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6/10

移動中にて

こんにちは。

星谷瀬奈です。

今回もお楽しみください。

「なんすかそれ…」



ガタゴトと揺れる馬車の中でアリアが俯きながら話し終えると、3人の顔には怒りの色が浮かんでいた。

眉間に皺を刻み、険しい瞳をしながら声を震わせるレオ。



アリエスとコウも怒りをあらわにしながら思わず揺れる馬車の中で立ち上がって声を上げた。

あまりに大きい声に、馬車の外の御者がびくりと肩を震わせたほどだ。



「信じらんない!アリアちゃんにそんな仕打ちをするなんて!」


「許せないな。魔法が使えないから、は虐げる理由になっていない。そもそもで虐げること自体最低だ」


「みんなもそう思うよね!?僕、あの家の奴らが許せない!」



怒りで震えている3人と1匹をぽかんと眺めていたアリアだったが、ふっとほんの少し口角を持ち上げた。



「ありがとう」



その言葉に、きょとりと目を瞬かせる3人と1匹。



「だって、私のために怒ってくれてるんでしょ?ありがとう」



そう言って微笑むアリアにロウは複雑そうに、はあとため息をこぼした。



「アリアってば、甘いんだからさ…」



困ったような、怒ったようなぼやきは馬車の空気に溶けていく。

奇妙な静寂に馬車が包まれる中、アリアは馬車の窓に近づいて外の景色を眺めることにした。



少し暗くなり始めているのではっきりとは見えないが、畑のあたりを通っているのか、独特な土の匂いがする。

気になったアリアは、アリエスに質問してみることにした。



「ああ、この匂い?アリアちゃんの予想通り農業用の土だよ。落ち葉とかを腐らせて作った土なんだ」



アリアはその返答を聞きながらよいしょと荷物のカバンを座席の下から出す。

そのカバンの中からメモ帳と鉛筆を取り出して教えてもらった内容を書き記した。



「アリアちゃんて、農業に興味あるの?」



「うーん…。興味はあるかな。でも、他のことにも興味がある」



「アリアって、結構知識欲があるんだよ!」



なぜか誇らしげにアリエスに教えるロウに、アリエスは目を丸くした。



「そうなんだ…!私勉強するの苦手だからなんか羨ましいな。アリアちゃん、すごいね!」



アリアは褒められた恥ずかしさを隠すようにまた窓へと視線を移した。

今まで否定するような言葉ばかり言われていたので、褒められることに慣れていないのだ。



「お、王都が見えてきたっすね」



レオの言う通り、巨大な王都が見えてきていた。

イヤスピス王国の隣国、イングラシア王国の王都だ。

アリアは馬車の窓を開けて身を乗り出し、目を丸くして王都を眺めた。



(イヤスピス王国の王都よりも大きいなんて…)



ガタゴトと馬車に揺られながらアリアは目を輝かせる。

まるで宝物を見つけた子供のような表情に、アリエスはふふっとおかしそうに笑った。



馬車が止まり、王国の警備にあたる兵士が近づいてきた。



「身分証の提示をお願いします」



その言葉に、アリアは身をこわばらせた。

自分はイングラシア王国の身分証を持っていない。

故に王都に入れないのだ。



どうしようと目で訴えると、アリエスは自信満々な表情を浮かべて馬車から降りた。

そして二言三言会話を交わすと、兵士の表情が驚きに染まった。



そのまま走っていって、慌てたように何か他の兵士に言っているようだ。



アリアが不思議に思って首を傾げていると、アリエスが満面の笑みで馬車に戻ってきた。



「通してもらえるって〜」



「ええ!?私身分証ないよ!?」



しれっと告げられた言葉に思わず素っ頓狂な声を上げると、アリエスが悪戯っぽい笑みを浮かべてパチリとウインク。


「コネを使ったんだよ」



「コネ…?」とつい訝しげな表情を浮かべたが、アリエスはこれ以上何か説明するつもりもないのかぼすんとソファに座って御者に出発するよう指示を出す。



「どのあたりにギルドはあるの?」



再びガタゴトと揺れ始めた馬車の中でアリアが聞くと、「あと少しで着くから、それでわかると思うぞ」と腕を組んで目を閉じていたコウが静かに教えてくれた。



「…ねえ、アリアちゃん」



静かな声に、街並みを眺めていたアリアが視線を送ると、アリエスがなんともいえない表情をしてこちらを見つめていた。



「アリアちゃんのご実家…ルナーリア家ってさ、あのルナーリア家、だよね?」



アリアはこくりと頷いた。

難しい顔をしているアリエスにどうしたのかと問いかける。



「ルナーリア家って、ウチ(イングラシア王国)でも少なからず影響力があってさ。だから万が一何かあった時のために、ルナーリア家の影響力をものともしない後ろ盾が必要だと思うんだよね」



髪を弄ぶアリエスの表情は憂いに満ちたものだった。

つまり、イングラシア王国にも影響力を少なからず持つルナーリア家がアリアを連れ戻そうとしたら、それに味方

するイングラシア王国の貴族もいる可能性があるというわけだ。



「だから、後ろ盾になってくれそうなところを今度探したいんだけど…」



そこまでアリエスが言いかけたとき、馬車がぴたりと止まった。

御者が御者席から降りて、馬車の扉を開けた。



「着きやしたぜ」



アリエスが「ありがとう」と言って爆睡していたレオを叩き起こし、コウも馬車から降りた。

ロウは軽くふわりと飛び降り、八重歯を見せてニヤリと笑う。

最後にカバンを持ったアリアがヨタヨタと降り、目の前の光景に目を丸くした。



「おっきい…」



王国ギルド、ステラログの建物は巨大だった。

3階建てのギルドはしっかりとした造りで、それでいておしゃれさも兼ね備えている。

ギルドの正面には大きな噴水が。



ぽかんとしているアリアを、ロウがつついた。



「もう、アリア。ぼーっとしていると置いていっちゃうよ?」



慌てて我に返り、アリアは「待ってー!」とみんなを追いかけるのであった。

ブクマなど押していただけたら嬉しいです。

それではまた。

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― 新着の感想 ―
 イングラシア王国にも多大な影響力を持つルナーリア家。  とは言え現状、ルナーリア家からしたらアリアはもはや死んだも同然の存在なのに、アリエスはこの時既にアリアがルナーリア家に連れ戻される可能性を危惧…
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