第九話 新人マネージャー
「新人マネージャーの有島絆です。よろしくお願いします」
秋場に促されて、真新しいスーツに身を包んだ男の子が頭を下げた。
つい先月まで高校生だった有島は、どこか幼さが残っているように感じる。
不健康に青白い肌をしていて、正直言って頼りない感じがした。
「こちらこそ、よろしくお願いします。ヘルシングというグループで、アイドルをやってます。内野すももです。同学年なんですね。お互い頑張りましょう……有島さん」
有島君でもいいのかもしれないが、さん付けにしておいた。
一応、初対面だったし、馴れ馴れしいと思われるのも嫌だった。
「そ、そうですね」有島は緊張しているのか、ぎこちなく笑みを浮かべる。「同学年といっても、内野さんの方が、この業界のことは詳しいと思いますけど……」
どことなく、よそよそしい二人に、秋場はため息をついた。
「……二人とも硬いな。すももは、いつも握手会で初対面の人と、話しているだろうが?」
「そうなんですけど……心の準備ができてなくて……。びっくりしちゃいました」
「まあ、いい」さして気にした風でもなく秋場は言った。「それじゃあ握手!これから、しばらくは一緒にやっていくんだから。ほら!」
秋場に促されるまま、すももは絆の手を握った。
すももは小柄なので、握手会の時と同じように、有島を見上げる形になった。
「すみません……。社長はいつもこんな感じなんです……」
「いや。そんな……」
彼の手は随分と冷たかった。
さっきまで外にいたとはいえ、今日は春の陽気を感じられるくらい暖かいのに……。
「もしかして寒いですか?」
すももは不思議に思って、彼の手を擦ってあげると、有島は照れたように顔を赤くした。
「何、照れてるんだ。人見知りか!」
秋場はマネージャーの手を扇子で叩いた。
「すみません」
有島が咄嗟に手を引っ込める。
「自己紹介は一旦、終わりだ」秋場はぴしゃりと言った。「話したいなら後にしてくれ。すももにはメールした通り、これから写真撮影に行くぞ」
「あ、はい」とすももは頷いた。「宣材写真ですね。一年ぶり」
「忙しいから、本当は二人で行ってもらいたいんだが……」と秋場は悩ましげだ。「さすがに、いきなり新人の彼に任せるのも気が引けるからな。仕方ないから三人で行くぞ。有島君は運転免許を持ってるんだったな?」
「はい」と新人マネージャーは頷く。
「うむ。それじゃあ車で行こう。運転を頼む。ほら、鍵だ」
そう言うと、秋場はポケットから車の鍵を取り出して投げた。
「おっと……」有島は鍵を片手で掴む。
「あと五分でいくぞ」秋場は早口でまくし立てた。「二人ともいいな?ちなみに、有島君の机はそこの空いているところだ。不要な荷物は置いて行って構わんぞ」
とはいえ、有島はビジネスバッグを一つ手に提げているだけだったので、来た時のまま撮影スタジオに向かうことになった。
すももと秋場もそのまま事務所を出る。
駐車場に停めてある社用車に三人は乗り込み、有島の運転で出発することになった。




