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第13話:白兎は目を逸らす

最初に襲いかかってきたのは、やはりレクサだった。


彼女の姿が消え、倉庫の光だけがわずかに揺れる。かつてのセキなら、その時点で終わっていた。だが今、セキは一人ではない。


「右後方」


ヴェラの声。


セキは振り向かず、右手を引いた。青い鎖が空中に走り、見えない何かを捕らえる。レクサの姿がノイズと共に現れ、腕を弾かれた。


ドレンが叫ぶ。


「ドローン、全部出せ!」


天井から小型ドローンが降ってくる。だがブンが肩の上で目を光らせた。


「旧式ですね。侮辱と判断します」


次の瞬間、半数のドローンが互いに衝突し、火花を散らして落ちた。


「俺の制御を奪ったのか!?」


「訂正。あなたの制御が弱すぎました」


ガルークが咆哮し、セキへ突進する。重い拳が床を砕く直前、ヴェラが横から蹴りを入れ、巨体の軌道を逸らした。


セキは戦場の中心で、まっすぐカエルを見ていた。


「君は変わったな」


「お前たちが変えた」


「恨んでいるのか?」


セキは短く笑った。


「聞く必要があるのか」


カエルは銀の剣を抜いた。ギフト《パックコマンド》が発動し、シルバーファング全員の体に淡い銀色の紋様が浮かぶ。


「ならば証明しよう。君が生き残ったとしても、君はまだ弱い」


その言葉に、セキの胸は以前ほど痛まなかった。弱い。そうだ。自分は弱かった。だが弱さは、捨てられる理由にはならない。


その時、ミラが前に飛び出した。


「やめて!」


彼女の声が倉庫に響く。全員が一瞬だけ止まった。ミラは震えていた。だが、今度はセキの前に立っていた。


「もうやめよう、カエル。セキは生きてる。これ以上は――」


「ミラ。下がれ」


「でも!」


「下がれ」


二度目の声は命令だった。


セキは彼女を見た。あの日、彼女は目を逸らした。今夜、彼女は前に出た。それだけで許せるほど、セキは優しくなかった。だが、それを無視できるほど、壊れてもいなかった。


「ミラ。俺のために泣くなら、あの日に泣いてほしかった」


ミラの顔が歪む。


「ごめん……」


「謝罪は、俺を戻さない。でも、今そこで止まったことは覚えておく」


その言葉に、ミラは崩れるように膝をついた。

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