第2話:シルバーファング・パック
シルバーファング・パックは、アステリア・デンの下層ではそこそこ名の知れたダイバーチームだった。
隊長のカエル・ホワイトファングは白狼の獣人で、整った顔立ちと銀の剣を持っている。彼はいつも丁寧な言葉を使うが、その目は獲物の値段を測る商人のように冷たかった。
黒豹のレクサ・ブラッククロウは暗殺役。足音を消し、気配を薄くし、相手の背後に立つのが得意だった。
ドレン・グリンはハイエナのハッカー。笑い声は軽いが、他人の傷を見つけるのが早い。
ミラ・ソフトポーは白兎のメディック。優しい声を持っていた。少なくとも、昔のセキにはそう聞こえていた。
最後に、ガルーク・ストーンハイド。大きな熊で、前に立ち、殴り、壊す。それ以上のことを彼は考えなかった。
そしてセキ。
荷物持ち。罠踏み役。予備バッテリー係。時には囮。
チームの名簿には彼の名前もある。だが誰も、彼を本当の意味で仲間とは呼ばなかった。
「セキ」
集合場所で、カエルが微笑んだ。
「今回の仕事は重要だ。君にも期待しているよ」
期待。
その言葉は暖かいはずだった。なのにセキの胸には、冷たい針のように刺さった。
「はい」
セキは短く答えた。
ミラがそっと近づいてきた。彼女の長い耳が不安そうに揺れている。
「無理しないでね、セキ。ヴォイドゾーン13は危ないって聞くから」
その声だけは、少しだけ本物に思えた。
「ありがとう、ミラ」
セキがそう言うと、彼女は困ったように笑った。
けれどその後ろで、レクサが無表情にナイフを研いでいた。ドレンは端末を操作しながら、セキの背中を見て笑っていた。ガルークは大きな欠伸をした。
カエルは全員を見回し、手袋をはめ直した。
「目的はデッドケンネル・ゲート内部の資源回収だ。依頼主は匿名。報酬は高い。余計な詮索はしない」
「匿名依頼かよ。きな臭いなあ」
ドレンが笑う。
「だから高いんだよ」
カエルは穏やかに言った。
セキは何も言わなかった。だが胸の奥で、昨日のIDタグの文字がまた浮かぶ。
――忘れないで。
出発直前、セキは自分のギフトを起動した。
小さな光が手のひらに集まり、古びたカプセルがひとつ落ちる。中から出てきたのは、割れた黒い鈴だった。
ドレンが吹き出した。
「ははっ、今日は猫の首輪か? さすがゴミ狐」
ガルークも笑った。
セキは鈴を拾った。割れているのに、なぜか指先に微かな震えが伝わる。
ミラが言った。
「捨てるの?」
セキは首を振った。
「持っていく」
「そんなゴミを?」
レクサが初めて口を開いた。
セキは鈴をポケットに入れた。
「ゴミでも、俺のギフトが出したものだから」
その瞬間、カエルの笑みがほんの少しだけ薄くなった。
誰も気づかなかった。
セキだけが、それを見た。




