事情
こんにちは。
星谷瀬奈です。
今回もお楽しみください。
「ってな訳なんすよ…」
開けた場所に出て、軽い自己紹介をしたあと。
金髪に赤の瞳の軽薄そうな男、レオがげんなりした様子で何があったのか語ってくれた。
彼によると、ギルドに魔物討伐の依頼が来たらしい。
なんでも、アビス・フォレストに入った人間が全く帰ってこなくなったらしく、魔物のせいだということで派遣されることになったそう。
だが、魔物だと聞いていたのというのに魔族が襲って来たという。
「ひっどい事故っすよね〜」
そうぼやきながらレオは頭をガシガシと掻いた。
ロウは、何かを考えるような仕草を見せている。
「この森に入った人は、『誰1人』帰ってきていないんですよね?」
若干の違和感を覚えながら三人に聞くと、桃色の髪に琥珀色の瞳の持ち主である魔法使いの少女、アリエスが肯定するように頷いた。
アリアの中に渦巻いていた違和感が強くなる。
思わず眉を顰めて考え込んだ。
「どうかしたんですか?」
強面の黒髪黒目の青年、コウが首を傾げながらアリアを覗き込む。
なんか、強面が首を傾げてると違和感満載だなあ…。
(…ってそんな失礼なこと言っちゃ駄目だよね)
慌てて頭をブンブンと振って考えを頭の外に追い出すと、アリアは難しい表情で三人に告げる。
「これ…事故じゃないかもしれません」
「え?どういうことっすか。誰かが仕組んだってことっすか?」
意味がわからない、という顔をするレオに、アリアは重々しく頷いた。
ロウが「僕は、アリアの考え正しいと思うよ」と僅かに強張った表情で同調する。
「どうしてそう思うんですか?」
コウは困惑に顔を歪ませながらアリアに尋ねる。
「…おかしいんです、この話。だって、森に行った人が誰1人帰って来ていないのであれば、魔物がいるなんて話にならないじゃないですか?」
三人が息を呑む。
確かにそうだ。
森に行った人が誰1人帰ってきていないのであれば、魔物がいるなんて話にならないはず。
そのことを語る人がいないのだから。
なのに、魔物の仕業だという話が上がって討伐依頼が来ているというのはおかしい。
「じゃあ、魔物の話は誰かが仕掛けた罠ってこと?」
少し顔色を悪くしたアリエスが震える声で聞いてくる。
アリアは、静かに頷いた。
「うん。多分そう」
その言葉に、三人の表情が凍りつく。
顔面蒼白の三人にアリアは安心させるような表情を見せた。
「まあ、一応魔族は倒したから、これ以上被害が出ることはないと思うよ」
そう告げると、三人が僅かにほっとしたような表情を浮かべる。
アリエスは少し考えるようなそぶりをみせると、アリアに向かって言った。
「あの…!アリア様、うちのギルドに来てもらえませんか!?お礼がしたいんです!」
「えっ?」
思わず聞き返すと、アリエスは照れくさそうに髪を触りながら言う。
「その…ギルマスにもアリア様のこと伝えたいし、お礼がしたくて…」
恥ずかしいのか、顔を朱に染めている。
アリアがふっと頬を緩めながら「いいよ、わかった。じゃあ、ギルドまで案内してもらえるかな?」と伝えると、三人は嬉しそうに笑った。
「あ、来た来た!あれがうちのギルドの馬車です!」
数分後、アリエスが指をさす先にはよくできた馬車が向かって来ていた。
ロウに「あれ、僕がツテ持ってるギルド、『ステラログ』の馬車なんだけど!」とひそひそ声で囁かれて驚きで目を見開く。
まさか、三人がロウがツテを持っているギルドの冒険者だとは。
驚きながら馬車に乗り込む。
「アリア様が来ることはギルドに伝えときましたから、安心してくださいね」
にこっと微笑むアリエス。
「えーっと…私のことはアリア様って呼ばなくていいよ。私はアリエスちゃんって呼んでいい?」
様付けをされると恐縮してしまう。
そう思って複雑な表情を浮かべて聞いてみると、アリエスは目を輝かせて「いいんですか!?」と身を乗り出す。
「もちろんいいよ」と快諾するとアリエスは嬉しそうに体を揺らした。
コウとレオは微笑ましげにこちらを見ていて、なんだかこそばゆい。
ロウは馬車のソファに座って足をぷらぷらしている。
尻尾を振っているし、ご機嫌そうだ。
「それにしてもアリアちゃん、結構服ボロボロだよ?大丈夫なの?」
心配そうな表情でこちらを見つめるアリエス。
アリアは一瞬きょとんとしたもの、服に視線を落としてハッとする。
服はところどころ破れていて汚れもついている。
お世辞にも綺麗とは言えない服装だった。
「ああうん、大丈夫」
「…アリアちゃんさ、なんか訳アリだったりする?普通の女の子はこんなとこ来ないでしょ?」
的確な指摘にピクリと肩が揺れる。
少し俯いて唇を噛んだ。
「あっ、ごめんね!話したくなければ話さなくてもいいからね!?」
私が黙り込んでしまったから「聞くべき質問じゃなかった」と思ったのか焦ってフォローするアリエス。
「ごめん、大丈夫だよ。一応話しておくね、私のこと」
慌てて笑顔を作ったけれど、あまりうまく笑えてる自信がない。
ガタゴトと揺れる馬車の中、アリアはぽつりぽつりと自分のことを話し始めるのだった。
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それではまた。




