第3話:デッドケンネル・ゲート
ヴォイドゾーン13は、街の地図には存在しない。
公式には封鎖区域。実際には、金を払える者だけが入れる違法な資源採掘場だった。
ゲートの前に立った瞬間、セキの耳の光が乱れた。空気が重い。音が遅れて届く。遠くの壁に貼られた広告は、何度も同じ笑顔を繰り返している。
「セキ、先に行け」
カエルが言った。
それはいつものことだった。
セキは小型ランプを握り、崩れた通路へ足を踏み入れた。床には古い爪痕が無数に走っている。誰のものか分からない。獣のものか、人のものか、それともヴォイドに変えられた何かのものか。
後ろから皆の足音が続く。
いや、違う。
皆は距離を取っていた。
セキだけが、少し前を歩かされていた。
「異常反応なし」
セキは端末を見て言った。
「もっと奥だ」
カエルの声。
通路の奥には、巨大な扉があった。犬小屋のような古い紋章が刻まれている。だがそれは可愛らしいものではなく、首輪をつけられた獣が牙を剥いている図だった。
デッドケンネル・ゲート。
その扉の前で、セキのポケットの中の黒い鈴が震えた。
ちりん。
壊れているはずの鈴が鳴った。
セキは息を呑む。
「どうした?」
ミラが小さく尋ねた。
「今、音が……」
「何も聞こえないけど?」
ドレンが笑う。
しかしセキのバイザーには、文字が浮かんでいた。
《未登録アーカイブ反応》
《識別不能》
《接続待機中》
彼は目を瞬いた。そんな表示を、自分のギフトで見たことは一度もなかった。
「隊長、この場所、何か変です」
セキは振り返った。
カエルは微笑んでいた。
「そうだろうね」
その声が、あまりにも静かだった。
レクサが一歩前に出る。ガルークがセキの退路を塞ぐ。ドレンのドローンが上空で赤く光る。
ミラは、何も言わなかった。
胸の奥が冷えていく。
「カエル……?」
「セキ。君は役に立ったよ」
カエルは銀の剣を抜いた。
「最後の最後までね」
その瞬間、セキは理解した。
これは任務ではない。
これは処分だった。




