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ダンシング・ヘルシング  作者: 逸見 秋仁
第一章 忍者とアイドル
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第九話 新人マネージャー

「新人マネージャーの有島絆(ありしまばん)です。よろしくお願いします」


 秋場(あきば)に促されて、真新しいスーツに身を包んだ男の子が頭を下げた。

 つい先月まで高校生だった有島は、どこか幼さが残っているように感じる。

 不健康に青白い肌をしていて、正直言って頼りない感じがした。


「こちらこそ、よろしくお願いします。ヘルシングというグループで、アイドルをやってます。内野(うちの)すももです。同学年なんですね。お互い頑張りましょう……有島さん」

 有島君でもいいのかもしれないが、さん付けにしておいた。

 一応、初対面だったし、馴れ馴れしいと思われるのも嫌だった。

「そ、そうですね」有島は緊張しているのか、ぎこちなく笑みを浮かべる。「同学年といっても、内野さんの方が、この業界のことは詳しいと思いますけど……」


 どことなく、よそよそしい二人に、秋場はため息をついた。

「……二人とも硬いな。すももは、いつも握手会で初対面の人と、話しているだろうが?」

「そうなんですけど……心の準備ができてなくて……。びっくりしちゃいました」

「まあ、いい」さして気にした風でもなく秋場は言った。「それじゃあ握手!これから、しばらくは一緒にやっていくんだから。ほら!」


 秋場に促されるまま、すももは絆の手を握った。

 すももは小柄なので、握手会の時と同じように、有島を見上げる形になった。

「すみません……。社長はいつもこんな感じなんです……」

「いや。そんな……」

 彼の手は随分と冷たかった。

 さっきまで外にいたとはいえ、今日は春の陽気を感じられるくらい暖かいのに……。

「もしかして寒いですか?」

 すももは不思議に思って、彼の手を擦ってあげると、有島は照れたように顔を赤くした。


「何、照れてるんだ。人見知りか!」

 秋場はマネージャーの手を扇子で叩いた。

「すみません」

 有島が咄嗟に手を引っ込める。

「自己紹介は一旦、終わりだ」秋場はぴしゃりと言った。「話したいなら後にしてくれ。すももにはメールした通り、これから写真撮影に行くぞ」

「あ、はい」とすももは頷いた。「宣材写真ですね。一年ぶり」


「忙しいから、本当は二人で行ってもらいたいんだが……」と秋場は悩ましげだ。「さすがに、いきなり新人の彼に任せるのも気が引けるからな。仕方ないから三人で行くぞ。有島君は運転免許を持ってるんだったな?」

「はい」と新人マネージャーは頷く。

「うむ。それじゃあ車で行こう。運転を頼む。ほら、鍵だ」

 そう言うと、秋場はポケットから車の鍵を取り出して投げた。

「おっと……」有島は鍵を片手で掴む。 

「あと五分でいくぞ」秋場は早口でまくし立てた。「二人ともいいな?ちなみに、有島君の机はそこの空いているところだ。不要な荷物は置いて行って構わんぞ」


 とはいえ、有島はビジネスバッグを一つ手に提げているだけだったので、来た時のまま撮影スタジオに向かうことになった。

 すももと秋場もそのまま事務所を出る。

 駐車場に停めてある社用車に三人は乗り込み、有島の運転で出発することになった。

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