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【第46話:恐怖の政治とかマジ時代遅れ!民の笑顔、見てみなよ】

今回は物語の核心に迫る心理戦回!

全員が笑顔で笑い合うハッピータウンの光景を見た老中に対し、

ギャル女将が「恐怖の政治とかマジ時代遅れ!」と、

優しくも真っ直ぐな本質を突きつけます。

色彩和行灯の柔らかな光が満たす、旅籠『丸米屋』の広大な大広間。

 お咲の放った特製映えスイーツまでをも完全に平らげ、

その衝撃的な美味さの前に言葉を失って

呆然自失となっていた最高権力者・老中の目の前で、

この奇跡の一晩の宴の熱気はまさに最高潮を迎えていた。


 ――ガハガハガハ! ハッハッハ!

 ――いやあ、お武家様、もう一杯いかがでございますか!

 ――うむ! これほど美味い酒と飯、断る理由などどこにもないわ!


 地鳴りのような笑い声と賑やかな歓声が、

大広間の分厚い畳を絶え間なく心地よく揺らしている。


老中は、自らの震える箸をそっと御膳の上に置くと、

信じられないものを見るかのように、

その細い目を驚愕に大きく見開いて広間全体を何度も何度も見回した。


そこには、彼がそれまでの長きにわたる冷徹な政治のなかで、

ただの一度だって目にしたことのない、驚天動地の光景が広がっていたのだ。


「おいおい、お侍さん! 

京の白味噌を使ったこの汁物、マジで美味いからもっとグッといきなよ! 

遠慮なんてしてたらウチらの女将に怒られちまうぜ!」


「おお……元博徒の分際で、これほど利発な気配りをするか! 

いやはや、お主の注ぐ酒は実にもてなしの心がこもっておる、実に見事だ! 

これならいくらでも飲めてしまうな!」


「あはは! お侍さん、顔が真っ赤でウケる! 

ほらほら、こっちの煮物もガッツリ食べなよ!」


「これほど美味い煮物は食べたことがないぞ! 

おい、おかわりを頼む!」


 大広間のあちこちで、驚くべき交流が次々と生まれていた。

普段であれば、お上の定めた厳しい四民の掟のもと、

決して交わるはずのない、交わることすら許されない者たち。


お召し物をピシッと正した身分の高い公儀の旗本武士も、

宿場で健気に働く飯盛女たちも、かつては日陰の世界で

狼のように凶暴な牙を剥いていた元博徒の用心棒たちも、

ここには何一つの壁も存在しなかった。


誰もが対等な一人の人間として、心からの満面の笑顔でお互いを思いやりながら、

楽しそうに酒を酌み交わし、肩を組み合って腹の底から笑い合っているのだ。


「な、何なのだ……これは……っ。

一体、この宿場町で何が起きているというのだ……」


 老中の口から、信じられないものを見たというような、かすれた呟きが漏れ出た。

彼がよく知る江戸初期のこの国は、もっと暗く、凍りついたものだったはず。


隣近所で互いを密かに監視し合い、

一人が罪を犯せば連座で罰せられる、あの重苦しいお上の掟の暗さも、

冷酷な身分制度の法度も、この広間には一切存在しなかった。


あるのはただ、お咲の底抜けに明るい気風に心の底から感化された人々が放つ、

どこまでも純粋で温かい気迫だけだった。


(……俺は、俺のしてきたことは、間違っていたというのか……っ⁉)


 天下の最高権力者としての彼の胸に、

激しい、そして引き裂かれるような強烈な衝撃が走る。

彼は自負していた。


これまでの己の政治――

すなわち、「人は放っておけば私欲に走り、必ず乱れる生き物。

だからこそ、恐怖と厳格な法度によって民を雁字搦めに縛り付けることこそが、

戦国の世を終わらせ、天下泰平を成し遂げる唯一の正解だ」と思い込んでいたのだ。


しかし、目の前の民は、お上の厳しい法度で縛られてなどいないのに、

暴力の気配など微塵も見せず、驚くほど平和に、そして幸せそうに調和している。


「ねえ、おじさん。そんな難しい顔して考え込んじゃって、どうしたの? 

せっかくのご飯が喉を通らなくなっちゃうよ?」


 不意に、隣から突き抜けるように明るい、いつもの緊張感ゼロの声が聞こえた。

ハッと老中が顔を向けると、そこにはお揃いの藍色の着物の袖を少しまくり上げ、

いたずらっぽく微笑む私の姿があった。


私は老中おじさんの顔をじっと覗き込むと、広間で笑い合うみんなの姿を見つめながら、

優しく、真っ直ぐに語りかけたのだ。


「ねえ、おじさん。

恐怖で縛る政治とかさ、マジで時代遅れだし誰もアガらなくね? 


そんなの、みんなが毎日ビクビクして、心の底から楽しめないじゃん。

誰も幸せになれないよ」


「じ、時代遅れ、だと……? お前、天下の政をそのように――。

お上が威信を示さねば、民はすぐに刃を向け、

世は再び乱世に逆戻りするのだぞ……っ!」


「そうだよ! 

法度とか身分の掟で無理やり縛らなくたってさ、みんながこうやって笑顔で、

ハッピーに暮らせる街の方が、絶対に国としても最強じゃん。


怒った顔して上から命令するボスより、

みんなを笑顔にしてアゲアゲにできるボスの方が、ウチは絶対にカッコいいと思うな。

おじさんもさ、そういうカッコいいボスになりたいって思わない?」


「ボス……いや、人の上に立つ者としての、あるべき姿か……」


 私はそう言うと、戸惑う老中おじさんの肩を優しく、ポンと叩いた。


「この民の笑顔、よーく見てみなよ。

おじさんが一生懸命お城で頑張って守ってきた天下泰平って、

本当はこういうみんなの幸せな顔が見たくてやってることなんじゃないの? 

違う?」


 ドーーーンっ!!

 お咲の真っ直ぐで、そして何よりもどこまでも深い愛に満ちた言葉が、

冷徹な政治家として凍りついた生き方をしてきた老中の心の奥底に、

最も深く、最も優しく突き刺さった。


老中は完全に言葉を失い、ただ大広間で弾ける無数の笑顔を見つめ続けた。

彼の目から、ぽろり、ぽろりと、これまで張り詰めていた

頑ななプライドの涙が、大粒になって畳の上へと零れ落ちていく。


現代の夜行性ギャルが放った至高のもてなしの極意は、

ついに天下の最高権力者の魂を、ものの見事にアゲアゲなハッピーへと

更生させようとしていたのだった。


「私は……、俺は、一体何のために……。

民を怯えさせることが天下のためと、

本気で信じ込んでおったというのか……」


 老中おじさんの目から溢れる涙は止まらず、

彼はただ、目の前で楽しそうに肩を組む武士と町人たちの眩しすぎる笑顔を、

じっと見つめ直すしかなかった。

女将の言葉が、老中の心に溜まっていた頑固なしきたりを溶かしていきます。

次回、ついに最終決戦の結末!

老中の口から、あの「伝説のギャル語」が涙とともに飛び出します。最高のカタルシスへ!

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