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二十四話 冬、来ちゃった

 さて、昨日この町に冬が来てしまったわけなのだが。それはそれは唐突に来たせいで、オレ達は全く対応できていなかった。具体的に言うと、装備を冬仕様にしていなかったのだ。


 この世界では冬になると服に寒気避けの魔法を付与するらしいのだが、それを知らなかったオレ達はそんなことしてるわけもない。


 そんなわけで、絶賛呪いを垂れ流す方々がいらっしゃったりしますここに。


「冬、なんで来やがった滅べばいいのにマジで……」


「寒い寒い寒い冬の必要性なんてないですよねホント。冬なんて滅亡希望、残念無念もう勘弁って感じです……」


 具体的には、さおりん先輩とミーアである。昨日カンツァーロが通過してすぐに吹雪になり、ずっと宿屋の一室にこもりきりなのだ。


 寒いせいなのかどうなのかは知らんが、ミーアにいたっては謎のラッパーみたいになってるし……


「そこでボーっとしてても、冬装備にはならんぞ? 早くギルドへ行って、冬仕様にするための魔法をエンチャントしてもらわねば」


「そのギルドに行くまでがマジ地獄なんだけど……あたし、寒いのとかマジムリ。今すぐ返品できね? 八日以内でしょクーリングオフ期限」


「それはムリですよさおりん先輩……」


 この世界にクーリングオフはないと思うし、つーか今からカンツァーロのレイシャーを呼び戻したところで、冬を返品をできるとは思えねえんだよなぁ……どういう原理で冬来てるのか知らんけど。


 とにかく、気温が下がってからずっとこんな感じなのである。


「……ねえ、ミーちゃん。確かミーちゃんってサモナー? だっけ? なんか魔獣的なん呼べるんしょ?」


「え、ええまあ呼べますけど……」


「なんかあったかくなるの呼べない?」


「その手がありましたね!! じゃあさっそく――」

「いやそんな手はねえよ!! てかやめて!?」


 何を呼ぶつもりなのかは知らんが、ロクでもないことにしかなりそうもない。


 どうにか止められたことに安堵したのだが、なぜかミーアの様子がおかしい。


「……てへっ☆」


「ちょっと待てミーア。なんだそのリアクション」


 とてつもなく嫌な予感にそう言うと、作り笑いを浮かべたミーアがくるりと振り返った。


「もう、呼んじゃったんですよね……」

「うぉいっ!?」


 よくよくミーアを見ると、腕に何かもふもふとしたものが抱かれていた。


「……ミーア、何それ?」


「ええと、フレイムベアの子供です」

『クマ!?』


 これにはオレだけでなく、さおりん先輩ですら驚愕を浮かべていた。


「ちょっと待てミア。お前、それ還し方わかるのか?」


「た、たぶん一定時間で消えるみたいですよ?」


「具体的にはどれぐらいだ?」


「きっとおそらくですけど……一日?」

『ながっ!?』


 普通に長くないか!? 今すぐ還せねえの!?


 クキュウ?


 オレ達のツッコミに驚いたのか、ミーアに抱かれたフレイムベアが顔を上げた。瞳は大きく、こうしてみるとかわいいんだけど……クマ、なんだよなこれ。


「……還さなくていい気がして来た」


「ヒノ!? お前何言ってんの!?」


 フレイムベアのかわいらしさにやられたのか、ヒノは微動だにせずつぶやいていた。そうだった、ヒノってばもふもふに弱いんだった……


「ヒノっち、クマはさすがにやばくね? それにほら、食費とかかかりそうだし」


「それは大丈夫だ。アリーを追い出せば万事解決」

「酷くない!? ってかさおりん先輩にミアちゃんも『その手があったか!』みたな顔すんのやめてくれないかな!?」


 まあ、女子ならギンよりこのかわいらしいもふもふのクマ選ぶよなぁ……それになんかさっきから、微妙に部屋が温かくなって来たような気がするし。下手すると、マジでギンより役立ちそうなんだよな。


 クキュキュ?


 それまで大人しくミーアの腕に抱かれていたフレイムベアだったが、この場にいる全員に注目されるのが嫌だったのか、ぴょこんと逃げ出してしまう。


「あ、ちょっ捕まえねえと!!」


「待ってくださいフーちゃーん!!」


「いつの間にか名前つけてる!?」


「ほらフーちゃんとやら。アリーを好きにしていいからこちらにおいで」


「だから俺の扱い!!」


「とりあえずこっちおいで。寒いからもふる」


 あちこちで大騒ぎをしてフレイムベアを追いかけるが、すばしっこいせいで全く捕まらない。


「ええい、こうなったらいっそ俺が魔法とかで!!」


 攻撃魔法なんぞ一切使えないくせにそんなことを言ったギンが、フレイムベアに向かって杖を振りかぶった。その瞬間、身の危険を覚えたのかフレイムベアが突然小さな炎を吐いた。


「うわっ!?」


 攻撃しようとしていた当の本人のギンが避けたせいで、よりによって燃えやすいベッドに直撃した。


ボンッと小さな爆発音を立て、備え付けだったベッドが一瞬で全焼した。ついでとばかりに炎は延焼し、ヒノが慌てて水魔法で消すまで燃え続けた。


『……』


 ここ、そこそこいい宿屋なんだけど。え、どうしようこれ絶対弁償案件だよねせっかく借金返済したのにまたこうなるの!? マジなんなの!?


 クキュウ……


 部屋を半焼させた犯人はと言えば。いつの間にかミーアの腕の中に戻り、すやすやと気持ちよさそうに寝息を立てていたのだった。


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