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二十三話 冬にだっていいところはあると思うんだ

 三百対二十の戦力差のある戦い。それに勝たなければ、この町に冬は来ない。


「いやもう諦めようぜ。あいつら倒すのマジでムリだろ」


「私もそう思うが……冬が来なくていいと言うのであれば、このクエスト自体が発生しないだろう」


 言ってることはそうなんだが、だからと言って根性とかでどうにかできる戦力差じゃねえと思うぞこれ。


「思ったんだけど、あの中にけっこういるんじゃね? お金あげれば冬が来ても諦めるって人達。いっそ成功報酬に金使うより、その方が建設的だと思うんだ」


 女子の露出云々のバカどもはともかく、農家の人達はそれで納得しそうなもんだが。


「おそらくですが、もう引っ込みがつかないのでしょう。すでに一度成功してしまっているわけですから」


「そのパターンか……」


 そんな理由でやってるんなら、やめちまえばいいのに。


 オレ達がなんと言おうと、レイシャーが止まるわけにはいかない。冬を連れて来るのが仕事だというのに、すでに一度失敗している。これ以上失敗するわけにはいかないだろう。


「では、行きます」


 レイシャーの宣言に、憂鬱そうな顔の二十人が続く。誰一人として、この戦いに勝てるとは思っていない顔だ。オレも全く思ってない。


 レイシャーを囲むような陣形のまま進み、オレ達は冬拒絶派の前までやって来た。


「今年も来たか、諸悪の根源!!」


 冬拒絶派の先頭にいた、一人の男がレイシャーを指さして叫ぶ。赤い髪に目のこの人は、聞いた話によると毎年冬拒絶派のリーダーをやっている人らしい。名前はニトノ。


「ええ、当たり前です。それが僕の仕事ですから」


 答えたのは、中心で守られているレイシャー。二人のにらみ合いはしばし続き、突然フイッと逸らされた。それと同時、ニトノは自陣に向かって声を上げる。


「行くぞ!!」


『おう!!』


 瞬間、あちこちから魔法や斬撃などの攻撃が飛んで来た。


「みなさん、お願いします!!」


 こちらはと言えば、レイシャーの上げた声に誰も反応しない。ただ嫌そうに、飛んで来た攻撃の迎撃に集中するだけだ。


「って、すでにムリゲー!!」


 オレはと言えば、上から降って来た氷の槍を仕込みワイヤーで方向を逸らし、ナイフを明後日の方向に投げて雷魔法を当たらないようにするくらいだ。それだって、数が多すぎて撃ち落としきれない。


 ヒノと言えば、魔法で相殺するだけでなく、杖で直接攻撃を叩き落としていた。


「ヒノ、そっち大丈夫か!?」


「私は大丈夫だ。むしろ、そっちの方がしんどそうだが!?」


 今のところ、どちらも辛うじてこらえている。だが、それもいつまでもつか。


 その時だった。冬拒絶派の中に、とてつもなく見覚えのある連中の姿を見つけたのは。


「って、なんでいるんだよさおりん先輩ミーアギン!!」


 うちの部のゆかいな連中が、全員集合していた。


「いやだってさー、その子追い払えば冬来ないんでしょ? じゃやるでしょ」


「わたしも冬嫌いなんですよ」


「俺はニトノさんの心意気に感動して!!」


「おーまーえーらぁー!!」


 なんなの!? マジなんなの!? 邪魔し過ぎでしょこいつら!!


 攻撃をどうにか回避しながら、さおりん先輩達に向かって怒鳴ると、返って来たのは悪びれないもの。何考えているんだろうか本当に。つーか、リーダーも露出云々で拒絶してんのな!!


「今すぐそいつら連れて帰れよ!!」


「却下だ! 俺的にはやっぱ、露出は大事だと思うしな!!」


「んな理由で邪魔するとか、ふざけんなよ!?」


「じゃあルーヤン、女子の露出を超える利益を提示してくれよ!!」


「はぁ!?」


 利益つったって……んなもんそう簡単に思いつくかぁ!!


「利益なんざ知るか!! 露出ってんな大事じゃねえし!! つーかそもそも、オレとしてはセーターとか着てる時のシルエットの方がエロいと思うし!!」


「……なん、だと!?」


 オレが叫んだ瞬間、突如としてギンだけではなくニトノさん他数名の男達も動きを止めた。


「……ニトノさん、俺――」


「ああ、わかってる。俺もだ」


 突然真面目な顔をしたニトノさんは、なぜかくるりと後ろを振り返った。


「みんな、聞いてくれ。俺はこの戦いをやめようと思う」


「な、なんでですかリーダー!?」


「俺ら、これまでずっと頑張って来たじゃねっすか!!」


 口々に冬拒絶派――というかその中の、明らかに若い男達だけがニトノに向かって抗議していた。ほぼ間違いなく、露出の件で冬に反対している人達だ。


「俺は、気づいてしまったんだ。そう、ただ露出が多いことだけがエロではないことに!!」


『な、なんだって!?』


 雷に打たれたかのように、劇画タッチで固まる男衆。正直バカなんじゃないかと思う。


 若い男衆が動きを止めてしまったせいか、他からの攻撃がだいぶ手薄になっていた。おかげで、だいぶ余裕を持って攻撃をさばくことができる。


「俺は、向こうにつく!! 止めてくれるなよ!!」


「リーダー!!」


 気づけば仲間割れしていた男衆は、大半がこちらについていた。


 それからおよそ十分後。オレ達冬容認派が、見事勝利を収めていた。


 ちなみにそのあと。オレは冬拒絶派を大幅に削ることに成功したとして、かなりの成功報酬をもらったのだった。


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