冒険者たち
こんにちは。
星谷瀬奈です。
今回もお楽しみください。
「…この近くから魔族の匂いがする」
歩き出すこと数分。
ロウがスンスンと辺りの匂いを嗅ぎながら瞳に警戒を宿らせる。
これでも狼の魔獣なロウは、鼻がとてもよくきくのだ。
「魔族って?」
「高い知能を持ってる人型の魔物みたいなイメージかな」
その言葉に、アリアは顔を青くした。
「私、攻撃魔法使えないよ…!?」
アリアの魔法は複製と強化。
攻撃魔法は持ち合わせていないのだ。
「あー…そうだったね。でも多分大丈夫。今、魔族の注意は他の所に向いてる。多分狩りでもしてるんじゃないかな」
困ったように頭をかきながら、安心させるようにそう伝えるロウ。
ほっとしつつ、アリアは周囲の警戒を怠らない。
あたりに静寂が訪れる。
「うわあああ!!」
「魔族がいるなんて聞いてないぞ!?」
「助けてええ!」
そんな静寂を破ったのは、男女の悲鳴だった。
アリアは声が聞こえた方をバッと振り返り、ロウは耳をピンと立てる。
「まさか…」
「魔族が狩ってるのって…人間!?」
思わず声をあげてしまうアリア。
「まずいな」と呟き、険しい表情で森の奥を睨みつけるロウに、アリアはそっと声をかける。
「ね、ねえ…その人たち、助けることできないかな?」
「えっ!?助けるの!?」
「だ、だって…見捨てることできないじゃん…」
ロウは驚いた表情をしたあと、呆れたようにため息をついた。
「やっぱりアリアはお人好しだなあ。僕なら即、見捨てるけど」
衝撃的な発言に目をぎょっと見開くアリアをよそに、ロウは「いいよ、わかった。助けに行こう」とフッと不敵な笑みを浮かべ宣言する。
またまた驚いたアリアが聞き返すと、ロウは「アリアの頼みだと、断るわけにはいかないじゃん?」とくしゃりと笑った。
「じゃ、行くよ。アリアは戦わないようにね」
釘をきっちりと刺してから、ロウは短刀を構えて森の奥、声がした方へと足を踏み入れていく。
アリアも周囲を警戒しつつそっと後をついていく。
少し進むと、開けた場所に出た。
そこに、魔族はいた。
禍々しい角に、硬そうな甲冑。
そして、アリア2人分はありそうな巨大な薙刀。
対する冒険者らしき男女三人は、あちこち怪我をしており、装備にも傷がついている。
男が持っている武器らしき長剣も真ん中あたりでポッキリ折れているし、ナイフも刃こぼれが酷い。
アリアと同年代らしき魔法使いの女の子を後ろに、強面の男とチャラそうな男が前に立ち、折れた長剣や刃こぼれの酷いナイフを構えている。
おそらく、魔法使いの女の子を守っているのだろう。
「あ〜…これはもう、100%魔族の勝ちだね…」
茂みに身を隠しつつ、冷静に戦況の分析をするロウ。
アリアは、初めて見た魔族に、ごくりと唾を飲み込んだ。
『フン…無駄な抵抗はしないことだな』
アリアたちがいることに気づいていないのか、魔族は上機嫌に三人組にトドメを刺そうと魔法の詠唱を始める。
『炎獄ーー』
真っ赤な炎が魔族の手の上で膨れ上がり、三人組に放たれる。
アリアは思わず三人組の前に飛び出した。
ロウの焦った声が上がるなか、咄嗟にアリアは両手を前に出して複製を発動していた。
よく僅かな食料を複製していたので、その癖だろう。
アリアはぎゅっと目を閉じて、襲って来るであろう痛みと熱に備えた。
だが。
「あれ…?」
アリアがそっと目を開けると、巨大な火の玉は綺麗さっぱり無くなっていた。
魔族は突然のことに立ち尽くしている。
困惑しているアリアの脳内に言葉が降ってきた。
《複製成功。爆炎魔法、『炎獄』を習得しました》
《強化で『炎獄』を強化しますか? YES/NO》
「なんかわかんないけど…YES!」
突然聞こえ出した言葉に戸惑いながらも、目の前に立つ魔族を倒さなければアリアの命はない。
藁にもすがる思いでYESを選択する。
《強化成功。『炎獄』は『爆炎獄』へと進化しました》
その声と同時に、ぶわりとアリアの体を熱いものが走った。
今ならできるかもしれないーー。
そう頭が理解したと同時に、アリアはあらん限りの声で叫んでいた。
「爆炎獄!!」
その瞬間、魔族が炎のドームに包まれる。
魔族が使っていた『炎獄』の何倍もの規模の火球が凄まじい熱を放ちながら魔族を焼き尽くす。
『ギャアアアア!!』
炎が消える頃には、魔族がいた場所には何も残っていなかった。
おぞましい叫び声と共に、魔族は灰すら残らず燃え尽きたのだ。
「た、助かったあ…」
気が抜けたのかぺたりと座り込むアリア。
そんな彼女に、バタバタとロウが駆け寄ってきた。
「アリアっ!大丈夫!?」
「うん…大丈夫。心臓がバクバクいってるけど…」
胸を押さえながらも微笑みを返したアリアに、ロウはふぅと安堵の息を吐く。
(まだバクバクしてる…)
魔族の前に飛び出して眼前に火球が迫っていたとき。
震えが止まらなくて、足もすくんでいた。
なんとか倒すことができたが、まだ恐怖が残っている。
「あ、あのう…」
おどおどした声に、アリアが振り返ると、三人組が縮こまりながらこちらを伺っていた。
「あ…大丈夫でしたか?」
そっとアリアが問いかけると、三人組は「大丈夫っす!」「怪我は少ししてますが大丈夫です!」「大丈夫ですっ!」と返した。
そんな三人組を険しい表情で見るロウは、はあとため息を落とす。
「それで?君たち、見たところギルドの冒険者っぽいけど…どうしてこんなことに?」
その言葉に、三人組の表情が引き締まる。
アリアは、まずは全員で安全地帯に移動して事情を聞くことになるのだった。
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それではまた。




