ギルドマスター
こんにちは。
星谷瀬奈です。
今回もお楽しみください。
「みんなー!ただいまー!」
ニコニコ笑顔で勢いよくギルドの扉を開け放ち、堂々と入場するアリエス。
ギルドにいた冒険者たちがアリエスとその後ろをついていく私たちに視線を向ける。
目立つのが苦手なアリアは俯きがちに辺りを観察した。
「ギルマスいる?」
受け付けさんにアリエスが微笑みかけると、受け付けさんは慌てたように「少々お待ちください!」とバタバタと奥に引っ込んだ。
ちなみに、ギルマスとはギルドマスターの略語である。
「アリエスちゃんじゃん…」
「あいつらと一緒にいる子二人は誰だ?」
アリアに向けられている視線はほとんどが興味や好奇によるものだった。
憎しみの籠った目を向けられない分、アリアは少し安堵する。
「アリエスちゃん、帰ってきたんだね!」
明るい少女の声がギルドに響いて、アリアは声のした方に視線を送る。
アリアの二つほど年上らしい女の子が駆け寄ってくる。
ラベンダーの髪を後ろで纏めた紫水晶の瞳の女の子は、冒険者ではなくバーにいる大人っぽいお姉さん、といった感じだ。
ぽかんとしているアリアに女の子が視線を向けた。
その途端、瞳が星のようにきらきらと輝き出す。
女の子はアリアのことを指し示しながら「この子が例の?」とアリエスに聞く。
アリエスの肯定を見ると、アリアの方に向き直って言った。
「あなたがアリアちゃんなのね!私、ミラ。ここのギルドマスターよ!」
紫髪に紫の目のミラは、きらきらと目を輝かせながら大人びた笑みを浮かべた。
大人びた笑みに少し子供っぽさが混じっている、不思議な笑顔だ。
「え、っと…?み、ミラさんがここのギルマスなんですか!?」
言葉の意味が理解し、信じられないと目を見開いて聞き返すアリア。
自分とあまり歳が変わらない女の子がギルドマスターをしているとは、にわかには信じ難いものだった。
「うーん、やっぱりその反応になるか…。みんなにそう言われるんだよねぇ…」
苦笑を浮かべながら困ったように頭を掻くミラ。
こっそりとロウが「僕のツテである、ミラさんのお父さんが本当はギルマスなんだけど、数年前に行方不明になってそれきりなんだ。だからミラさんが代理のギルマスなんだ」と囁いてくれて、なるほどと納得する。
「それで、あなたがアリエスちゃんを助けてくれたのね?」
その言葉にアリアが答える前に、3人が「おう!」「そうよ!」「ああ」と口々に答えた。
ミラは驚いたように口元に手を当てて目を剥いている。
「でも、アリアちゃんをいつアリアちゃんの実家が連れ戻すかわからないから、後ろ盾が欲しいの」
アリエスの言葉に、アリアはきょとんとして先ほどから気になっていたことを聞いてみる。
「なんで、連れ戻すと思うんですか…?」
今度はアリエスたちがキョトンとする番だった。
目を瞬かせながらミラは不思議そうに言う。
「だって、あなたが使っていたという『爆炎獄』はB級魔法よ?B級魔法の持ち主をあなたの家が放っておく訳がないでしょう?」
その言葉を聞いて、アリアの背中に冷たいものが走った。
B級魔法。
魔法は六段階に分かれて評価される。
強い方から順に、S、A、B、C、D、Eだ。
一般人が持っている魔法は基本DかEだ。
アリアの妹、ミシェルの持っている『治癒』もB級だとアリアは記憶している。
冷や汗を拭いながらアリアは打ち明けた。
『爆炎獄』は魔族との戦闘の最中に習得したものだと。
「ええ…?そうだったの…?」
「まじかよ!?」
「…驚いたな」
それぞれ様々な反応を見せたが、一番驚いているのはミラだった。
「戦いの最中に習得した…!?しかもB級魔法を…!?」
目をカッと見開いて考え込む仕草を見せる。
アリアは戸惑いながら続けた。
「私にもよくわからなくて…複製を使ったら『炎獄』を習得したって声が聞こえて、強化しますか?って言われてYES、って答えたら『爆炎獄』が使えるようになったんです」
その言葉に、ミラは「うーん」と唸ってから言った。
「そんな魔法、聞いたことないね…。もしかしたら稀に生まれる特殊魔法かも」
特殊魔法。
アリアが読んだ本に書いてあったことによると、特殊魔法はごく稀に持って生まれることのある魔法で、どんな性質なのか、どれほど強力なのかもわからない魔法だった。
そんな魔法を自分が持っているのか、と驚いて目をパチクリさせるアリア。
いつも家族には「役立たず」「能無し」「愚図」などと言われてきたアリアだから、自分がそんな魔法を持っていることなど夢にも思わなかったのだ。
ロウが「アリアはやっぱりすごいんだ!」と自慢げに胸を張ってドヤ顔をするのを窘めながらアリアはキャパオーバーになりかけの頭を回転させて状況を理解しようとする。
そんなアリアを気遣うように「まあ、とりあえず」とミラが話を纏めた。
「アリアちゃんは王国の魔法研究班を尋ねた方がいいかもね」
と。
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それではまた。




