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【第7話:お役人様、バイブスぶち上げ試食会】

今回は役人を胃袋から掴む「試食会」エピソード!

お堅い役人が、ギャル女将のプロデュースした極上ご飯とおもてなしバイブスによって、徐々にデレていく姿をお楽しみください。

「……ふむ。本当にこの私が、このような場所で食事をせねばならんのか?」


 問屋場役人の桑原は、案内された客室の円座(えんざ)の上で、未だにオドオドとした視線を泳がせていた。

 数日前までの威圧感はどこへやら、今の彼は完全に私の「ギャル語」を上方の洗練された隠語だと思い込み、謎の畏怖を抱いている。

この千載一遇のチャンスを、プロの女将(ギャル)として逃すわけにはいかなかった。


「何言ってんの、おじさん! せっかくだからウチの新しいメニュー、ガッツリ食べてってよ!」


 私は腰に手を当て、とびきりの笑顔で桑原の前に立ち塞がった。


「お、お咲、役人様に対してそのお言葉遣いは……」


「大丈夫だって、おじいちゃん! 

ほら、きよ、佐助、持ってきちゃって!」


 私の合図とともに、きよと佐助が「失礼いたします」と緊張しながらも、誇らしげな笑顔でお膳を運び込んできた。

お膳が桑原の前に置かれた瞬間、部屋の中にふわりと、驚くほど芳醇で優しい香りが広がった。


「な……なんだ、これは⁉」


 桑原が思わず身を乗り出し、目を剥いた。

 そこにあったのは、従来の江戸初期の宿場飯――あの塩辛い漬物と真っ茶色な汁物――とは一線を画す、目にも鮮やかな特製御膳だった。

艶やかに炊き上がったご飯の横には、旬の野菜が赤、黄、緑と美しく彩り豊かに配され、まるで一枚の絵画のように盛り付けられている。


「これ、ウチらが総力を挙げて作った特製ヘルシー御膳だから! 

盛り付けの『映え』にも超こだわったわけ」


「ば、ばえ……? いや、しかし、見た目ばかり派手でも、味が伴わねばお上の査察は通らんぞ」


 桑原は役人としての面目を保とうと、震える手で箸を取り、恐る恐る大根の煮物を口へと運んだ。

一口噛んだ瞬間、桑原の身体がびくついた。


「――っ⁉ 

な、なんだこの深い味わいは! 

大根に、信じられぬほど濃厚な、しかし嫌みのない旨味が芯まで染み込んでおる……! 

これは一体、いかなる魔術だ!」


「魔術じゃなくて、出汁(だしの技術)の応用だから! 

昆布と鰹節のタイミングを現代風にアレンジして、ちょっとした隠し味をプラスしたの。おじさん、そっちの焼き魚も食べてみなよ」


 桑原は取り憑かれたように、今度は綺麗に飾り包丁が入れられた魚に箸を伸ばした。

口に入れた瞬間、彼の目はさらに大きく見開かれた。


「美味い……美味すぎる! 身が驚くほど柔らかく、塩気だけではない絶妙な甘みが口いっぱいに広がるぞ! この私が、箸を止めることができん……!」


「でしょ? 素材の味をガチで引き出すために、焼き方にも最新の知恵をぶち込んでるから」


 桑原は、生まれて初めて体験する洗練されたクオリティと圧倒的な美味さの衝撃に、完全に言葉を失っていた。

一心不乱に御膳を平らげてしていく彼の姿を、きよと佐助は嬉しそうに見つめている。


「おじさん、美味しく食べてくれてウケる。でもさ、なんでこんなに美味しいご飯ができるか、分かる?」


 私は桑原の目の前にしゃがみ込み、彼の顔を覗き込んだ。


「……上方の、秘伝の技法だから、ではないのか?」


 桑原が箸を止め、ゴクリと唾を呑み込んで私を見上げる。


「ぜーんぜん違うから。答えはね、みんながハッピーに働いてるからだよ」


「下々の者が……ハッピーに……?」


「そう。ウチの旅籠は『しふと制』でみんながしっかり休んで、バイブス満タンで働いてるの。

心が元気だから、お客さんを笑顔にしたいって本気で思えるし、こういう丁寧で最高な料理が作れるわけ。

恐怖とかルールで縛り付けて死んだ目でお飯作らせてたら、こんなハッピーな味、絶対に出せないから」


 私は立ち上がり、窓の外から差し込む明るい日の光を浴びながら、堂々と胸を張った。

 おもてなしの圧倒的なエネルギーと、目の前にある極上の料理の説得力。

その二つに完全に気圧された桑原の目は、いつの間にかギャルマインドによって激しく揺さぶられていた。


「恐怖と規律では、この味は出せぬ……。働く者を笑顔にする、仕組み……」


 桑原は空になったお膳を見つめ、突然、胸を押さえてポロポロと涙を流し始めた。


「ひっ、く、桑原様⁉ お口に合いませんでしたか⁉」


 おじいちゃんが腰を抜かして慌てふためくが、桑原は首を大きく横に振った。


「違う……違うのだ! 

私は、お上の規律こそが絶対だと信じ、下々の者を縛り付けることばかり考えていた……。

しかし、これほど見事な飯を作り、働く者をこれほど輝かせ、客を心から笑顔にする仕組みが……悪であるはずがないではないか!」


「おじさん……!」


 桑原はガタガタと震えながら立ち上がると、私の両肩をガシッと掴んだ。

その顔には、先ほどまでのカタブツな表情は一切なく、完全に骨抜きにされた信者のような輝きが宿っていた。


「前例がないのではない! 

これこそが、これまでの古臭い宿場を遥かに超越した、最先端の『粋(いき)』というものだ! 

私は大切なことを見失っておった!」


「ヤバっ。おじさん、話が分かるじゃん! 超カッコいい!」


 私が親指を立ててパチンとウインクを飛ばすると、桑原は顔を真っ赤にしながら、しかし力強く何度も頷いた。


「うむ! 来週の査察など、今この場で苦しからぬ(問題なし)と認めてやる! 

主(あるじ)、お咲! 

これからもその『しふと制』とやらで、この宿場町に最高の『ばいぶす』を広めてくれ!」


「お、お上公認……。旅籠が、救われた……!」


 おじいちゃんが涙を流して床にへたり込み、きよと佐助も「やったー!」と抱き合って大歓声を上げた。

営業停止の最大の危機を、ギャル流の試食会で見事に大逆転し、お堅い役人を最強の味方に上書きした瞬間だった。


「みんな、マジでお疲れ! ウチらの完全勝利の波、キちゃってるっしょ!」


 従業員たちと次々にハイタッチを交わしながら、私は腰に手を当てて不敵に笑った。

お上を攻略した新米ギャル女将の次なる改革は、旅籠の「見た目」をさらにアゲる、前代未聞のビジュアル大改造計画へと進んでいくのだった。

無事に役人を攻略し、営業停止の危機を脱しました!

味方が増えて勢いに乗るギャル女将、次回は旅籠の「見た目」をさらにアゲるため、従業員たちの制服大改造計画を始動します!

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