【第47話:老中、胸を押さえて大号泣!これぞ真の天下泰平じゃん】
ついにやりました、第4部最大のスカッと大解決にして、本作最高のクライマックスです!
ギャル女将に魂を救われた天下の老中が、大号泣しながら「超・粋じゃん!」と叫びます。
最高のカタルシスをどうぞ!
色彩和行灯の色彩が優美に揺らめく、旅籠『丸米屋』の広大な大広間。
茜色や瑠璃色の暖かな光が、夜の帳が下りた宿場町を幻想的に照らし出している。
お咲の放った、一点の曇りもない純粋で真っ直ぐな言葉の刃が、
冷徹な政治家として凍りついていた老中の心の奥底に、
最も深く、最も優しく突き刺さった、まさにその瞬間だった。
――カラン、カラン……。
静まり返った広間に、乾いた音が力なく響いた。
天下の最高権力者として、何百万人もの民を恐怖で縛り付けてきたその右手が、
激しく、激しく痙攣するように脱力し、
それまで持っていた漆塗りの箸が畳の上へと滑り落ちていく。
「う……っ、あ……あ、あああ……っ!」
老中は、上質な絹の小袖の胸元を、骨が白く浮き出るほどの凄まじい力で
ぎゅっと掻きむしるように押さえた。
その顔は、今までに見たこともないほどの激しい衝撃と葛藤に歪んでいる。
宿場町全体の温かいおもてなしと、そこに集う民の嘘偽りのない、
弾けるような幸せそうな笑顔。
そして、隣に座る丸腰の町娘が放った無敵のハッピーバイブス。
そのまばゆい人の情けの前に、ついに天下の最高権力者の張り詰めていた心の堤防が、
跡形もなく、完全に決壊したのだ。
彼の細い目から、ぽろり、ぽろりと大粒の涙が溢れ出し、
次の瞬間には、床板を濡らすほどの滝のような涙となって大号泣し始めたのだった。
「私は……私は、とんでもない間違いを犯していた……っ!
これほどの世が、これほど美しき人の営みが、現実に存在し得るとは……っ!」
老中は声を震わせ、子供のように顔をくしゃくしゃにして激しく咽び泣いた。
威厳に満ちていた肩が激しく上下に揺れ、畳に涙が次々と染みを作っていく。
大広間で酒を酌み交わしていた武士たちも、飯盛女たちも、元博徒の用心棒たちも、
一斉にその最高権力者の異変に息を呑み、静かに注目する。
誰もが言葉を失い、ただ老中の涙の言葉に耳を傾けていた。
「恐怖と、厳格な法と規律で民を縛り付けるなど……
民の幸せを一切思わぬ、俺の、俺の独りよがりの政治に過ぎなんだ……っ!
これほど、これほど民が自発的に、誰に命令されるでもなく
心から笑顔で暮らす光景こそ……っ!
我が徳川幕府が、数多の血を流して死に物狂いで目指すべきだった、
真の天下泰平ではないか……っ!」
老中は畳に両手を突き、涙で視界を激しく滲ませながら、
窓の向こうに広がる宿場町のまばゆい夜景を、
そして集まった人々を何度も何度も見つめ直した。
長年彼を縛り付けていた、お上のメンツや古い因習という重い足枷が、
今まさに粉々に砕け散ろうとしていた。
そして、自らの胸の奥から湧き上がる強烈な感動の波に耐えきれなくなったように、
顔をバッと跳ね上げて絶叫したのだ。
「ヤバっ、これマジで……超・粋じゃんっ!!」
――ええええええええっ⁉
大広間の全員の驚愕の叫びが、一寸の狂いもなく綺麗にハモった。
天下の最高権力者である老中のおじさんが、まさかの大号泣をかましながら、
涙を流してギャル語でこの街を、丸米屋を大絶賛したのだ。
あまりのギャップに、きよや佐助は算盤を落としそうになり、
おじいちゃん主人もあんぐりと口を開けている。
「お、お頭……じゃなかった、老中様ァァァ!」
「俺たちも、俺たちもずっと、こんな温かい世の中を求めて
刀を握ってきたんでごぜ居やすゥゥゥ!
もうお上のための堅苦しい戦なんて嫌でごぜ居やす!」
老中のその美しい涙と、魂の底から放たれた心震わす気迫に、
周囲をがっちりと固めていたお堅い武士たちも完全に心打たれてしまった。
最前列で槍を構えていた旗本武士たちが、次々と大粒の涙を流して大号泣し始め、
お互いに肩を抱き合って男泣きを始める。
「うおおおん! 俺たちも本当は、こんな飯を食べて笑って暮らしたかったのだぁぁ!」
「お侍さん、分かってくれたかぁぁ! これからはみんなでマブダチだべ!」
チーフのボス率いる用心棒たちも「お侍さん、分かってくれたかぁぁ!」と涙を流し、
大広間は、文字通り割れんばかりの熱い拍手と歓声に包まれていった。
身分の壁も、過去の因縁も、すべてが、広間を満たすこの上ない
多幸感の渦の中に呑み込まれ、完全に融解していく。
「あはは! おじさん、マジで良い仕上がりじゃん!
超ウケるんだけど! 顔ぐしゃぐしゃだし!」
私は大号泣して畳に伏せっている老中おじさんの背中を、
ポン、ポンと力強く、臨場感たっぷりに、そして優しく叩いてあげた。
精度を保ち、涙目で私を見上げてくる最高権力者に向かって、
これ以上ないほどに太陽のように眩しい、無敵のギャルスマイルを咲かせてみせたのだ。
「おじさん、自分の間違いに気づけてマジ偉い! 超カッコいいよ!
これからはさ、そんなお堅いお城に引きこもってないで、
ウチらと一緒に世界アゲてこ!」
「うむ……っ!
お前と共に、この日ノ本を誰もが笑うて暮らせる泰平の世で満たしてやろうではないか!
もう誰も泣かさぬ、笑顔の国を作ってみせる!」
私が最高の笑顔で親指をグッと立ててみせると、
老中は涙を衣服の袖でゴシゴシと力強く拭い、どこか照れくさそうに、
しかし男らしくニカッと笑い返してみせたのだった。
「よし、それじゃあ今夜はトコトン朝まで飲み明かそ!
お代わり、ガッツリ持ってきてー!」
「へいっ! 大盛りのお代わり、爆速でお運びいたしやす!」
こうして、国家規模の武力による大弾圧という、
ハッピータウン過去最大の絶体絶命の危機は、一滴の血も流すことなく、
全員が最高の笑顔で弾ける大歓声のなか、
ものの見事にアゲアゲなハッピーエンドへとひっくり返されたのだった。
大広間を照らす色彩和行灯の光は、彼らの未来をどこまでも明るく祝福するように、
いつまでも暖かく揺らめき続けていた。
老中様、最高のデレと涙をありがとうございました!
これで幕府からの弾圧の危機は完全消滅。
次回、ハッピータウンは幕府公認の「特別区」として守られ、
物語はいよいよ感動のフィナーレへと向かいます。




