分かった。

「点点(てんてん)」

 有島は確かにそう言ったのだ。


 点点という言葉を、すももは夢の中で繰り返し聞いていた。

 天照(あまてらす)から言われたその言葉。

 なぜ彼が知っているのだろう。

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